定率法と定額法…減価償却の方法と自己金融効果とは

減価償却とは

機械や車、備品などの原則として10万円以上で一年以上使用する資産を購入したとしても、購入した年に全額を必要経費(損金)にすることはできません。それらの資産を使用する期間(耐用年数)にわたって、分割して、毎年必要経費に計上していく必要があります。これを減価償却といいます。

減価償却する方法で主なものは定額法と定率法です。定額法とは、毎年、一定額の減価償却費を計上する方法です。定率法とは毎年、一定の率で減価償却費を計算する方法です。

なお、耐用年数を自由に決めることができると、それを何年にするかによって、減価償却費が変わってくることとなり不公平です。そのため、資産の種類毎に何年で償却するかは細かく定められています(法定耐用年数)。

 

減価償却の方法―定額法と定率法とは―

定額法と定率法による減価償却費の計算方法は次のとおりです。

定額法の計算方法・・・取得価額×耐用年数に応じて定められた定額法の償却率=減価償却費

定率法の計算方法・・・前期末の帳簿価額(取得した年は取得価額)×耐用年数に応じて定められた定率法の償却率=減価償却費

取得価額は変わらないので、定額法での減価償却費は毎年一定となります。それに対して、前期末の帳簿価額は毎年少なくなっていくので、毎年の減価償却費もそれに応じて少なく計算されます。つまり、定率法の方が初年度に多く減価償却費を計上できることとなり、節税には繋がりますが、資産の種類によっては定率法が適用できなかったり、税務署に届出をしないと適用できなかったりしますので注意してください。

耐用年数や償却率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令ともいいます)」に規定されていますので、新たに資産を取得したときは、耐用年数省令を確認して、減価償却計算を行います。なお、定められている定率法の償却率は、定額法の償却率を2倍した償却率となっており、この償却率による償却方法のことを200%定率法といいます。

 

定額法か定率法はどのように決まるのか

選択できる減価償却の方法は資産の区分に応じて、次のように決められています。

(平成28年4月1日以後に取得した資産)

  • 建物:定額法
  • 建物附属設備及び構築物:定額法
  • 機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品:定額法または定率法
  • 鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備及び構築物):定額法または生産高比例法
  • 鉱業用減価償却資産(上記以外):定額法、定率法または生産高比例法
  • 無形固定資産及び生物:定額法
  • 鉱業権:定額法または生産高比例法
  • リース資産:リース期間定額法

なお、法人の場合、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具並びに器具及び備品については、定率法が法定償却方法として予め決められており、何もしなければ決められた方法を適用しなければなりません。それ以外の方法を採用する場合には、「減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署に提出します。「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出期限は、新たに法人を設立したときは設立第1期の申告書の提出期限まで、設立後既に償却方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した場合は 、その資産を取得した期の申告書の提出期限まで、となります。

また、決められた減価償却方法では正しく減価償却計算ができないようなときなどは、特別な償却方法の承認申請を行い、承認されると、その他の特別な償却方法により、減価償却を行うことができます。ただし、特別な償却方法が認められるのは例外的な場面ですので、通常は決められた減価償却方法を用いることとなるでしょう。
参照:[手続名]減価償却資産の償却方法の届出 (国税庁HP)

 

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減価償却方法を変更したいとき

減価償却方法は一度適用した方法を継続することとなりますが、手続きをして変更することができます。

減価償却の方法を変更したいときは、原則として、変更しようとする事業年度開始日の前日までに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」には、資産、設備の種類毎に現によっている償却方法、現によっている償却方法を採用した年月日、採用しようとする新たな償却方法を記載した上で、変更しようとする理由も記載します。

なお、一度償却方法を変更してから3年を経過していないときや、変更しようとする償却方法では所得金額の計算が適正に行われると認められたいときなどは原則として、承認を受けることができません。

 

減価償却の自己金融効果とは

さて、減価償却には自己金融効果があると言われています。ここからは具体的な事例を交え、キャッシュフロー計算書や借入金返済との関係性にも触れながら、減価償却の自己金融効果がどのようなものなのか解説していきます。

まず、自己金融効果を事例で解説すると次のようになります。

  • 売上高 500万円
  • 減価償却費 500万円
  • 当期純利益 0円

少し極端な事例ですが、売上高と減価償却費がそれぞれ500万円だったとします。
売上高の500万円については売上代金が入金されます。一方で、減価償却費は資金の支払いを伴わない経費なので、500万円の経費が計上されますが、支払いはありません。

つまり、500万円の入金があって、支払が0円なので、500万円の資金が留保される、ということとなります。このように減価償却費を計上することによって資金が留保される効果のことを自己金融効果といいます。

キャッシュフロー計算書と減価償却の関係

先ほどの事例について間接法でのキャッシュフローを見ると次のようになります。

  • 当期純利益 0円
  • 減価償却費 500万円
  • 営業活動によるキャッシュフロー 500万円

減価償却費は資金の支払を伴わない経費です。そのため間接法でのキャッシュフロー計算書においては、営業活動によるキャッシュフローの区分で減価償却費を調整します。
その結果、営業活動によるキャッシュフローは500万円となります。

借入金返済と減価償却の関係

減価償却費に自己金融効果があるといっても、実際には、減価償却資産の取得時にそれだけの支払いを伴っていることとなります。そのため、減価償却資産の取得時には資金がマイナスとなりますが、その場合は、借入金を活用することが考えられます。

借入金を活用する場合は、その後の借入金の返済のことを考えなければなりません。このときに、減価償却資産を取得する際にした借入金の返済額が減価償却の自己金融効果の範囲であれば、利益が計上されている限り、無理なく返済することが可能という考えをすることができます。

先ほどの事例で見ると、減価償却の自己金融効果によって毎期500万円が留保されることになり、それを借入金の返済原資とすることができるので、毎期の借入金の返済額が500万円以下であれば無理なく返済することができる、ということとなります。
減価償却の自己金融効果が毎期500万円なのに、借入金の返済額が1,000万円となっていれば、その返済するための資金を用意するために、より多くの利益を計上しなければならないこととなります。

 

減価償却費の節税効果とは

ここまで説明してきたように、減価償却費は資金の支出を伴わない経費で、それを計上することによって税金が減るため節税効果があります。このように減価償却費と税金とは密接に関係があります。そして、どれくらいの設備投資を、毎年いくらの減価償却費を計上することができるかは事前に計算することができます。つまり、中長期の税金のことを考えて、適切なタイミングで設備投資を行えばそれが節税に繋がることにもなるのです。

一方、定率法の場合、減価償却費は年々減少していくことに注意しておく必要があります。減価償却費が減少するということは、減価償却費計上前の利益が同額であれば、税金だけが増えるということとなります。何も対策をしていなければ、減価償却費計上前の利益は増えていないのに、税金だけが年々増えていくというような状況にもなるため、税金の準備をしておかなければなりません。

 

まとめ

どのように減価償却を行うかにより、税金が変わるだけでなく、会計上の利益も変わってくるため、業績管理の仕方も変わってきます。つまり、どのように減価償却を行うかを考えるのは非常に大切なことです。

また、建物附属設備及び構築物は、平成28年4月1日以後取得したものから定率法が使えなくなるなど、減価償却に関する税務上の規定は頻繁に改正されていますので、減価償却の考え方をまず理解した上で、改正もキャッチアップしていくことが必要でしょう。

 

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● 著者

松本 佳之

松本 佳之

税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。