棚卸資産の評価方法をマスター! その4:先入先出法

先入先出法とは

先入先出法は原価法による棚卸資産の期末評価方法の1つです。 特徴として、先に仕入れた棚卸資産から順次払い出したと仮定して取得原価を算定する点があります。
経理プラス:棚卸資産の評価方法をマスター! その1:原価法

棚卸資産の仕入単価は、仕入先や仕入時期、仕入量などによって変わります。例えば4月に単価100円、5月に単価80円で仕入れたA商品を6月に売り上げた際、先入先出法では先に仕入れた4月のA商品(単価100円)から払い出したものとして在庫の価格を管理するのです。もちろん4月より前に仕入れたA商品があれば、そこから払い出したものとします。
ただし、現実の払い出しがそのとおりに行われることまでを求めるものではありません。先入先出法では「棚卸資産の会計基準」に「最も新しく取得されたものからなるとみなして」とあるように、先に仕入れたものから払い出したという仮定のもとで取得原価を計算すれば問題ありません。

先入先出法という言葉は棚卸資産の評価方法としてだけでなく、「FIFO(ファイフォ:ファースト・イン・ファースト・アウト)」として卸売店や販売店、特に食品を扱う事業の在庫管理の方法として広く認識されています。また、食品ほど期限に気を遣う必要のない商品であったとしても、通常は1度開けたものから払い出すはずです。

適当なダンボールを次々と開けて商品を持ち出していたら、発注の際の在庫チェックに恐ろしい時間がかかることは想像に難くないでしょう。こうした実態と照らし合わせても、期末の在庫として残された棚卸資産には、新しく取得されたものが多いことが一般的と考えられます。したがって、棚卸資産の評価方法としての先入先出法は、現実の商品の受払いの流れとも概ね一致するものと言えるでしょう。

先入先出法を使った棚卸資産の評価方法

それでは、先入先出法による評価方法の計算例を見ていきます。

<例:X社のY商品に関する取引(3月決算法人)>

日付摘要個数残数
4月1日前期繰越 20個(@50円)
6月1日仕入50個 @45円20個(@50円)
50個(@45円)
7月1日売上10個
(10個 @50円)
10個(@50円)
50個(@45円)
8月1日売上40個
(10個 @50円)
(30個 @45円)
20個(@45円)
9月1日仕入30個 @60円20個(@45円)
30個(@60円)
3月31日翌期繰越 20個(@45円)
30個(@60円)

期末棚卸評価額:20個×@45円+30個×@60円=2,700円

先入先出法には、仕入と売上の両方にポイントがあります。まず仕入では、仕入単価の異なる新しい棚卸資産を仕入れたとき、現在の在庫とは別に仕入単価を管理しなければなりません。6月1日に単価45円のY商品を50個仕入れていますが、残数は前記から繰り越された棚卸資産20個(単価50円)と区別して記録します。

続いて売上では、7月1日の10個の払い出しが行われた際に、前記より繰り越された棚卸資産(=最も古い在庫)から払い出します。さらに8月1日の売上でも前記より繰越された棚卸資産から優先的に払い出し、不足分は次に古い6月1日に仕入れた棚卸資産から払い出すのです。期末棚卸評価額は在庫として残った50個の棚卸資産を、その仕入単価ごとに計算した額が評価額になります。

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先入先出法のメリット・デメリット

メリット

  • 実際の在庫に近い評価になりやすい

  • 先入先出法による棚卸資産の評価方法は現実の在庫管理の実態に近く、実際の取得原価に近い評価額になりやすいと言えます。

  • すべての棚卸資産が仕入価格に基づいて評価される

  • 新しく取得した棚卸資産の仕入価格で期末評価を行う方法には、期末に最も近い取得原価によってすべての棚卸資産を取得したとみなす「最終仕入原価法」があります。しかし先入先出法では、すべての棚卸資産が現実の仕入価格によって評価されている点から、取得原価に基づく評価としてより正確であると言えるでしょう。

デメリット

  • 価格変動に対応できない

  • 先入先出法は古い商品から払い出すため、物価の上昇や下降が起こっても売上と原価を即座に対応させることができません。例えば40円で仕入れていた品を60円(販売利益20円)で販売していたところ、物価が上昇して100円で売れるようになったとしましょう。そうすると、この40円の在庫がなくなるまでの販売利益は1個あたり60円(100円-40円)となり、一時的に税負担が重くなります。古い在庫をなるべく抱えないようにすると、物価変動から受ける影響は少ないでしょう。

  • 期末に近い仕入価格が影響する

  • 先入先出法は、どうしても期末に近い仕入価格・仕入量から受ける影響が大きくなります。例えば先ほどの例で、9月1日の最後の仕入価格が単価60円から単価100円に高騰した場合、期末棚卸評価額は2,700円から3,900円に上昇。単価に換算すれば、54円から78円に上昇しています。
    価格高騰時に積極的に仕入れを行うことが現実的に起こりにくいため、問題になるケースは稀かもしれません。しかし先入先出法の性格上、こうした影響があることは把握しておくことが必要です。

後入先出法とは

後入先出法とは、棚卸資産を後から仕入れたものから払い出すという棚卸資産の評価方法です。先入先出法とは逆に新しく仕入れたものから払い出され、古いものが棚卸資産の期末評価の対象になります。新しく仕入れた棚卸資産の仕入価格は売上時の価格水準にもっとも近いと考えられるため、売上と原価が対応しやすい点が特徴です。このことから後入先出法は、会計・税務上で認められていた棚卸資産の評価方法でした。

しかし後入後出法では、貸借対照表に計上される棚卸資産の価額が過去の取得原価の繰り越しとなってしまいます。また、これによって販売時には過年度の損益が計上されてしまい、さらに国際会計基準では認められていないことなどから、会計上の評価方法から削除されました。会計基準のこうした変化から税法上も平成22年に廃止され、現在は選択することができません。

まとめ

先入先出法は実際の棚卸資産の管理の流れとも合致しやすく、受払の管理さえ行えばそれほど難しい方法ではありません。ただし、古い在庫を抱えた状態で物価の変動が起こると、収益と費用が対応しないという不合理も起こります。先入先出法の性質を把握し、他の評価方法と比較した上で選択しましょう。

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● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。