棚卸資産評価における正味売却価額と再調達原価って実際はどうやって計算するの?

棚卸資産評価における正味売却価額と再調達原価って実際はどうやって計算するの?

正味売却価額や再調達原価を棚卸資産評価に適用するのは、期末に保有している棚卸資産の収益性が低下している場合です。取得原価が市場の販売価格に比べて高い場合、正味売却価額を基準に貸借対照表価額としなければなりません。棚卸資産会計基準(*企業会計基準第 9 号)は、収益性の低下による簿価引き下げという考え方に基づいています。基準の適用範囲は、二つに分けられます。一つ目は「通常の販売目的で保有する棚卸資産」で、もう一つは「トレーディング目的で保有する棚卸資産」です。一つ目は、収益性の低下によって帳簿価額を切り下げること、二つ目は、一般的な市場価格を基準として評価することが決められています。取得原価となる棚卸資産については、購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算して取得原価とされています。

通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準と損失処理

実務的には、過去から現在までの売上げ・販売状況が好調で、今後も中長期的に十分安定が見込める棚卸資産の品目は、収益性が低下する可能性が低く、正味売却価額を見積もる必要はないとされています。その一方で、売上げが伸びず、収益性が低下している品目については、低価法による強制評価の対象としなければなりません。棚卸資産を管理する製造部門または営業部門の営業状況や、品目別の損益がどのくらい発生しているのか見定めていくことになります。内部統制として、自社で収益が低下している事実として確認するには、どのような資料があればいいのか考える必要があります。低価法による強制評価が行われた損失の処理は、売上原価(製造原価、販売原価)として処理されます。

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 経理プラス メールマガジン登録

棚卸資産の評価基準

通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準(企業会計基準第 9 号の7-14)を簡単にまとめてみました。

  1. 正味売却価額より取得原価が高い時は、取得原価を基準に貸借対照表価額と設定します。
  2. 正味売却価額が取得原価を上回る際は、低価法によって強制評価が行われます。正味売却価額をもって貸借対照表価額とすることが定められます。この状況では、取得原価と正味売却価額との差額は当該期の費用として処理されます。
  3. 売却市場で市場価格の観察が難しい際も、低価法が適用されます。低価法によって、合理的に算出された価額を売価とします。
  4. 営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産の低価法適用は、以下の二つのケースがあります。一つ目は、帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる方法で、二つ目は、規則的に帳簿価額を切り下げる方法があります。二つ目の方法に関しては、一定の回転期間を超えている必要があります。
  5. 製造業における原材料等の評価の低価法適用では、原材料等と同様に再調達原価の方が把握しやすいです。そのため、正味売却価額が再調達原価とリンクして変動することが想定される場合には、継続して適用することを条件として、再調達原価(終仕入原価を含む)によって評価します。
  6. 企業が複数の売却市場に参加し得る場合の低価法適用では、実際に販売できると見込まれる売価を用います。また、複数の売市場が存在し売価が異なる場合は、それぞれの市場の販売比率に基づいた加重平均売価等を使って計算できます。
  7. 売価還元法を活用している際は、値下げ額等が売価合計額に適切に反映され、収益性の低下に基づく簿価引き下げ額が反映されていると判断することが可能です。
  8. 低価法は「洗替え法」と「切放し法」を棚卸資産の種類ごとに選択できます。しかし、切放し法と洗替え法を部分ごとに使用する際は、新しく棚卸資産が発生するごとに、適用方法を定め、製品入庫の手続きなどの業務フローを内部統制していく必要があります。

まとめ

低価法による強制評価は、私が米国に本社のある外資系企業の日本法人に入社した37年前から悩んできた課題でした。その頃の日本では低価法は選択適用であり、棚卸資産の評価といえば、税法で原則適用となる最終仕入原価法が主流でした。そこに「営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産」の評価をしろと監査法人に言われ、慌てて「在庫回転期間に応じて規則的に帳簿価額を切り下げる方法」を 社内基準として作成したことがありました。滞留棚卸資産と陳腐化棚卸資産の定義と評価方法を決めたのです。

この経験は、数年前に小売業のCFOに就任したときに生きました。その会社では、四半期ごとに不動在庫の評価を行い、一年間の不動在庫には50%の評価減を、2年間の不動在庫には100%の評価減を行っておりました。こうした手法は、市場で合理的な売価が確認できないときの正味売却価額に代わる方法です。かつて経験していたので、その趣旨がよく理解でき、四半期決算に移行したとき、帳簿への反映は、四半期決算では「洗替え法」で評価を行い、期末になると「切放し法」で在庫金額を書き換えるよう実務的な指示を出すとこができました。

正味売却価額を個別に適用できた例として、下取りした中古製品を整備して、オークションに出品して売却していた事業において、下取り価格に整備費用を加えた取得原価が、売価が下回る品目があり、数品目については、直近の売価から販売手数料を控除して正味売却価額を把握して評価減を行うことができました。通常はなかなか参考となる正味売却価額が見積もることのできる合理的売価が見つかりません。業種によって棚卸資産の重要性や評価方法が異なっていますし、同じ会社でも製造部門と販売部門、さらには、扱う商品や販売形態によって参考とする売価も異なっています。したがって、営業循環過程から外れた滞留又は処分見込等の棚卸資産の低価法適用方法を整備しておくことや、社内や事業部単位であらかじめ棚卸資産の低価法適用による正味売却価額見積もる合理的な評価方法を探して、継続適用できるようにしておくことが求められます。

「経理プラス」無料メルマガ会員登録はこちら

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

経費精算システム「楽楽精算」汎用

URLをクリップボードにコピーしました

● 著者

矢田 裕実

矢田 裕実

マスコミ、商社、IT、小売、メーカーなどの異なる業種において、また、外資、内資、中堅規模やベンチャーなど幅広い規模の企業にて経理財務を中心に経験。管理部門長や取締役も務め、経営再建、事業計画作成や資金調達、IPO前後の制度作り、内部統制の整備などを実行。現在は、ベンチャー企業の経営アドバイザーとして活躍。