正確な決算のための経過勘定 期間損益計算や4つの経過勘定項目とは

正確な決算のための経過勘定 期間損益計算や4つの経過勘定項目とは

正確な決算を組む、というのは経理担当者にとって最も重要な責務といえます。その処理が誤っていれば、内外を問わない利害関係者が判断を誤ることにもなりかねません。今回は経過勘定項目を中心に、決算で特に留意が必要な点について確認をしていきましょう。

とても大切な「期間損益計算」という考え方

決算を組む際、とても大切なのは「適正な期間損益計算」を意識することです。一般的には「費用は収益に先行して計上される」ので、特に費用については収益との対応関係の検討が必要です。場合によっては資産勘定などへ振り返る処理をすることが、決算を組む際には多く行われます。
具体例は、棚卸資産(まだ販売されていない仕入商品)の計上や固定資産の減価償却処理(購入時に一時損金とせず、期間配分を行う)などが該当します。
経理担当者として「なぜ在庫を調べる必要があるのか?」「減価償却とはなんのためにやっている処理なのか?」ということをしっかりと認識しておくことが、決算時には強く求められます。

経過勘定

適正な期間損益計算を実現するために必要な科目として、経過勘定があります。経過勘定には「前払費用」「未払費用」「前受収益」「未収収益」の4つがあります。

経過勘定は、次のような取引があった場合に用いられます。

  • 継続的な役務提供により、費用や収益を期間配分する必要がある場合

基本的には、一年を超えて精算されるものは「長期」と付け加えられます。

説明だけでは分かりにくいので、具体例で考えてみましょう。

 具体例:期首(4月1日)に3年分の損害保険料90万円を支払った。

借方 金額貸方金額
保険料(費用)30万円現預金(資産)90万円
前払費用(資産)30万円
長期前払費用(資産)30万円

保険契約による補償は継続的に効果があります。3年分の保険料をまとめて支払った場合、事業年度中に役務の提供を受けた分については当期において費用になり、翌期以降の分は実際に役務の提供を受けるのは翌期以降ですから、その分が前払費用として計上されます。そのうち、一年を超えて役務の提供を受ける部分を長期前払費用として処理します。

経過勘定と未決済(支払済)項目の違い

たとえば前払費用と前払金は、よく混同されがちです。両者が異なるのは「継続的な役務提供か否か」「提供がすべて完結しているか否か」という点です。

前払費用(経過勘定)

長期にわたる保険・保守契約など。既に代金の支払いが済んでおり、当期において部分的に役務の提供を受けているが、まだ提供を受けていない部分(継続的な提供)もある。

前払金(未決済勘定)

仕入代金や固定資産の購入代金を前払いしているものなど。商品や設備はまだ受け取っていないため、取引は完了していない。

未払費用と未払金、前受収益と前受金、未収収益と未収入金についても同様の考え方で分類します。

未払費用:支払利息、給与、リース料など
未払金 :後払いでの設備投資、クレジットカードでの購入など
前受収益:長期間のメンテナンス契約による売上の、役務未提供分
前受金 :受注生産商品の代金を一部前渡しで受取
未収収益:貸付利息のうち、当期に計上しているがまだ受け取っていないもの
未収入金:車両を売却したが、まだ代金を受け取っていない

費用側については、多くの企業で分類が必要となります。一方、収益側については営んでいる事業の種類により、計上頻度は大きく異なります。自社事業の内容に応じて、適切に経過勘定を処理できるようにしましょう。

経過勘定以外の主な決算仕訳

減価償却

決算処理といえば、減価償却を想起される方が多いのではないでしょうか。「取得した固定資産のうち当期に費用処理すべき金額」を計算する、決算処理における最重要事項の一つです。以下の記事を参考にしてみてください。

経理プラス:減価償却を徹底解説!4つの計算方法や自己金融効果を理解しよう
経理プラス:定率法と定額法…減価償却の方法と自己金融効果とは

引当金

企業によっては「引当金」の計上をしていることもあります。これまで自社がどのような引当金を計上してきたか、しっかりと確認しましょう。

経理プラス:貸倒引当金はなぜ負債として処理するの?
経理プラス:賞与引当金とは? 仕訳や会計処理を事例付きで解説!

棚卸資産

在庫金額を所定の方法に従って計算し、棚卸資産として計上することも重要な決算処理の一つです。以下の記事を参考にしてみてください。

経理プラス:棚卸資産とは?棚卸資産の評価方法と実地棚卸の実務
経理プラス:棚卸資産で気を付けたい税務調査で狙われやすいポイント

忘れてはいけない締め後処理

特別な勘定科目を用いるものではありませんが、締め後についてもしっかりと確認をしておく必要があります。

(具体例)3月末日が決算日。売上先A社とは15日〆で継続的に取引をしている。

この場合、4月15日に締められる売上の中に3月16日~3月31日分の売上が入っていることになります。この締め後分について、漏れがないように計上する必要があります。

同じような対応は、仕入側や、企業によっては人件費についても同様の処理をしていることがあります。特に売上の締め後漏れは税務調査でよく指摘される重要事項です。取引先ごとの締め日について、しっかりと整理しておきましょう。

多くの場合、決算処理は「前年の処理をしっかりと確認すること」で大枠を確認することが可能です。

  • 前年処理の振り返り
  • 当年度特有の事情について整理

この2点に留意し、正確な決算書を作成し、内外の利害関係者に正しい会計情報を提示することが、経理担当者にとって最も重要な業務といえるでしょう。

まとめ

決算処理では「適正な期間損益計算」を意識することが重要です。そのために必要な4つの経過勘定については、名称が似ている科目(前払費用と前払金など)についてしっかりと区分できるようになることが必要です。
また、決算においては減価償却や引当金の計上、棚卸資産の確認など多くの処理が必要です。取引先ごとの締め日の確認などもあることから、まずは前年の処理を参考にしながら、当年度の個別事情を漏らさず確認しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所