棚卸資産とは?棚卸資産の評価方法と実地棚卸の実務

棚卸資産の会計は、企業会計のなかでも重要な部分を占めます。それは、棚卸資産が平均して総資産の10%程度を占めるという事実に加えて、棚卸資産の適切な管理が市場競争を勝ち抜く上で重要な要素であることです。
そしてなによりも棚卸資産が、損益計算書で最初に計算される利益である売上総利益の額を左右する項目だという点にあります。
今回は、棚卸資産について基本的な理解を確認した上で、評価方法と実地棚卸の実務との関係性をみていきましょう。

 

棚卸資産とは何か

棚卸資産とは、企業が販売する目的で一時的に保有している商品・製品・原材料・仕掛品の総称です。貸借対照表の借方項目である資産の部の流動資産に含まれます。一般的には在庫と表現されることもあります。

一口に棚卸資産といってもさまざまな評価の基準と方法があり、棚卸資産の種類によって異なる基準と方法で評価されます。

以下の項目では、棚卸資産の種類(範囲)とその計算方法をみていきましょう。

 

棚卸資産の範囲

棚卸資産とは、次のいずれかに該当する財貨または用役(財貨を発生しない業務)であるとされています。

  • 通常の営業過程において販売するために保有する財貨
    例:商品、製品、副産物及び作業くず
  • 販売を目的として現に製造中の財貨または用役
    例:半製品(自社部分品を含む)、仕掛品、未成工事支出金および半成工事
    ※半製品は製造途中でも販売できる物、仕掛品は販売できない物。建設業では仕掛品のことを未成工事支出金、造船業では半成工事とよぶ。
  • 販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨
    例:原料および材料(購入部分品を含む)
  • 販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨
    例:消耗品、消耗工具、器具および備品その他の貯蔵品

 

棚卸資産の取得原価の決定

棚卸資産を購入した場合の取得原価は、購入代価に副費(付随費用)を加算して決定することになります。

副費には「外部副費」と「内部副費」があり、外部副費には、引取運賃、購入手数料、関税などが、内部副費には、購入事務費、検証費、保管費などがあります。このうち取得原価に参入する副費の範囲は、費用収益対応の原則や重要性の原則に基づいて決定されます。

棚卸資産を自社生産した場合の製品などの取得原価は、適正な原価計算の手続きに従って算出された価額によって決定されます。たとえば、企業会計審議会の原価計算基準では、実際原価制度ないしは標準原価制度によって算出される製造原価を取得原価とするよう求めています。

ただし、実際原価計算で実際の取得価格ではなく予定価格などを用いた場合、あるいは標準原価を用いた場合、そこで計算される取得原価と実際発生額との間に発生する差額を「原価差異」とよびます。原価差異が生じる場合は、その大きさを算定記録し、分析した上で財務会計上、適切に処理して製品原価および損益を確定することが求められます。

なお、贈与や交換によって棚卸資産を取得した場合は、受け入れた棚卸資産の公正な評価額をもって取得原価とします。

 

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棚卸資産の期末評価と実地棚卸

売上原価を確定するためには、費用収益対応の原則にもとづき、棚卸資産の原価総額のうち、当期の売上高に対応する部分とその残りを区分する必要があります。

そのためにはまず、期末時点における棚卸資産を正確に把握する必要があります。この作業を実地棚卸と呼びます。

実地棚卸の作業は、原則として、管理上の数字に頼ることなく、在庫を補完する倉庫や保管庫に足を運び、実際の在庫の数量(実地棚卸数量という)と、各々の在庫の状態、例えば傷がついていないか、使用期限が来ていないかなどを目視により確認します。

たとえば、棚卸資産の減耗(減ること)が生じている、すなわち棚卸資産について継続記録表が採用されている場合の帳簿上の期末在庫数量に対して、実地棚卸数量が不足するときには、棚卸資産の減耗分を棚卸減耗費として費用計上することが求められます。

この場合、原価性のある棚卸資産と原価性のない棚卸減耗に区分したうえで、前者については原材料に関するものであれば製造原価に、商品・製品に関するものであれば売上原価ないしは販管費に含めることとなります。一方、原価性のない棚卸減耗については、特別損失ないしは営業外損失に含めることとなります。
一方、販売目的で保有する棚卸資産のうち、その資産の収益性が低下することで、取得原価に比べて期末の時価が低下しているものも存在します。たとえば以下のように評価損の原因はさまざまです。

  • キズ、汚れなど品質低下が伴う物理的な劣化
  • 陳腐化などの経済的な劣化
  • 市場の需給変化に伴う売価の低価

かつては取得原価で評価し続ける原価基準(=貸借対照表価額に時価を反映させず取得原価で評価し続ける方法)が認められる傾向にありましたが、昨今の時価評価主義の優勢により、低価基準による棚卸資産の期末評価を原則的な処理と位置付ける傾向にあることから、実地棚卸の作業、特に実地棚卸数量と在庫の状態の確認が重要なプロセスになっています。

低価基準の適用方法には、「切放し法」と「洗い替え法」の2つがあります。

切放し法は「簿価時価比較低価法」とよばれ、評価切り下げ後の簿価をその期の取得原価とする方法です。

一方、洗い替え法は、「原価時価比較低価表」とよばれ、評価切り下げ後の簿価は無視し、取得原価と時価を比較する方法です。

ちなみに、実地棚卸数量とは、棚卸の一つである実地棚卸において、実際に調べた「商品」、「原材料」、「部品」、「半製品」「製品」などの在庫数量のことを指します。

なお、在庫数量には次の2種類が存在し、それぞれ棚卸の種類に対応したものとなっています。

  • 帳簿棚卸数量
  • 実地棚卸数量

 

棚卸資産の評価法

次に、棚卸資産の貸借対照表価額の算定方法を説明していきます。

棚卸資産の取得原価のうち、当期の実現収益に対応する部分は、損益計算書に費用として計上されます。当期には消費されず、将来に繰り延べられた部分は、棚卸資産として貸借対照表に資産計上されます。

棚卸資産の貸借対照表価額の算定方法には以下の7つがあります。

  1. 個別法
    個別法とは、取得原価が異なる物ごとに区別して記録する方法です。多品種を扱う企業の場合は手間のかかる記録方法になりますので、あまり適当ではありません。宝石や貴金属、自動車などの比較的高価で個々に在庫管理が可能な棚卸資産に適した方法です。
  2. 先入先出法
    先入先出法とは、FIFO(First In First Out)ともよばれ、先に受け入れたものから順に払い出すという仮定の下に記録していく方法です。
  3. 後入先出法
    後入先出法とは、LIFO(Last In First Out)ともよばれ、最近受け入れたものから先に払い出す、という仮定のもとに記録していく方法です。
  4. 平均原価法
    平均原価法とは、取得した棚卸資産の平均原価を算定し、この平均原価によって期末の棚卸資産価額を求める方法です。平均原価法には、「単純平均法」「移動平均法」「総平均法」があります。
  5. 売価還元法
    売価還元法は「小売棚卸法」とも呼ばれています。これは、異種商品を一つにプールして加重平均を行う方法で、プールされた棚卸資産の売価合計額に原価率をかけて期末棚卸資産価額を求めます。
  6. 最終取得原価法
    最終取得原価法は、最終取得原価(期末に最も近い日に受け入れた商製品の価額)を期末棚卸資産のすべてに適用することによって算定する方法です。
  7. 基準棚卸法
    基準棚卸法は、「基礎有高法」「正常有高法」ともよばれます。これは生産・販売活動を展開するうえで最低限必要な棚卸資産を基準量とします。基準量は、基準棚卸法を採用したときの原価を適用し、価格の変動に関係なくその価額で評価していきます。

 

まとめ

ここまで棚卸資産の種類や評価方法について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
多様な評価方法が認められていますので、自社の実態に合った評価方法を採用・運用することにより、企業経営の意思決定に資する管理会計の礎にしたいものです。

 

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● 著者

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。