IFRS(国際会計基準・国際財務報告基準)とは?導入のポイントとメリット・デメリットを解説!
最近、IFRS(アイファース、イファース)という言葉をよく耳にしますが、IFRSとはなんなのでしょうか。世界共通の会計基準・財務報告基準が存在するとどんなメリットがあるのでしょうか。
IFRSの現在の我が国の動向とともにメリット・デメリットについて考えたいと思います。
IFRS(国際会計基準/国際財務報告基準)とは
IFRS(国際会計基準/国際財務報告基準)とはInternational Financial Reporting Standardsの略称であり、現在グローバルスタンダートとなっている会計基準のことで、ロンドンを拠点とする民間団体である国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)が設定しています。
「世界共通の会計基準」づくりを目指して始まり、2005年にはEU域内上場企業に適用義務化され、現在は130以上の国と地域で採用されており、今後も広がっていくといわれています。現在、大きな資本市場の国では米国と日本だけ導入されていないので、世界中からこの動向が注目されています。2010年3月以降日本でも適用可能となり、強制適用時期は先延ばしになっているものの、現在は、適用企業を増やすことを目標に普及促進を図っており、徐々にグローバルスタンダードに近い形での会計基準が設けられています。
IFRS・会計基準の変更点については下記の記事で紹介しています。
経理プラス:IFRS(国際財務報告基準)改正のポイント-経理部門への影響は?
経理プラス:新リース会計基準が強制適用開始!IFRS未適用企業にも影響があるIFRS16号
IFRSの特徴
IFRSには下記の3つの特徴があります。
- 原則主義
- 貸借対照表重視
- グローバル基準
原則主義
原則主義とは解釈指針の他には、詳細な規定や数値基準がほとんど示されていない会計主義のことであり、その分、自由度が高くなります。このため、解釈の根拠を外部に明確に示す必要性があるため、大量の注記がなされます。これに対して、日本基準は細則主義で、会計基準や解釈指針、実務指針等々、細かく規定や数値基準が定められています。
貸借対照表(BS)重視
2つ目は貸借対照表(BS)を重視していることです。IFRSでは、投資家や債権者が必要としている資産価値を評価する情報として、将来キャッシュフローの現在価値を重視する考えですが、日本では期間損益を重視する損益計算書(PL)重視の考え方です。
グローバル基準
3つ目はグローバル基準であるということです。各国の独自性(たとえば税務上問題など)も加味せず、議論や定義も英語で行い、言語差異を防ぐ工夫をしています。IFRSの3つの特徴がメリット・デメリットにもつながります。
IFRS導入のメリット
日本でIFRSを導入している会社は、上場会社の一部にとどまりますが、IFRS導入にどのようなメリットがあると考えられるのでしょうか。
経営管理への寄与
海外子会社が多い場合、すべての子会社がIFRSを採用していると、会社間指標が同じになるので管理が容易になり、経営管理に役立ちます。
比較可能性の向上
海外の競合他社と自社の経営成績などを比較する際に会計基準が異なっていると正しく比較できません。そのため、グローバルスタンダードな会計基準を用いることで海外の競合他社との比較がしやすくなります。
業績の適切な反映
IFRSでは、貸借対照表を重視した考え方ですので、将来キャッシュフローに基づいた将来価値を把握でき、日本基準よりも実態に即した状況把握が可能となります。たとえば、のれんの価値の評価や非上場株式の価値の時価評価などがその代表例と言えるでしょう。
IFRS適用時の「のれん」処理の方法の変更点については、下記の記事で紹介しています。
経理プラス:日本基準・IFRS基準での「のれん」処理方法の違いと最新情報
海外投資家への説明の容易さ
海外投資家がいる場合、日本の会計基準とIFRSの差異を説明する必要がありましたが、それに時間を費やす必要がなります。
海外での資金調達の円滑化
海外における資金調達において、財務諸表がそのまま使うことができるので、資金調達の選択肢が拡大すると考えられます。
このように、グローバル展開している会社にとって、IFRS適用は大きなメリットがあると考えられます。
IFRS導入のデメリット
一方、IFRS適用にあたってのデメリットとはなんでしょうか。
事務負担の増加
単体の財務諸表については依然として日本基準での開示が求められるので、複数帳簿(IFRS用と日本の会計基準用)の完備する必要があり、また、特徴で述べた通り、注記情報が多大になるため開示コストが増加するなど、経理面でも事務負担が増します。
コストの増加
IFRSへの移行に関する外部のアドバイザー費用、追加的な監査報酬、システム対応のコストの増加など、IFRSの導入に当たっては多額な費用が必要となります。
適用の困難さ
会計基準が難解であることや頻繁に改正されるので適用が困難を極めます。
IFRSを導入すべきかどうかの判断基準については、下記の記事で紹介しています。
経理プラス:IFRSを適用すべき企業、適用すべきではない企業
IFRS導入を検討する際に気を付けるポイント
IFRSは上記のように日本の会計基準とかなり異なるため、適用に当たっては綿密な計画が必要となります。たとえば、企業の要である売上の計上基準一つをとっても、海外との取引の場合、出荷基準が認められず、検収基準となる可能性が高いので、会計財務部門に限らず、関係各部署の従業員への教育も必要となってきます。また、IFRSに適用するにあたっては、システムの変更も必至です。このように、IFRSを適用するにあたっては、会社に大きく影響を与えますから、金銭、人的コストの増大も勘案し、メリット・デメリットを総合的に判断して、綿密な計画で進めていくことが肝要です。
経理プラス:【勉強会動画】IFRSの導入手順
最後に
日本では現状、IFRSは上場会社でも強制適用されていないので、すぐにIFRSの影響を受けるという事業者は少ないかもしれません。しかし、世界はグローバル化が進み、会計においても世界的に統一するニーズも少しずつ高まっています。現在、グローバル展開されている事業者、また将来グローバル展開を考えている事業者は特に、世界共通の会計基準であるIFRSに興味を持っていただきたいと思います。
経理プラス:【勉強会動画】IFRSの基礎知識
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。