減価償却費とEBITDAの関係性とは?計算方法と活用方法を詳しく解説!

減価償却費とEBITDAの関係性とは?計算方法と活用方法を詳しく解説!

EBITDA(イービットダー)という言葉をご存知でしょうか? 会計指標の中でも少し毛色の変わった項目ですが、減価償却費とは密接な関係があります。今回はEBITDAと減価償却費の関係性と、その概要について簡単に学んでいきましょう。

また、EBITDAの概要についてはこちらの記事で詳しく紹介をしていますので併せてご覧ください。
経理プラス:EBITDAで何が分かる? 計算・評価方法と活用上の注意点を徹底解説

減価償却費の特徴

減価償却は現在の企業会計において最も特徴的な項目の1つです。企業会計は「適正な期間損益計算」を基本の目的としています。そのため、長期間使用できる固定資産(有形・無形を含む)については、その使用できる期間に応じて費用を配分することとしています。この配分時に使用されるのが減価償却費という費用項目です。

支出を伴わない経費

減価償却費の特徴の1つが「支出を伴わない経費」であるということです。現預金の支出は固定資産を購入した時点で起こっています。その一方で、費用としての処理は減価償却の手続きを通じて数年、数十年と遅れて計上されます。つまり「利益の計算」と「現預金収支」の計算は、大幅にずれることとなります。

繰り返しになりますが、企業会計は期間損益計算が基本目的なので、別に現預金収支とずれたところで問題はないように思えます。しかし、大企業ですら急に倒産する昨今、やはり期間損益計算と現預金収支のズレについて、投資家や金融機関が以前よりも敏感になっているのは事実です。

計上の基準が1つではない

減価償却のもう1つの特徴は「計上の基準が1つではない」ということです。たとえば国が異なれば、減価償却に関する取り扱いが異なってきます。減価償却方法、耐用年数や税務上の取り扱いなど、様々な要素において違いが出てきます。

また、同じ制度下においても個別企業によって違いが出てきます。たとえば日本企業においても、税務で定められている耐用年数とは別に自社で独自で定めている耐用年数を用いて減価償却をしている企業があります。税務申告上はこれらの違いが修正されるのですが、決算書をみているだけではそういった細かい事情を読み解くことは難しいです。同じ資産について異なる処理をしている企業がいたら、その比較をすることが難しいのは容易に想像ができます。

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EBITDAは減価償却費+営業利益で求められる

減価償却費は計上額も大きいため、企業評価への影響度も非常に高くなります。そこで、減価償却による差異を排除するための評価基準が求められました。それがEBITDAです。

EBITDAの計算方法

EBITDAは、以下の計算式により求めることができます。

EBITDA = 減価償却費 + 営業利益

営業利益は本業による利益です。これに計上された減価償却費を加えることで、その企業が本業で獲得した「現預金を伴った企業価値増加額」がおおむね計算できます。
「 おおむね 」というのは、売掛債権や仕入債務、在庫の変動など、減価償却費以外にも損益計算と現預金収支がずれる理由はいくつかあるためです。ただし、減価償却費の影響度は他の項目を大きく上回るため、特別に減価償却費に注目をして定められたのがEBITDAです。

EBITDAを活用する利点

減価償却の差異を帳消しに

EBITDAは、上で取り上げた減価償却費の差異についても帳消しにすることができます。企業の国籍や業種、税法や会計慣行、個別企業ごとの固定資産に対する取り扱いなど、減価償却費に関する様々な差異がなかったこととなるため、企業間での比較が簡単になります。

設備投資の増減に左右されない

1つの企業に着目した場合でも次のような利点が考えられます。事業を続けていると、設備投資が大きい年もあれば少ない年もあります。従って、減価償却費の計上額も大きく上下動することが珍しくありません。「利益が大きく伸びている、企業が成長したからだ!」と思っていたが、よくよくみたら単に設備投資が低調なため、減価償却費が減少していただけだった……といったことも珍しくありません。
EBITDAを活用すれば、このような設備投資の増減に惑わされることなく、ある程度平準化された状況下で企業の価値を比較することができます。

EBITDAの基本的な解説についてはこちらの記事で紹介をしておりますので、併せてご覧ください。
経理プラス:EBITDAで分かること 算出・評価方法と活用上のポイントを徹底解説

EBITDAは企業買収時に活用される

EBITDAは、企業買収(M&A)において効果を発揮します。EBITDAの数字は「その企業を保有していることによって本業から獲得できる現預金」に おおむね 一致します。以下の式を見てください。たとえば、

・企業AのEBITDA = 100
・企業Aの株式時価総額 = 300

とします。このような数字がわかっていれば、この企業を買収した場合、3年間で元が取れ、5年目以降から収入が超過することがわかります。時価総額/EBITDAの倍率が低ければ低いほど、その企業は割安で買収することができることを意味します。企業買収は大きなお金が必要ですので、失敗は許されません。支出したお金がどれくらいで回収できるのか? という計算が買収の是非を判断する上でとても重要な指標となります。

経理プラス:EBITとEBITDA 2つの違い、メリット・注意点を解説

まとめ

減価償却費は「支出を伴わず」「それぞれの計上基準に差異がある」経費のことを言います。その影響を排除し、国籍、税法、設備投資の有無などを除外して安定的に企業を評価するための指標がEBITDAです。EBITDAを利用することによって、現預金を伴った企業価値の増加額を知ることができ、特に企業買収などにおいては、買収資金がどれだけの期間で回収できるか知るために有用な指標とされています。

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 高橋 昌也

税理士 高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。

高橋昌也税理士・FP事務所