新リース会計基準が強制適用開始!IFRS未適用企業にも影響があるIFRS16号

新リース会計基準が強制適用開始!IFRS未適用企業にも影響があるIFRS16号

リース会計基準が変わる!

リース取引における会計処理は、2008年からファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に区分する方法で行われてきたところです。そして2019年1月1日以後に開始する事業年度から、いよいよ国際財務報告基準IFRS16号による新リース基準が強制適用となりました。
今回はこれまでのリース会計を踏まえ、IFRS16号による新リース会計基準において借り手側が注目すべきポイントを解説しましょう。

IFRSについての詳細はこちらの記事で解説をしておりますので合わせてご参照ください。
経理プラス:IFRS(国際会計基準)とは?導入のポイントとメリット・デメリットを解説!

リースの概要と借り手側のメリット

リースとは、事業用設備をリース会社から借りることです。リース取引を行うことによる借り手側のメリットは、その財務面にあります。
リース取引では、月額の賃借料さえ支払い続ければ、その資産を購入したものと何ら変わりなく事業のために使い続けることが可能です。つまり、新品を購入するために資金調達をする必要はありません。また、資産はいずれ劣化や型落ちしてしまうため、リース期間を短期に設定すれば新しい資産を使い続けることも可能になります。

このように、資金調達の限度額を損なわずに新しい設備を使うことができるリースは、財務面でのメリットが非常に大きい制度なのです。

これまでのリース会計の流れ

2018年までは、リースで資産を借り入れた時の借り手側の会計処理は、そのリースが以下いずれに該当するかで処理方法を区別してきました。

  • ファイナンス・リース取引
  • オペレーティング・リース取引

端的に言うと、ファイナンス・リースとは売買と同視できる取引のことです。会計上の視点からその実態は売買契約で、単に代金を分割払いしているものとみなされる取引がこれに該当します。ファイナンス・リース取引は、オンバランス処理(=資産計上)が原則です。計上する金額は、見積購入価格やリース料総額などから算定することが決められていました。

一方、オペレーティング・リースとは、賃貸と同視できる本来のリース取引です。借り手が支払ったリース料は全額賃貸料として経費となり、オフバランス処理(=資産計上しない処理)することができました。この区分が開始されたのは2008年4月です。これにはリース取引が多様化し、単なるレンタルだけでなく、実質的な売買とみられる取引が増えたことが背景にあると考えられます。

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ファイナンス・リースの判断基準

リースをファイナンス・リース取引としてオンバランス処理(=資産計上)するには、数値基準が用いられていました。ファイナンス・リース取引に区分されるのは、次のいずれかを満たすものです。

  • リース期間が耐用年数の75%以上
  • リース料総額の現在価値が見積購入価格の90%以上

さらにファイナンス・リースのうち、リース契約の終了時に借り手に所有権が移転するかどうかで以下の2つがあります。

  • 所有権移転ファイナンス・リース取引
  • 所有権移転外ファイナンス・リース取引

どちらも資産計上しなければならない点は共通ですが、その資産計上額(取得費)や償却方法に違いがありました。

IFRS16号による新リース会計基準の特徴

それでは、2019年1月1日以降に開始する事業年度から強制適用となった新リース会計基準について、その特徴を借り手側の処理を中心に解説します。

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区分は廃止

数字基準によって、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類するという従来のリース取引の区分がなくなります。これまでは、リース取引のうち数値基準以上のものをオンバランス処理(=資産計上)としてきました。しかし、まずリースの判断基準そのものが新しくなりました。
そして新基準でリースと判断されたものに、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区別はなく、原則として全てのリースがオンバランス処理(=資産計上)となるのです。言い換えると、これまでは「売買か賃貸か」でオンバランスとオフバランスが判断されていたところが、今後は「リースか否か」がそれに代わるということになります。

ただし例外として、少額なリース取引や短期リース取引は、新基準のリースに該当してもオフバランス処理(=資産計上しない処理)が認められます。また、この処理はあくまで借り手側の改正です。そのため、貸し手側はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分で会計処理を継続することになります。

新しいリースは「使用権」と「支配」がポイント

リースか否かを識別する新基準では、リースの対象となる事業用設備の「使用権」をもとに判断されます。使用権については、その対象物の「支配」という概念が基準です。また、新リース会計基準では、リースに該当するものは形式上の契約にこだわらないとしています。
このことから、これまでリースと判断してこなかった賃貸借契約も、新基準では会計上のリースに該当する可能性が高いでしょう。

貸借対照表上にも影響が出る

これまでオフバランス処理(=資産計上しない処理)してきたリースがオンバランスとなることで、貸借対照表に計上されるリース負債の額が増えます。このことから総資産額は増額し、結果として自己資本比率は下がることになるでしょう。

損益計算書上の変化

これまでオペレーティング・リースで全額費用にしてきたリース料が、新基準ではリースの減価償却費と支払利息で費用化されます。したがって一度に費用にできる金額は通常減少することになりますが、そうなると営業利益は上がるでしょう。また、営業利益が上がる理由としてもう一つ、支払利息が営業外費用に表示されることも影響します。

短期のリース、少額のリースはオフバランス処理ができる

新基準のリースに該当しても、短期のリース取引と少額のリース取引はオフバランス処理(=資産計上しない処理)が可能です。短期のリース取引に該当するものはリース期間が12か月以内のリースで、少額なリース取引とはIASBの基準として5,000米ドル以下とされています。

まとめ

IFRS16号の適用で、少なくともオンバランス処理(=資産計上)を行うリースの範囲は広がっています。このことから、今後はまず現在リース料として処理しているものの個別判断を行うことが必要です。さらに続いて、新リース会計基準で他にリースに該当する賃貸借取引がないかを確認しなければなりません。監査法人や顧問会計事務所と相談し、現在の賃貸借取引を一度整理することが求められます。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 石田 夏

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理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。