IFRS(国際財務報告基準)改正のポイント-経理部門への影響は?

2018年度からIFRSの新しい収益認識に関する会計基準が、2019年度からはリースに関する会計基準が適用となります。これが適用されることとなった場合、従来の会計処理が変わる可能性があります。今回はIFRSの新しい基準のポイントを解説します。

 

IFRS(国際財務報告基準)改正の詳細

IFRS(国際財務報告基準)とは?

IFRS(国際財務報告基準)とは、IASB(国際会計基準審議会)が定める会計基準です。
世界には、主要な会計基準として、IFRS(国際財務報告基準)の他、米国基準、日本基準などがあります。近年は会計基準の共通化を図るため、日本基準とIFRSで大きな差異はなくなってきていますが、日本は日本独自の会計基準を採用する一方で、IFRS基準を適用することも認められています。IFRS基準で決算開示を行う日本企業も増えてきました。
最近では、収益認識に関する会計基準、リースに関する会計基準が公表され、適用が始まることとなります。

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」とは?

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」とは収益認識に関する会計基準です。
これまでも収益認識に関する基準はありましたが、複数ある収益認識に関する会計基準の間に考え方の相違点が残っていました。IFRS第15号は、これを体系的・包括的に整理した新しい会計基準で、2018年1月1日以後開始する事業年度から適用することとなります。

IFRS第15号によると、収益認識は次の5つのステップで検討することとなります。

  1. 顧客との契約を識別
    収益認識の対象となる顧客との契約を識別します。
  2. 履行義務の識別
    収益認識は履行義務の単位で行います。そのため、契約に基づく財やサービスを評価し、履行義務を識別する必要があります。
  3. 取引価格の算定
    変動対価、重大な金融要素、現金以外の対価、顧客に支払われる対価といった要素を考慮した上で、取引価格を算定します。
  4. 取引価格の配分
    取引価格を個々の履行義務に配分します。通常、取引価格は独立販売価格(個々の履行義務ごとに販売したと考えた場合の価格)に基づいて個々の履行義務に配分することとなります。
  5. 収益の認識
    財またはサービスの支配が顧客に移転され履行義務を充足したタイミングで収益を認識します。

事例で考えてみましょう。
ある製品を販売し、製品を据え付け、さらに3年間の製品保証をするという一つの契約があったとします。製品を販売した側からすると、この契約は、①製品の販売、②製品の据え付け、③製品保証の3つの履行義務に分けることができます。それぞれの履行義務に分解したうえで、①製品の販売は販売時に、②製品の据え付けは据え付け時に、③製本保証は保証期間にわたって収益を認識していくこととなります。それぞれの時点で収益認識する金額として独立販売価格という考え方が出てきます。契約金額を、それぞれの履行義務ごとの独立販売価格に基づいて配分していくこととなります。

IFRS第16号「リース」とは?

IFRS第16号「リース」とは、リース取引に関する会計基準で、2019年1月1日以降に開始する事業年度から適用されることとなります。このIFRS第16号では、対象となるリース取引が「貸手から借手に対して原資産の使用に関する支配の移転がある取引」というように定義されました。これにより従来はオフバランス処理ができていたオペレーティングリース取引が原則としてオンバランス処理(リースに関する資産や負債を認識する処理)しなければならないなどの変更が生じることとなります。

 

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どのような企業に影響がある?経理部門への影響は?

新しい収益認識基準が適用されると、収益認識時点や収益認識する金額が変わる可能性があります。これまでは契約を会計単位として収益認識していたとしても、その契約がいくつかの履行義務に区分できるような場合は、それを区分し、それに応じた会計処理を行う必要があります。たとえば、商品を販売した時に顧客にポイントを付与しているような場合、これまではポイント引当金を計上するなどの会計処理をしていましたが、新しい収益認識基準の適用以後は、売上高から控除する会計処理が求められることとなります。
収益認識をするためのプロセスが従来よりも複雑になっているため、取引の類型ごとに新しい収益認識基準に応じた収益の認識方法を検討する必要があります。また現在のシステムでの対応が困難であるときはシステムの改修も必要となるでしょう。

 

日本の収益認識基準はどうなる?

日本においてもこれまで包括的な収益認識の考え方を示した会計基準はありませんでしたが、2018年3月に「収益認識に関する会計基準」等が公表され、2021年4月1日以後開始する事業年度から適用されることとなります。なお、それ以前であっても早期適用することが認められています。
この「収益認識に関する会計基準」は、基本的にはIFRS第15号の考え方が取り入れられており、その上で、日本企業特有の実務に配慮した取扱いや例示が含まれています。例えば、重要性が乏しい場合の契約変更、出荷や配送活動、工事期間が短い工事契約、受注制作ソフトウェアなどで、一定の要件を満たす場合には代替的な会計処理を選択することが認められています。また、消費税や消化仕入など、日本特有の取引に関するものについての事例も示されています。

 

まとめ

2018年度からIFRSの新しい収益認識に関する会計基準が適用となりますが、日本基準においても2021年度より新しい収益認識に関する会計基準が適用されることとなります。これにより上場企業などは大きな影響が生じる可能性もあるため、事前に影響を把握し、それの備えた対応を検討しておくことが必要でしょう。

 

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● 著者

松本 佳之

松本 佳之

税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。