【2019年度税制改正】中小企業と地域経済の活性化策による優遇措置

2018年12月14日、与党が平成31年度税制改正大綱を発表しました。

与党は、アベノミクス推進により、景気回復基調にあるとのスタンスをアピールしています。
また、経済環境の好転と景気拡大の恩恵が地方・中小企業まで広く波及するよう、今回の税制改正大綱でも中小企業を対象とした様々な優遇税制の設置・拡充を定めています。今回はそれらの詳細についてご紹介していきます。

なお、今回の改正点は、2019年4月1日以降に開始する事業年度から原則適用されます。

本記事では、経済産業省が要点解説している「平成31年度経済産業関係税制改正について」における説明を参照しながら、企業の経理担当者が押さえておくべき改正点を中心にご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

(参照)自由民主党/公明党「平成31年度税制改正大綱」

(参照)経済産業省「平成31年度(2019年度)経済産業関係税制改正について」

 

ポイント1:中小機構出資の事業承継ファンドから出資を受けた中小企業に対する特例

高齢化進行と若年層の地方離れを背景として、中手企業の担い手不足が社会問題化しています。この問題は一企業の存続是非の問題にとどまらず、社会が求める価値(商品・サービス)の提供が停止しノウハウ・知見が後世に受け継がれない事態につながるため、企業および事業を然るべき後継者に承継するためのインフラ整備が急務となっているのです。

需要拡大を背景に、事業承継ファンドの事業規模・事業者数が増加傾向にあります。
事業承継ファンドとは、投資家から集めた資金を元手に、企業および事業の承継が必要な企業体に出資し、円滑な事業承継を実現することにより企業価値を高めることを目指すファンドのことです。

その事業承継ファンドの台頭を受け、以下のような税制優遇が検討されています。

事業承継ファンドから出資を受けた場合の法人税等の特例

ある特定の要件を満たした 投資事業有限責任組合、いわゆる事業承継ファンドを通じた大規模法人による出資が、中小企業向け税制措置のみなし大企業の判断における株式の対象から除外される予定です。
つまり、中小企業向けの税制措置の適用要件が大幅に緩和され、税制優遇が受けられる対象企業の範囲が拡大するようになることから、一層景気刺激効果が上がることが期待されます。
とはいえ、同特例の適用時期については記載がまだありません。引き続き続報を待つ必要がありますので注意しましょう。

また、既存の事業承継ファンドに対する中小企業向け税制措置の緩和の有無についても不確定であり、今後の議論にも注視した方がよいでしょう。

 

ポイント2:中小企業の災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置の創設

与党は、高齢化が急速に進行し生産年齢人口が減少する中、円滑な世代交代を通じた事業の持続的な発展の確保が早急に解決すべき課題であるとの危機感を強く抱いています。そのことから、事業承継の環境を整備する改正を行う姿勢を見せています。

災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制措置の創設

ここ数年、「異常気象」「数十年に一度の災害」などの表現に触れる機会が増えており、多くの個人・企業が被災しています。
これは頻発する災害発生への事前対策実行を企業に促す目的から、事業継続力強化計画(仮称)に基づいて中小企業が行った防災・減災設備への投資に係る特別償却制度が創設されるものです。平成29年度税制改正においても災害発生に備えた税制措置を設置していますが、一層の認知度向上、体制強化を狙い、同制度が創設されます。

2018年度に発生した災害の中小企業被害額は、7月豪雨で4,738億円、台風19-21号で99億円、北海道東部地震で42億円に上ります。

税務面のメリットがあるかないかに関わらず、災害大国日本において、災害事前対応は企業の継続的運営のための必須条件です。
災害対策を講じた際は、適切に申告を行うことにより一部行政の支援を得られますので、担当部署へ問合せてみるといいでしょう。
なお、所得税についても同様の改正が行われます。対象となる企業は、費用対効果を勘案の上利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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ポイント3:中小企業・小規模事業者の設備投資を支援する税制措置の延長

企業成長のためには、将来のための先行的な投資が不可欠です。
中小企業・小規模事業者が「攻めの投資」を行うことを後押しする目的から導入された各種税制措置の延長がなされる予定です。

事業継続力強化設備投資促進税制の創設

中小企業等経営強化法が改正されます。
青色申告書を提出する中小企業者の内、同法の事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画(仮称)の認定を受けた事業者が、特定事業継続力強化設備の取得費用において取得価額の20%を特別償却できることが定められています。対象となる企業は、費用対効果を勘案の上、設備投資を検討してみてはいかがでしょうか。

 

ポイント4:中小企業者等の法人税率の特例の延長

経済成長が続く一方、中小企業における景気好転の実感が得られていないという声が根強い中、法人税率の特例措置も延長される予定です。

中小企業者等の法人税率の特例の延長

法人税率の特例優遇が延長されます。
具体的には、中小企業者等の年所得800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%(⇔本則税率19%)の適用期限において、改正前の「2019年3月31日までに開始する事業年度」を2年間延長し、「2021年3月31日までに開始する事業年度」に変更しました。

中小企業にとって税負担が軽減されることは大変うれしい改正でしょう。税制優遇の条件をよく確認し、優遇を受ける権利を適切に行使して、財務基盤の安定を図りたいですね。

 

ポイント5:地域未来投資促進税制の延長・強化

地方の過疎化、経済圏の首都圏一極集中傾向が強まる中、地方における雇用の確保が急務となっています。
地域の特性を活かして、地域経済をリードする企業の前向きな投資を促進するための税制が延長・強化される予定です。

地域未来投資促進税制の延長・強化

都道府県及び関係市町村が、地域の特性の活用、高い付加価値の創出、地域の事業者に対する経済的効果を満たすと判断した事業を「地域経済牽引事業」として、国の要件確認を経て、設備投資について税額控除・特別償却の割合の引上げなどの措置が延長・追加されます。

国の要件確認には、市場成長率や事業自体の「先進性」などの細かい要件も含まれますので、活用のハードルは決して低くありませんが、我こそはと思われる企業の方は、自治体に相談されてみてもよいでしょう。
もし適用されれば、地域経済の未来を担う期待企業としてのお墨付きが得られますので、直接的な税制優遇効果だけでなく、間接的なプロモーション効果も期待できます。

 

まとめ

今回は、平成31年度の税制改正について、中小企業と地域経済を目的としたポイントをご紹介しました。
多岐にわたる改正が予定されていますが、総じて優遇措置の拡大・延長の方向の改正であることがご理解いただけたものと思います。
対象となる可能性を感じる制度があれば、期末に慌てることのないよう、早めに確認されることをおすすめします。

 

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● 著者

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。