売上高経常利益率は財務分析の重要指標!収益力を正しく測ろう

売上高経常利益率は財務分析の重要指標!収益力を正しく測ろう

経常利益は企業の収益力を測る重要指標です。ただし業績改善には、収益性を測る売上高経常利益率を分析することも大切な要素となります。ここでは、売上高経常利益率と分析方法について詳しくご紹介しましょう。

経常利益とは?

経常利益とは、企業が毎年行う経常的な活動に伴う利益を示します。本業の利益を示す営業利益に、毎年経常的に発生する損益(主に金利や為替に伴う損益)を加減して算出。利益の段階ごとにイメージを持っておきましょう。

  • 売上総利益

本業のサービス、商品力によって稼いだ利益。売上高から売上原価を差し引いて算出。

  • 営業利益

本業の利益。売上総利益から販管費を差し引いて算出。

  • 経常利益

毎年経常的に発生する活動に伴う利益。営業利益に営業外損益を加味し算出。

  • 税引前当期純利益

経常的活動に加え、臨時的・偶発的に発生した取引を含めた利益。経常利益に特別損益を加味し算出。

  • 税引後当期純利益

税金を計上した最終利益。税引前当期純利益から法人税等を差し引いて算出。

損益計算書の基本構造を下記にまとめましたので、合わせてご確認ください。

<損益計算書の基本構造>

損益計算書の基本構造

売上高経常利益率とは?

売上高経常利益率は、経常利益を売上高で除して求めます。企業の収益性を示す指標として広く使用されており、経常利益とともに重要な指標です。財務活動も含めた企業の事業全体の収益性を示すため、本比率が高ければ高いほど好ましいことになります。

<計算式>

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

業種ごとの売上高経常利益率

主要業種における売上高経常利益率について、統計データを見ておきましょう。以下は、2018年度の実績となります。

業種売上高経常利益率
製造業7.3%
卸売業3.2%
小売業3.0%
情報通信業8.0%
飲食サービス業4.1%

このデータでは、ITを軸とした情報通信業の利益率が高いことが印象的です。

(参考)経済産業省「企業活動基本調査」表番号2 調査結果の概要

売上高経常利益率の分析方法

売上高経常利益率を自社の経営に生かすには、どのような分析を行えば良いのでしょうか。ここでは、具体的に4つの手法をご紹介します。

自社分析

まずは、自社の当期数値を徹底的に分析することから始めましょう。原則として、売上高経常利益率を上昇させるためには売上高を上昇させるか、各種費用を減少させるかの二択しかありません。

期間比較

期間比較は、自社の昨年度の業績と比較する方法です。会社を取り巻く環境は日々激しく変化しており、それが結果として一つ現れるのが売上高経常利益率という指標。昨年度と数値を比較して変動要素を細かく分解し、自社の経営状況を適切に分析するようにしましょう。なお、年度のみならず「半期」「四半期」「月次」でそれぞれ同比率の分析を行えば、季節トレンド等の影響も見えてきます。

自社の属する業界平均と比較

自社の売上高経常利益率を、先述した業界平均と比較してみましょう。マクロの視点で業界平均と比較し、自社がどれくらいの立ち位置にいるか把握します。

自社の属する業界の競合企業や上場企業と比較

マクロの視点で業界平均を確認したら、最後に競合企業や上場企業の売上高経常利益率を確認します。上場企業であれば有価証券報告書などのIR資料、未上場企業であれば帝国データバンクや東京商工リサーチ等のサービスで確認することが可能です。特定の企業と収益構造や費用の構成を比較でき、自社の収益改善に役立つでしょう。

売上高営業利益率との比較

売上高営業利益率と売上高経常利益率を比較するのも効果的です。売上高経常利益率が売上高営業利益率より高い場合、低い場合に分けて見ていきましょう。なお、売上高営業利益率に関しては、下記記事を合わせて参考にしてください。

経理プラス:売上高営業利益率 経理必見!スグに活かせる財務分析の方法

売上高経常利益率が、売上高営業利益率より高い場合

売上高経常利益率が売上高営業利益率より高い場合、営業外損益(営業外利益―営業外費用)がプラスであることを示します。資産運用により株式売却益や配当金を計上していることを示し、本業で余った資産を上手く有効活用していることが分かるでしょう。
一方、売上高営業利益率がマイナスにもかかわらず売上高経常利益率がプラスの場合は、本業の事業が落ち込んでいることを意味するため事業のモニタリングが必要です。

売上高経常利益率が、売上高営業利益率より低い場合

売上高経常利益率が売上高営業利益率より低い場合は、営業外損益(営業外利益―営業外費用)がマイナスであることを示します。主に借入金の利息が大きく、マイナスになっている会社が多いでしょう。自社の経営状況に見合った借入金と金利であれば問題ありませんが、将来のキャッシュフロー計画に影響を及ぼす可能性が高ければ注視しましょう。
また、株式売却損や有価証券評価損が大きいことも、営業外損益をマイナスとする要因です。その場合、資産運用のあり方や余剰資金の用い方を見直す働きかけが必要でしょう。

売上高経常利益率を向上させるには?

原則、売上高経常利益率を上昇させるためには売上高を上昇させるか、各種費用を減少させるかの二択しかないことを先述しました。売上高に関しては、トップライン上昇のため適切な施策を打てているか確認したいものです。費用面に関しては削減できるコストがないか、あるいは使用している各コストが適切に回収できる見込みがあるか精査しましょう。勘定科目ベースで分析を行い、余裕があれば取引ベースで詳細な分析を行いたいところです。

まとめ

ここでは、売上高経常利益率について詳しくご説明しました。売上高経常利益率は会社が経常的に行う事業活動の収益性を示し、もっとも重視すべき指標のひとつです。同比率を分析し、会社の収益性向上を目指しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 篠原 泰之

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1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。日商簿記1級保有。