営業利益と経常利益の違いとは?3つの分析方法と4つの事例を紹介!

営業利益と経常利益の違いとは?3つの分析方法と4つの事例を紹介!

営業利益や経常利益という言葉は経理担当者であればよく耳にする言葉でしょう。他にも売上総利益や粗利益、純利益など様々な利益があります。ここでは基本的な利益の種類の紹介をすると共に、分析時のポイントを紹介します。

営業利益とは

営業利益とは、企業が毎年行う本業に伴う利益のことで、略称で「営利(えいり)」、通称「粗利(あらり)」とも呼ばれます。損益計算書に記載され、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を引いて算出されます。

営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費

営業利益とは本業の営業活動の成果を表す数値になります。売上総利益は本業のサービスや商品力によって稼いだ利益で、売上高から売上原価を差し引いて算出。そして販売費や一般管理費は、本業のサービスの製造・販売にかかった費用のうち、販売活動に必要な費用や企業全体の管理活動にかかる費用が該当します。具体的には、管理部門の人件費や、本社家賃、広告宣伝費などが対象です。販売費及び一般管理費については、以下の記事も併せてご参照ください。

経理プラス:販売管理費を把握してますか? 収益改善につながる販管費の見方

経常利益とは

経常利益とは、企業が毎年行う経常的な活動に伴う利益を示すもので、略称で「経常(けいつね)」とも呼ばれます。営業利益に営業外利益と営業外費用を加減して算出します。

経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用

営業外収益は、本業以外の活動で経常的に発生する収益です。主に財務活動から得られるもので、受取利息や受取配当金、有価証券売却益、為替差益など。営業外費用は営業外収益の反対で、本業以外の活動で経常的に発生する費用です。主に財務活動から得られるもので、支払利息や社債利息、有価証券売却損、為替差損などが該当します。詳細については、以下の記事をご参照ください。

経理プラス:営業外費用と特別損失 違いと適切な処理を確認しよう

売上総利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益との違いとは

会社の経営状態を示す損益計算書には、5つの利益があります。それぞれの概要と関係について、図を用いて整理しましょう。

売上総利益(粗利益)

売上総利益とは本業のサービスや商品力によって稼いだ利益で、粗利益ともいいます。売上高から売上原価を差し引いて算出します。この項目はよく「粗利」と呼ばれることがあります。

売上総利益(粗利益) = 売上高 ― 売上原価

税引前当期純利益

税引前当期純利益は経常的活動に加え、突発的な特別利益と特別損失を含めた利益を指します。マイナスの場合は当期純損失といいます。

税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 ― 特別損失

税引後当期純利益

税引後当期純利益は税金を計上した最終利益で、税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税等を差し引いて算出。最終利益とも呼ばれます。マイナスの場合は税引後当期純損失といいます。

税引後当期純利益 = 税引前当期純利益 ― 法人税や住民税等

<5つの利益の関係図>

営業利益の計算方法

営業利益は売上総利益と販管費で計算をします。ここでは、黒字企業と赤字企業でそれぞれどのような計算になるか見ていきましょう。

黒字企業の営業利益の計算

売上総利益が2,500万円、販売費及び一般管理費:1,000万円の場合、営業利益は1,500万円になります。

営業利益 = 2,500万円 ― 1,000万円

赤字企業の場合の計算

売上総利益が2,500万円、販売費及び一般管理費:2,800万円の場合、販売費及び一般管理費:の方が高いため計算結果はマイナスになり、営業利益ではなく営業損失となります。この場合の営業損失は200万円になります。

営業利益 = 2,500万円 ― 2,800万円

営業損失ではなく、営業利益となっている場合は黒字という判断ができるでしょう。営業利益を上げるためには売上総利益を上げるか、販売費及び一般管理費を下げる方法があります。

営業利益と経常利益の分析の3つのポイント

それでは、営業利益と経常利益を分析する際のポイントを見ていきましょう。

1.自社分析

まずは、自社の業績を徹底的に分析することから始めましょう。営業利益と経常利益を高めるには、収益を大きくするか費用を削減するしか方法がありません。売上一つ取っても、単価と案件数に分けたり商品別に分析したりすることで、見えてくる視点が変わってくるでしょう。また、予算を策定している会社は予算値と実績値を比較することで、予算策定時の収益構造と何が異なって実績数値が導かれたか把握できます。

2.複数年度で比較

自社の昨年度の業績と比較する方法です。会社を取り巻く環境は日々激しく変化しており、それが結果として一つ現れるのが営業利益と経常利益という指標です。昨年度と数値を比較して変動要素を細かく分解し、自社の経営状況を適切に分析しましょう。なお、年度のみならず「半期」「四半期」「月次」でそれぞれの分析を行えば、季節トレンド等の影響が見えてくるはずです。

3.同業他社と比較

同業の競合企業や上場企業の営業利益、経常利益を確認します。上場企業であれば有価証券報告書などのIR資料、未上場企業であれば帝国データバンクや東京商工リサーチ等のサービスで確認が可能です。特定の企業と収益構造や費用の構成を比較できるため、自社の収益改善に役立つでしょう。

営業利益と経常利益がそれぞれ黒字と赤字だった場合

営業利益と経常利益の関係性について見ていきましょう。営業利益が黒字にもかかわらず、経常利益が赤字の状態はどのような経営状態なのか。営業利益と経常利益の関係を、4つのパターンに分けて解説します。

1)営業利益黒字/経常利益黒字

営業利益と経常利益が共に黒字の場合は、2つの要件があります。1つは、本業のビジネスが好調であること(営業利益黒字)。もう1つは本業外の活動で収益を上げているか、本業外の活動でかかるコストが営業利益の金額内に収まっている状況です。これは4パターンのうち、もっとも好ましい経営状態といえるでしょう。

2)営業利益黒字/経常利益赤字

営業利益が黒字で経常利益が赤字の場合は、本業のビジネスが好調である一方、本業外の活動で大きな損失を出した状態です。たとえば本業の傍ら多額を株式投資している会社が、投資の評価損を計上した場合などが該当します。

3)営業利益赤字/経常利益黒字

営業利益が赤字で経常利益が黒字の場合は、本業のビジネスが不調である一方、本業外の活動で大きな利益を出した状態です。たとえば海外展開している会社で、本業は営業不振ながら為替レートの急激な上昇により、株式の評価益を計上した場合などが該当します。本業のビジネスで赤字状態が続くと、企業経営の継続に支障が出ますので要注意なフェーズです。

4)営業利益赤字/経常利益赤字

営業利益が赤字で経常利益が赤字の場合は、本業のビジネスが不調であり、さらに本業外の活動も上手くいっていない状況。至急、経営を見直して収益構造を改善する必要があります。

財務分析については、下記の記事で詳しくご紹介しています。合わせて参考にご覧ください。

経理プラス:財務分析をする上で押さえておくべき5つのポイントと重要指標

まとめ

営業利益と経常利益について、詳しく説明してきました。同じ利益でも、評価する内容は異なります。それぞれの利益について特徴や違いを理解し、会社の業績を適切に評価しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 篠原 泰之

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1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。日商簿記1級保有。