棚卸資産の評価方法をマスター! その1:原価法

原価法とは

原価法とは、棚卸資産の期末評価の方法です。在庫として残された棚卸資産の「取得原価」を算定し、その取得原価に基づいて棚卸資産の期末評価を行う方法です。

それでは、なぜ取得原価をわざわざ算定する必要があるのでしょうか。在庫商品の仕入価格は、同じ商品でも仕入れた量や時期、仕入先などによって仕入単価が異なります。頻繁に取引を行う商品について、一つひとつその仕入価格と売上高を対応させることは大変でしょう。
そこで、原価法により期末の在庫として保有する棚卸資産の取得原価を算定することで棚卸資産を評価し、その差額を使用して売上原価を算定することが認められているのです。

そもそも棚卸資産とは

棚卸資産とは商品や製品、半製品、原材料、仕掛品、事務用消耗品等の資産です。販売用の商品や製品、未完成の製品、製造のために仕入れた未投入の材料など、将来的に販売を予定しているもののほか、販売用ではない消耗品で貯蔵中のものも該当します。
消耗品について税法上では、毎年おおむね一定数量を取得する消耗品で経常的に消耗する場合に限り、継続適用を条件に取得した事業年度の損金に算入することが認められています。

(参考)国税庁 販売費及び一般管理費等(消耗品費等)2-2-15

棚卸資産の期末評価とは

棚卸資産の期末評価とは、決算時に在庫として保有する棚卸資産の帳簿価額を算定すること。棚卸資産の期末評価を行うことによって、その事業年度の売上原価が算定されます。

<売上原価の計算式>
【期首棚卸資産(前期の期末棚卸資産)】+【当期仕入高】-【期末棚卸資産】

期末棚卸資産の評価額が大きいほど売上原価は減少し、小さいほど売上原価は上がります。このことから、棚卸資産の期末評価を会社の都合のいいように行われると、恣意的に利益を増減させることができてしまうのです。
こうした不正な決算書の作成や税務申告が行われないよう、棚卸資産の期末評価については税務・会計の両面で、一定の評価方法が決められています。

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原価法による棚卸資産の期末評価方法

原価法とは税法上の棚卸資産の評価方法であり、棚卸資産の取得原価をもとに期末の棚卸資産を評価する方法です。取得原価の計算方法については、会計上の5つの方法に合わせて以下6つの方法が認められています。

  • 個別法
  • 取得原価を個別の仕入価格で管理する方法です。原価法としてもっとも正確な評価方法といえますが、個別管理が可能な棚卸資産にしか適用できません。

  • 先入先出法
  • 先に仕入れたものから先に払い出したと仮定して、取得原価を算定する方法です。期末の棚卸資産の評価額には、新しく仕入れた棚卸資産が反映されます。

  • 移動平均法
  • 仕入価格の平均値を計算し、1単位あたりの取得原価を計算する方法です。仕入れのたびに平均値を算出する点が特徴といえるでしょう。

  • 総平均法
  • 移動平均法と同様に、仕入価格の平均値から1単位あたりの取得原価を計算する方法です。事業年度全体の仕入価格の総額で平均値を算出することに特徴があります。

  • 売価還元法
  • 売価を使って算定した「原価率」を使い、棚卸資産の評価額を計算する方法です。多種な棚卸資産を扱う業種に向いています。

  • 最終仕入原価法
  • 事業年度の最後の仕入価格を棚卸資産の取得原価とする、簡便的な方法です。会計上では他の5つの評価方法と別に「期間損益の計算上著しい弊害がない場合」に認められる方法とされていますが、税法上の法定評価方法であり実務では多用されています。

原価法以外の評価方法

税法上の棚卸資産の評価方法には、原価法のほかに低価法があります。原価法は棚卸資産の取得原価から評価額を計算する方法ですが、低価法は原価法による評価額とその棚卸資産の期末時価とを比較して、低い方を評価額とする方法です。したがって、原価法よりも期末棚卸評価額が低くなる場合があります。これをまとめると、次のようになります。

原価法【評価方法】
・個別法
・先入先出法
・移動平均法
・総平均法
・売価還元法
・最終仕入原価法
低価法原価法での評価額と期末時価のいずれか低い方

棚卸資産の法定評価方法

税法上の棚卸資産の評価方法は、法人の設立時に選択したり途中で変更したりすることが可能です。また、業種や棚卸資産の種類に応じて異なる評価方法を選択することもできます。
法定の評価方法は最終仕入原価法による原価法であるため、何も選択しなかった場合、期末の評価方法は最終仕入原価法による原価法になります。

棚卸資産の評価方法を選択したいとき・変更したいとき

棚卸資産の評価方法を選択したいとき、あるいは変更したいときは税務署に書類の提出を行います。

選択・変更する状況提出書類提出期限
法人の新設時棚卸資産の評価方法の届出書設立第1期の確定申告書の提出期限まで
(中間申告を行うときはその期限まで)
設立後に新事業を開始した時棚卸資産の評価方法の届出書新事業を開始した事業年度の提出期限まで
(中間申告を行うときはその期限まで)
選定した棚卸資産の評価方法を変更したい時棚卸資産の評価方法の変更承認申請書変更しようとする事業年度開始の日の前日まで

棚卸資産の評価方法は継続適用が条件

棚卸資産の評価方法の変更を無制限に認めると、不正な利益操作に繋がってしまいます。そこで法人税施行令では、現在の評価方法を採用してから「相当期間」を経過していないときの変更承認申請について、税務署はこれを却下できるものとしているのです。
この「相当の期間」については、法人税基本通達により「3年間」とされています。なお、3年経過していたとしても、その変更に合理的な理由が認められない場合は同じく却下されることがあるでしょう。

(参考)国税庁HP 法人税基本通達5-2-13

まとめ

原価法とは取得原価によって棚卸資産の期末評価を行うための方法で、その取得原価の計算には6つの方法があります。どの方法が自社の棚卸資産に向いているか、それぞれの特徴を把握して比較することが大切です。

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● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。