【2020年度税制改正】電子帳簿保存法の見直し 進むペーパーレス化
2020年12月に発表された令和3年度(2021年度)の電子帳簿保存法に関する税制改正の情報につきましては下記をご参照ください。
経理プラス:【令和3年度税制改正/後編】電子帳簿保存法に関わる税制改正ポイント
2020年度税制改正では、電子帳簿保存制度の見直しも含まれています。電子帳簿保存制度については、2019年度の税制改正でも一部の特例が創設されるなど、段階的に実務レベルで効率的に活用できるように変化しています。ここでは、電子帳簿保存法の基本を振り返りつつ、2020年度の税制改正の概要や今後の国の方針なども含めてお伝えしていきます。
また、中小企業と大企業のそれぞれについての改正点もまとめておりますので、あわせてご覧ください。
経理プラス:【2020年度税制改正】中小企業が注目すべき向け改正の9つのポイント
経理プラス:【2020年度税制改正】大企業が押さえておくべき改正ポイント
無料ダウンロード:電子帳簿保存法とは?対象書類や遵守すべき保存要件を解説
電子帳簿保存とは
電子帳簿保存法とは国税帳簿書類の電子データでの保存を認める法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。1998年7月に制定され2005年にe-文書法の施行に伴い、改正され、紙媒体の国税関係書類を電子化して保存することが認められるようになりました。
2015年には電子署名が不要になり、3万円以上の契約書・。領収書のスキャナ保存も対象となりました。翌年にはスマートフォンで撮影した領収書も電子保存が可能となり、より実務運用がしやすくなりました。現在領収書等のペーパーレス化を検討している企業には電子帳簿保存法への対応が肝となるでしょう。
経理プラス:電子帳簿保存法とは?~保存できる書類と手続き方法~
文章の電子化に関連する法律でe-文書法というものがあります。電子帳簿保存法との違いについてはこちらの記事をご覧ください。
経理プラス:e-文書法と電子帳簿保存法 保存要件や対象文書から見る2つの違い
電子帳簿保存法を導入するためには
電子帳簿保存法を導入するためには管轄の税務署長の事前承認が必要になります。
申請するためには指定の申請書を国税庁に提出します。申請書類については国税庁HPをご覧ください。
(参考)国税庁 申請書等様式
電子帳簿等保存制度の見直し概要
保存要件の緩和と新たな電磁的記録方法
電子帳簿保存制度は、会計帳簿の処理で保存すべき書類を紙ベースではなく、電子データ(電磁的記録)で保存することを認める制度です。しかし、電子データは途中でデータが改ざんされるリスクがあります。そのため、対象データが改ざんされていないことを証明するものとして、タイムスタンプという方法を活用してきました。タイムスタンプが付与されると、それ以降は変更されていないデータであることを証明できます。
2020年10月から施行される、電子帳簿保存法の制度では「真実性の確保」の解釈が広くなりました。主な改正内容は2点あります。
受取手のタイムスタンプの付与が一部不要に
今回は電磁的記録の保存要件を緩和する目的で、改正後に新たな電磁的記録方法を追加する流れになりました。それでは、どのように変わるのか詳しく確認しましょう。
電子データを受け取った場合、改正前後の保存方法は次のとおりです。
タイムスタンプの付与 | 改正前 | 改正後 | |
---|---|---|---|
発行者で付与 | 受取手にて付与が必要 | 受取手にて付与が不要 | |
発行者で付与なし | 受取手にて付与が必要 | 変更なし |
現行は発行者のタイムスタンプが付与されていても、受取手もタイムスタンプの付与が必要でしたが、改正後は発行者のタイムスタンプがあれば、受取手では不要になります。
受取手が自由にデータを改変できないシステムを使えばタイムスタンプが不要に
また、新たに加えられた保存方法として、「受け取る側が自由にデータを改変できない」クラウドシステムなどのサービスを利用することが認められます。近年のIT普及に伴い、現状の電子データ利用に即した内容へ見直されたといえるでしょう。クラウドシステムが電子帳簿保存法の法的要件を満たしているか否かについてはJIIMAが認証しているかという点でも判断できます。
経理プラス:目指せ!電子帳簿保存法対応で効率化!成功のカギは「JIIMA認証」
>>電子帳簿保存法でお悩みの方、電子帳簿保存法対応No.1の「楽楽精算」でペーパーレス化を実現しませんか?
※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より
適用時期と政府の方向性
見直し適用時期
電子帳簿等保存制度の見直しは、2020年10月1日から施行予定です。保存制度の緩和を効率的に活用するには、クラウド会計などのサービス導入も検討していくことが望ましいでしょう。サービス利用にはある程度の比較検討する期間や、導入後のスムーズな運用までの期間が必要です。セミナーに参加するなど早めの対応がおすすめです。
経理プラス:めざせ経費精算のシステム化!システム導入に失敗しないための極意
国はさらなるペーパーレス化を推進
会計書類等のペーパーレス化は、国も積極的に推し進めています。決算書類を含む会計書類等は、今までは紙ベースでの保存が義務とされてきました。義務化となっている以上、企業は電子データと紙との両方で保存するケースもあり、とても非効率になっていた部分があります。
そこで、事務処理の簡易化や過度な書類作成の削減、軽減税率導入で複雑化する会計の負担も削減する目的などから、電子帳簿保存法の整備が積極的に行われています。近年は会計ソフトの利用だけではなく、クラウドサービスを活用して交通費や交際費などの経費精算もペーパーレスで、しかも短時間で処理できるシステムの導入も増えつつあります。このように、今後もますますIT化が進んでいくのではないでしょうか。
経理プラス:【経理ニュース速報】経費精算の紙領収書、保存不要へ! 政府・与党が2020年4月から実施目指す
経理担当者が注意すべきポイント
電子帳簿等保存制度において、経理担当者が注意すべきポイントを解説します。
電子帳簿保存法の対象書類の確認
電子帳簿保存法は経理担当者であれば、知識として持っていると考えられますが、対象となる書類について明確に理解していないケースがあるかもしれません。ここで改めて確認しておきましょう。
- 帳簿類:仕訳帳、現金出納帳、売上帳、売掛金元帳、仕入帳、買掛金元帳、固定資産台帳
- 決算関係の書類:棚卸表、貸借対照表、損益計算書
- その他の資料:契約書、領収書、預り証、預金通帳、手形類、見積書、請求書など
電子データ以外にスキャナ保存も可能
帳簿類や領収書などは電子データの保存が認められていますが、それ以外にスキャナ保存も可能です。電子データ以外の「紙」で受け取ったものをスキャンして保存する方法をとれば、電子データ保存として認められます。
電子帳簿等保存法を利用するには事前申請が必要
電子帳簿等保存法は、利用前に申請が必要です。管轄の税務署で手続きが可能ですので、これから電子帳簿等保存を検討している企業は早めに進めておきましょう。
経理プラス:電子帳簿保存法の申請方法とは
スキャナ保存承認以前の書類もスキャナ保存が可能
スキャナ保存の承認を受けた場合、承認以前の書類については一定の要件に該当すればスキャナ保存をすることが可能です。紙ベースの書類もデータ化できますので、可能な範囲で時間をつくり、飽和してしまっている書類の電子化を進めておきたいところです。一度にたくさんの作業は難しいですから、はじめは現状の年度を電子化するところから進めてみましょう。
タイムスタンプについて理解する
2020年度の税制改正でタイムスタンプの保存方法が見直されましたが、そもそもタイムスタンプの仕組みについては、経理担当者がしっかりと理解しておく必要があります。なんとなくイメージできるものの、タイムスタンプが付与されるタイミングや手順などが曖昧な人もいるかもしれません。タイムスタンプについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
経理プラス:電子帳簿保存法のスキャナ保存要件となるタイムスタンプとは?
電子帳簿保存法の対応メリット
改正が進む中で年々実用性が増している電子帳簿保存法ですが、その対応メリットはなんでしょうか。
大きなメリットとしては、まず、紙がなくなることによる管理コスト・工数の軽減が挙げられます。紙の原本で管理する場合、保管するためのスペースが必要ですし、ファイリングなどの作業も発生します。複数拠点がある企業であればで原本の郵送が必要になり、そこにもコストがかかります。これらのコストや作業工数が抑えることができるのは大きなメリットです。
また、紙原本がなければ紛失のリスクも抑えられます。そもそも物がないのですから、紛失したり火事で焼失してしまうリスクはまずなくなります。
電子帳簿保存法対応に加えて、経費精算システムを使うことでさらに大きなメリットを得られます。
たとえば経費精算システム「楽楽精算」では領収書や請求書の電子データをシステムにアップロードする際、金額や日付などを読み取って申請用のデータを自動で作成してくれるので、精算のために申請内容を入力する手間が省けます。さらに自宅や外出先からでもスマートフォンアプリで領収書を撮影してアップロードできるので、申請漏れや遅れも減らすことができるでしょう。」
>>経費精算システム「楽楽精算」の領収書読み取り機能について詳細を見る
「楽楽精算」に限らず、電子帳簿保存法に対応したシステムはいくつかありますので、電子帳簿保存法の導入に合わせてシステムも検討してみてたはいかがでしょうか。その際、電子帳簿保存法の対応要件にデータの保存期間が一定期間ありますので、継続して安定的な運営・提供がされているサービスをお勧めします。
まとめ
いかがでしたか。今回は、2020年度税制改正の中で、もっとも身近となる電子帳簿等保存法の見直しについてお伝えしました。請求書や見積書は普段から利用している書類であり、電子データでのやりとりも増えてきていることでしょう。どのような要件なら電子データ保存として認められるのか、特に経理担当者はしっかりと理解し活用できるようにしていきましょう。
また、中小企業と大企業のそれぞれについての改正点もまとめておりますので、あわせてご覧ください。
経理プラス:【2020年度税制改正】中小企業が注目すべき向け改正の9つのポイント
経理プラス:【2020年度税制改正】大企業が押さえておくべき改正ポイント
>>電子帳簿保存法でお悩みの方、電子帳簿保存法対応No.1の「楽楽精算」でペーパーレス化を実現しませんか?
※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。