貯蔵品とは?適切な処理で節税メリットも
貯蔵品とは?適切な処理で節税メリットも
「貯蔵品」という勘定科目を聞いたことがありますか。経理担当者の方であっても、あまり馴染みがない方もおられるのではないでしょうか。
貯蔵品とは、商品・原材料以外のこまごまとした物品、たとえば、切手、文房具、段ボールなどを資産計上するための勘定科目です。
多くの場合、少額かつ多品種の資産が対象ですので、簡易的な経理処理を採用している企業も多い一方、適切な税務申告により節税メリットが生じる場合もありますので軽視できません。
今回はこの貯蔵品について、どのような物品が対象になるのか、また税務上留意すべき点は何かなどを見ていきましょう。
貯蔵品とは何か
貯蔵品とは、事業に関わる商品・原材料以外のこまごまとした物品のうち未使用のもので、資産の勘定科目です。
たとえば、切手、文房具、段ボールなどが挙げられます。これらの物品は、購入直後に使用されることは稀で、基本的には新品の状態のまま、オフィスに備蓄されます。したがってこれらの物品は、発生主義の原則に基づき、購入時に費用として計上せず、一旦貯蔵品として資産計上し、使用した時点で費用計上します。
それでは、具体的にどのような物品が貯蔵品として扱われるのか、見ていきましょう。
<金銭価値のあるもの>
- 郵便切手
- 収入印紙
- 新幹線の回数券
<その他消耗品>
- 文房具
- コピー用紙・インク・トナー
- 段ボール・封筒
- ガムテープ
以上のような物品の未使用分について、貯蔵品として扱うことが多いです。
「そんな細かい物品まで、一つ一つ資産として管理する必要があるのか?」という疑問を持った方がおられると思います。
これらの少量多品種な物品をすべて貯蔵品として資産管理するとなると、大変煩雑な確認作業と細かい経理処理・仕訳が大量に生じます。事務手続きの煩雑さを考慮すると非現実的であることは明白です。
実際には、定期的に消費することが見込まれる物品について、一定量をストックしている状況を仮定した簡易的な処理が、会計的にも、税務的にも認められています。(税務的な観点からのルールについては、次の段落で詳しく解説しますので、ここでは省略します。)
また、貯蔵品と似た科目として棚卸資産がありますが、この勘定科目は事業に係る商品・原材料などが対象ですので、貯蔵品と混同しないように注意が必要です。
棚卸資産は事業に直接関係する物品、貯蔵品は事業に直接関係しない物品と覚えておきましょう。(ただし、貸借対照表の表記上、貯蔵品も棚卸資産の項目内に記載することが多いです。)次は、貯蔵品の取扱に関して、税務的な側面からもっと詳しく見ていきましょう。
税務上の基本的な留意点
貯蔵品として扱われるような各種消耗品について、一定の基準を満たす物品以外は費用として計上することは、税務上の観点から禁じられています。
税務上の費用計上は、課税所得を少なくする効果があるため、悪意をもって費用を多く計上するなど脱税行為につながるためです。
逆に言えば、一旦資産計上した消耗品について、当期に使用した部分について適切に費用計上を行うことは、節税メリットを享受することにつながりますので、その金額によっては軽視できません。
期中に購入した消耗品を費用計上した場合であっても、当該期中に使い切ることができなかった部分については、期末の振替処理により、貯蔵品として資産計上することが求められているのです。
消耗品は原則的には発生基準、すなわち使用した時点で費用計上すべきですが、鉛筆一本単位で使用時点を管理するのは現実的ではありません。そうした実態が考慮され、継続的に購入するものは購入時に費用計上することが認められています。
具体的には、以下のような通達が税務当局より出されています。
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。
法人税法基本通達2-2-15(消耗品費等)
要するに、法人税法上、購入時損金処理が認められるのは、「1.経常的に消費するもの」かつ、「2.毎年おおむね一定量を取得するもの」に限ります。また、継続的に同様の処理を行うことも要件となっています。
税務上、特に留意すべき点:収入印紙や商品券の取扱
特に税務上の注意が必要なものとして、収入印紙や贈答用の商品券が挙げられます。
収入印紙は、消費税上、「不課税仕入」として処理します。費用計上する際は、消費税を認識しない「租税公課」で計上する方法が一般的です。
また、贈答用の商品券なども、消費税上は課税仕入とすることは適切ではありません。収入印紙と同様、購入時に消費税を認識しない点に注意しましょう。費用計上する際は、交際費(不課税)で計上する方法が一般的です。
ケーススタディ:仕訳処理の事例
例)
会社案内のパンフレット10,000部を、800,000円で作製・印刷しました。
この場合の適切な仕訳処理を見ていきましょう。
回答)
会社案内のパンフレットは、取引先やお客様に配布することを想定したものですので、実際に使用(=配布)は事後に段階的に発生します。
原則として、発生基準に基づく処理が求められますので、以下のいずれかの方法により処理するのが適当と考えられます。
- A.購入時に貯蔵品として計上し、使用に応じて費用科目に振り替える
- B.購入時に費用科目を計上し、期末日に未使用分を貯蔵品勘定に振り替える
どちらが正しいということではありませんので、業務実態に照らして、合理的だと思われる方法を選択してください。ただし、一度基準を決めたら、簡単には基準変更を行うべきではありませんので、慎重な判断が必要です。
ちなみに、「A.」の方法で処理する場合の仕訳は以下の通りです。
(借方) | 金額 | (貸方) | 金額 | |
---|---|---|---|---|
貯蔵品 | 800,000 | 現金・預金 | 800,000 |
なお、購入時に費用科目を計上し、期末日に未使用分があっても貯蔵品勘定に振り替えない方法も選択可能です。ただし、当該支出に重要性が無い場合にのみ認められる処理である点に注意が必要です。
まとめ
ここまで、貯蔵品について、どのような物品が対象になるのか、また税務上留意すべき点は何かなど見てきましたが、いかがだったでしょうか。
その処理の方法については、経理上も税務上も、一定の裁量の余地が与えられていることがおわかりいただけたかと思います。会社実態に即した合理的な処理方法、運用方法を選択・実行することによって、最大限の費用対効果を得たいものです。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。