収益認識に関する会計基準が2021年に強制適用?実務への影響は

これまで収益の認識ついては、企業会計原則によって「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」とし、具体的な基準は開発されていませんでした。これについて、2018年3月30日に導入されたものが「収益認識に関する会計基準」です。
今回は、「収益認識に関する会計基準」対象外の取引や、適用時の会計処理のポイント、経理実務への影響について解説していきます。

企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準」

 

なぜ「収益認識基準」が開発されたのか

では、なぜこのような基準が開発されたのでしょうか。それには、国際的な動向が関係しています。「収益認識に関する会計基準」の終盤にある「結論の背景」という項目を要約すると、以下のように開発の経緯が説明されているようです。

  • 国際会計基準審議会(IASB)は、米国財務会計基準審議会(FASB)と共同して収益認識基準を開発し、これを元に2014年5月「顧客との契約から生じる収益(IFRS 第 15 号)」を公表した
  • このIFRS 第 15 号を踏まえて日本で開発されたのが、「収益認識に関する会計基準」になる

このことから、日本の会計基準を国際会計基準に寄せている流れの一つと言えるでしょう。

 

「収益認識に関する会計基準」の適用対象となる企業と適用時期

中小企業(監査対象法人以外)については、引き続き企業会計原則に則った会計処理も可能とされています。つまり、中小企業で監査対象法人にも該当しない企業は任意適用で問題ありません。なお、中小企業の定義は事業内容によって異なります。

連結子会社についての考え方

親会社については収益認識基準の強制適用企業に該当しても、その子会社は強制適用企業に該当しない場合があります。この場合、子会社の収益認識は従来のままでよいのでしょうか。これについては、税務研究会より出されている「原則的には新しい基準を適用するが、修正仕訳での対応も可」との見解が参考になるでしょう。

(参考)税務研究会 連結子会社の決算基準

収益認識に関する会計基準の適用開始時期

任意適用が開始されたのは、2018年4月1日以後に開始した事業年度からです。2021年4月以後に開始される事業年度からは、対象企業は強制適用となります。

 

収益認識に関する会計基準の対象にならない取引がある?

「収益認識に関する会計基準」では、「顧客との契約から生じるものではない取引や事象から生じる収益は、本会計基準で取り扱わないこととした」と明記されています。このことから、対象外となる取引は下記の6つです。

  1. 「金融商品会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引
  2. 「リース会計基準」の範囲に含まれるリース取引
  3. 保険法における定義を満たす保険契約
  4. 同業他社との交換取引
  5. 金融商品の組成又は取得において受け取る手数料
  6. 「不動産流動化実務指針」の対象となる不動産の譲渡

(引用)国税庁「収益認識に関する会計基準」への対応について
 

収益認識に関する会計処理のポイント

それでは、いよいよ「収益認識に関する会計基準」における会計処理のポイントを解説します。

履行義務の識別と収益の認識のタイミング

契約による債務の履行義務をベースに収益を識別することが定められ、この履行義務が充足した際に、また充足にするにつれて収益を認識することが定められています。

収益の額の算定

履行義務を充足した際に、または充足するにつれて、取引価格のうちその履行義務に配分した額について収益を認識することが定められています。

契約資産、契約負債の計上

顧客から対価を受け取る、または対価を受け取る期限が到来する前に、財あるいはサービスを提供した場合は、収益を認識し、資産科目として「契約資産又は債権」を計上します。
逆に財やサービスを提供する前に顧客から対価を受け取る場合、その対価を受け取った際、または対価を受け取る期限が到来した際のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について負債科目として「契約負債」を計上することが定められています。

 

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経理部の実務への影響は?

収益の識別に注意

経理部の実務への影響は、売上発生時における収益の識別です。これまで財やサービスが提供された際は、その取引額をもって売上に計上していたことでしょう。今後は、その売上を「履行義務」によって相手が受ける権利の額で収益を認識し、金額を配分することが必要です。さらに、履行されていない財やサービスの提供がある場合は、「契約負債」や「契約資産」などの勘定科目を使用して貸借対照表に表示しなければなりません。

事例でイメージする収益の識別

実務への影響をイメージしやすい例として、国税庁の「収益認識基準による場合の取扱いの例」において解説されている「自社ポイントの付与」をご紹介します。
自社ポイントとは顧客の確保を目的とした販売の仕組みです。お買い物時に支払額に応じたポイント付与し、次回以降の買い物で現金の代わりに使用することが出来ます。これまでは、お買い物ポイントを付与しようがしまいが、売上時に受け取った対価の全額を売上に計上していたことでしょう。
しかし新しい収益認識基準では、お買い物時の商品の引き渡しとポイント付与は別々の収益として識別されます。

(例)3,000円の商品を売上げ、300ポイント(1ポイント=1円)のお買い物ポイントを付与した

 借方金額貸方金額
現金3,000売上2,700
契約負債300

最初の商品売買時には、付与したポイント分の収益を認識しません。
契約負債は、お客さんがポイントを使用した時の処理で精算します。

(例)300円の商品を売上げ、300ポイントはお買い物ポイントで支払いを受けた

 借方金額貸方金額
契約負債300売上300

これまで一般的な会計処理では、売上時にポイント付与を含めて全額売上計上し、ポイント使用時に減少した現金分を売上値引きや販売促進費などで処理してきたことでしょう。従来の方法で上記の例を処理すれば、売上高はトータル3,300円です。一方、新しい基準での売上高はポイント分を除いた3,000円になります。
つまり収益の識別を誤ると、売上を誤るという大変な話なのです。ここが、経理部における実務上の最大の影響となるところでしょう。
ただし、全てのお買い物ポイントでこの処理をする必要はありません。数年後に全ての企業がお買い物ポイントを付与しただけで、このような処理を行うことは、実際のところ現実離れした注文といえるでしょう。

そこで「収益認識に関する会計基準の適用指針」のP.14の48の内容をよく見てみると、お買い物ポイントのようなオプションの提供でこうした複雑な処理を行わなければならない要件について、以下のようにされています。

  • そのオプション(お買い物ポイントなど)がその契約を締結しなければ顧客が受け取れない「重要な権利」を顧客に提供するものであること
  • 「重要な権利」とは、例えば、追加の財又はサービスを取得するオプションにより、顧客が属する地域や市場における「通常の値引きの範囲を超える値引きを顧客に提供する場合」であるとき

このことから、そのお買い物ポイントの付与が通常の値引きを超えるなどの「重要な権利」にあたるかどうかが、会計処理の判断のポイントといえるでしょう。

収益の帰属時期については通達を確認しよう

「収益認識に関する会計基準」の導入に伴い、平成30年税制改正において法人税の改正が行われました。そして、この改正に伴い収益の認識基準に関する国税庁からの通達が50以上も新設・改正されています。
なお、新設・改正された通達の一覧は以下に記載されている通りです。目次をざっと読み、自社に関係しそうな通達は早めにチェックしておきましょう。

国税庁「収益等の計上に関する改正通達の構成及び新旧対応表」

 

まとめ

2021年の「収益認識に関する会計基準」の強制適用までには、まだ期間があります。それまでに監査法人や顧問税理士と打ち合わせながら、現在の販売システムのどの部分の会計処理を変更しなければならないか、個別に判断することになるでしょう。打ち合わせの前に、「収益認識に関する会計基準」のうち「会計処理」の章を一読しておくと良いと思います。

 

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経費精算システム「楽楽精算」

● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。