【2020年度税制改正】大企業が押さえておくべき改正ポイント

【2020年度税制改正】大企業が押さえておくべき改正ポイント

2019年12月に、「2020年度の税制改正大綱」が発表されました。今回は企業に係る項目の中から、主に大企業向けの改正点についてお伝えします。「新たに創設されたもの」、「既存制度の見直し・延長されたもの」と、大きく2つに分けて解説していきますので、是非ご参考ください。

また、他の押さえておくべき2020年度の税制改正内容はこちらの記事でも紹介しております。あわせてご覧ください。

経理プラス:【2020年度税制改正】中小企業が注目すべき9つのポイント
経理プラス:【2020年度税制改正】電子帳簿保存制度の見直し 進むペーパーレス化

【大企業・中小企業共通】新たに創設されるもの

大企業と中小企業の両方に共通して創設されるものは2点です。

オープンイノベーション促進税制(創設)

今回新たに創設となった制度に、「オープンイノベーション促進税制」があります。オープンイノベーション促進税制とは、ベンチャー企業に対して一定の金額以上の出資をした場合に、25%の所得控除が適用されるものです。

既存企業とベンチャー企業のイノベーションを後押しすることで、国際競争力で戦える企業となる支援をする狙いがあります。

一定金額以上とは、中小企業では1,000万円以上ですが、大企業では1件当たり1億円以上の大規模出資になります。なお、海外ベンチャー企業へは5億円以上の出資が要件です。
出資を受けるベンチャー企業には、「新規性・成長性のある設立後10年未満の未上場企業」「出資を行う企業または他の企業のグループに属してない企業」であるという要件があります。この制度を活用することで、国としてはベンチャー企業の活性化を図る狙いがあるようです。

5G投資促進税制(創設)

5G投資促進税制も今回新たに創設されました。これは、次世代通信である5G整備のための費用について、5G事業所とローカル事業者が投資した費用の一部を控除または特別償却するものです。

海外では運用が開始されている5Gを、国内でも早急に普及するためインフラ整備のための支援をする目的があります。

5G通信を活用し工場や農業現場に通信で行える遠隔機器などの設備を設けて、スマート工場を導入することなどが事例になるようです。
都市部以外の地域では農業や建設現場などで働き手が不足している地域もあるため、5Gインフラの活用による産業の活性化が期待されています。

【大企業・中小企業共通】見直し・延長されるもの

見直し・延長となった項目は、「交際費の損金不算入制度の見直し・延長」と「法人の消費税申告期限の延長の特例」です。

交際費等の損金不算入制度(見直し・延長)

交際費の損金不算入制度は、現行制度を2022年3月31日まで延長しますが、資本金の額等が100億円超えの法人は適用除外となった点がポイントです。一部の大企業において、接待飲食費の特例によって交際費が大きく変化している状況とは言えず、現預金の大幅な減少に寄与していないと捉えられています。

法人の消費税申告期限の延長の特例(見直し)

また、法人の消費税申告期限が1ヶ月延長されます。今までは、法人税の申告は特例で1ヶ月の延長が可能でした。しかし、法人税と消費税の申告期限に期間的な誤差があることで事務処理の煩雑化があったため、そういったことを改善する目的で消費税申告にも特例が適用された流れになります。

3月末決算の法人であれば、申告期限は2ヶ月後の5月31日が原則ですが、やむを得ない事情などがあった場合は、申請することによって6月30日まで申告期限が延長することになります。
通常は原則の期日内に処理すべきものですが、万一何からの事情があって申告が遅れる見込みの場合は、早めに期日延長の申請をしておくと安心です。

【大企業】見直し・延長されるもの

ここからは、主に大企業向けの税制改正点について解説していきます。見直し・延長される主な項目は次のとおりです。

大企業の研究開発税制等の税額控除適用(見直し)

収益が増えていても、社員への賃料引上げや設備投資も行わない企業に対して、積極的な投資を行うことを促すために、一定基準の大企業の研究開発税制の控除適用要件を現行の登記償却費総額10%から登記償却総額の30%を超えることに見直される予定です。

所得要件は現行通りで、当期所得より前期所得が同じか下まわること、賃上げ要件は現行通りで、当期の継続雇用者の給与総額より前期の継続雇用者の給与総額が下まわることになります。
こちらの税制改正は、適用期間についてはまだ確定されていないようです。

大企業の設備投資を行った場合等の税額控除制度における国内設備投資額に係る要件(見直し)

大企業の設備投資を活性化させるため、大企業が一定の要件の設備投資を行った場合、税額控除が適用されない範囲として次のように改正されます。

  • 設備投資に関する要件

(改正前)適用年度の国内設備投資額>(または同じ)適用年度の減価償却費総額×90%
(改正後)適用年度の国内設備投資額>(または同じ)適用年度の減価償却費総額×95%

こちらは、所得税においても同じ取り扱いになります。また、適用期間については現状まだ未確定になっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は2020年度の税制改正大綱の内容の中から、主に大企業向けの項目についてお伝えしました。新たに創設された「オープンイノベーション促進税制」や「5G投資促進税制」は、大企業と中小企業ともに対象となるものです。控除範囲も大きなものですので、該当になる見込みのものがあれば、最新の情報を調べておきましょう。また、改正の見直しによって優遇措置の適用外になる企業もありますので、今後も大綱の追加情報について注視しておくことをおすすめします。

また、中小企業向けや電子帳簿保存法に関する改正内容をまとめましたので、あわせてご覧ください。

経理プラス:【2020年度税制改正】中小企業が注目すべき向け改正の9つのポイント
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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

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大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。