日本基準・IFRS基準での「のれん」処理方法の違いと最新情報

企業がM&Aをしたときなどは「のれん」の問題が生じます。今回は、のれんとは何か、なぜ生じるのかに加え、日本基準とIFRS基準でののれんの処理方法についてポイントを解説します。

また2018年9月13日に、IFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)が企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したことがわかりました。こちらについても簡単にご紹介します。

 

M&Aにおける「のれん」とは

「のれん」とは、ある会社を買収した時の買収価格が、その会社の純資産を上回る額のことをいいます。例えば、純資産が1億円の会社を、3億円で買収した時には、差額の2億円がのれんとなります。これは、その会社が持っている顧客、ブランド、技術力、人材などの価値を考慮して、買収を行ったことによるものであり、将来の「超過収益力」であると考えられます。
逆に、純資産が3億円の会社を、1億円で買収するようなことも考えられます。そのときは、「負ののれん」と呼ばれるものが2億円発生することとなります。

発生したのれんは、貸借対照表に計上されます。ただし、のれんは借方の固定資産の部に計上されますが、負ののれんは一括利益処理をすることとなります。
買収や合併といったM&Aが行われると、この「のれん」や「負ののれん」が発生しますので、まず、のれんの意味について理解しておきましょう。

 

日本の会計基準での「のれん」の処理方法

貸借対照表に計上されたのれんは、償却していく必要があります。減価償却や長期前払費用を償却するときと同じイメージです。
のれんは買収時点で認識した将来の超過収益力ですが、それはその時点での価値のものです。会社が持っている顧客、ブランド、技術力、人材などといった超過収益力を生み出す源は、年数が経過するとともにその価値が劣化し、失われていくものであるとも考えられるため、年数の経過とともに償却していくことが考えられます。では、これらを何年で償却すればよいのか、という問題が生じます。

この点について、日本の会計基準は、20年以内の期間で償却していくこととされています。最大で20年となっていますが、その超過収益力が何年維持するのかということを見積もって、20年以内の期間内で償却する必要があります。ビジネスサイクルの早い事業を行っている場合の償却期間は5年など短い期間となるでしょうし、製造業などビジネスサイクルが早くない安定した事業を行っている場合の償却期間は長くなると考えられます。
なお、日本基準では、のれんの規則償却をすることとなりますが、固定資産に計上されるため減損会計の適用対象ともなります。すなわち、のれんの価値が著しく下落している場合等は減損処理をする必要があります。

 

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現在のIFRS基準の「のれん」の処理方法と減損処理

日本基準では、のれんを規則的に償却していきますが、IFRS基準では処理方法が異なります。IFRSとは、国際財務報告基準のことをいい、会計基準の国際的な共通ルールであるといえます。会計処理を行うにあたっては、会計基準に基づいて行うことが求められています。日本の上場会社などは日本基準を適用することが原則ですが、IFRS基準を適用することも認められています。

異なる会計基準を適用している会社間では、投資家がその会社の業績等を比較することが難しくなります。そのため、日本基準もIFRS基準を考慮して作成されており、大枠では似ていますがいくつかの違いがあります。その一つがのれんの会計処理です。

このIFRS基準ではのれんの償却は行いません。しかし、それではのれんが貸借対照表に計上されたままとなってしまいます。そこで、IFRS基準では、のれんの価値が著しく下落した際に、減損処理を行うこととされています。
減損処理とは、その資産の収益性が低下したことなどの理由によりその投資額の回収が見込めなくなった場合に、一定の条件に従って、帳簿価額を減額する処理のことをいいます。

例えば、2億円ののれんを計上していたとします。決算の時点で、そののれんの価値を評価すると5千万円と考えられる場合には、1億5千万円の減損処理を行うことにより、貸借対照表に計上されるのれんは5千万円となります。

このため毎年、減損テストといって、のれんの価値を評価するような手続を実施していく必要があります。将来たくさんの収益を稼ぐと考え、投資をしてのれんを計上していた場合で、実際に期待どおりに収益を稼いでいなかった場合などで減損処理が必要となってきます。

このようにIFRSでは、将来の収益獲得を期待して投資をした場合で、その期待通りに収益獲得できる限りにおいて、のれんが費用に計上されることはありません。一方、日本基準においては、のれんは毎年費用処理されます。

近年は投資額の大きいM&Aも増加しており、必然的にのれんの計上額も大きくなります。日本基準では、投資が期待どおりの効果を生んでいたとしても、のれんの費用化により収益を圧迫することが考えられます。収益が悪化していると、今後のM&A戦略にも影響してしまう可能性があります。そのため、M&Aを積極的に行うような会社では、IFRS基準を採用し、のれんの規則的な償却を行わない方法を採用するケースが増えてきています。

 

IFRS基準の「のれん」の会計処理の見直しについて

冒頭でもお伝えした通り、IASBがIFRS基準の企業買収を巡る会計処理の見直しに着手したと報道されました。
現在は償却を行わないIFRS基準ののれんですが、のれんの費用計上を義務付ける方向で検討しており、2021年を目途に結論を出すそうです。
のれんの価値が著しく下落した際に、減損処理を行うとされている今の基準には様々な意見がありましたがこのタイミングで見直すこととなり、IFRS基準を採用している企業には大きな影響がありそうです。
また現在はIFRS同様のれんの償却が不要な米国会計基準にも変化があるかもしれません。

 

まとめ

のれんとは何か、日本基準とIFRS基準でのそれぞれののれんの会計処理方法について解説しました。近年、IFRS基準を採用する上場会社も増えていますが、その理由の一つはこののれんの会計処理の違いにあります。そのような観点で、上場会社の財務諸表を見てみるのもよいでしょう。

 

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経費精算システム「楽楽精算」

● 著者

松本 佳之

松本 佳之

税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所。2005年公認会計士三次試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。