棚卸資産の評価方法をマスター! その7:売価還元法

棚卸資産の評価方法をマスター! その7:売価還元法

売価還元法とは

売価還元法は原価法による棚卸資産の評価方法の1つで、会計基準、税法ともに認められた評価方法です。売価還元法には「売価」を使った評価方法であること、そして商品グループごとに棚卸資産の期末評価を行えるという2つの特徴があります。

経理プラス:棚卸資産の評価方法をマスター! その1:原価法

 

売価還元法による売価を使った評価方法とは

他の評価方法は、棚卸資産の仕入価格を使って取得原価を算定します。しかし売価還元法では、商品の売価を使用して棚卸資産の評価を行います。簡単に言えば、期末の棚卸資産の「売価」に「原価率」をかけて、期末の棚卸資産の評価を行うという方法です。なお、詳しい計算方法は後述します。

 

売価還元法による商品のグループ化とは

取得原価を棚卸資産の仕入価格から算出するためには、棚卸資産の品目ごとの受払を管理しなければなりません。ところが、取扱品種の多い小売業や卸売業などでは、このような管理は非常に困難です。
例えばスーパーでは食材から加工食品、お菓子、日用品、衣類など様々な商品が毎日大量に販売され、在庫を切らさないよう絶えず発注が行われています。このような業種で、棚卸資産を品目ごとに管理するのは大変です。また、似たような品目を1つひとつ区別することに、会計の重要性があるとは言えません。

売価還元法では、こうした多種多様な商品を扱う事業の棚卸資産の評価について似た商品を1つのグループにし、その商品グループごとに取得原価を算定することが可能です。どのような商品をグループ化するかについては、会計・税法それぞれ次のような基準があります。

 

値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法
売価還元法は、取扱品種の極めて多い小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用される。

(引用)「棚卸資産の会計基準」売価還元法について

 

売価還元法により評価額を計算する場合には、その種類の著しく異なるものを除き、通常の差益の率がおおむね同じ棚卸資産はこれをその計算上の一区分とすることができるものとする

(引用)法人税基本通達5-2-5

会計基準にある「値入率」とは、仕入原価に対して加算された利益(=販売価格に含まれる利益)が占める割合のこと。値入率が類似しているというのは、会社が同じくらいの利益を上乗せして販売が見込める商品と判断したものです。
税法の基準も“通常の差益の率がおおむね同じ棚卸資産”とし、同様の趣旨でグループ化することが認められています。グループ化することによって、多種多様な商品を扱う業種であっても、少ない区別で棚卸資産の期末評価を行うことが可能です。
売価還元法では、まず商品グループごとの「原価率」を算定し、その原価率を期末の棚卸資産の「売価」にかけて評価します。

 

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売価還元法の評価方法

手順1:売価還元法による原価率を算定する

原価率とは販売価額に原価が占める割合。原価率を1つの商品の販売で考えると「商品の仕入原価/商品の販売価格」で計算できるところですが、売価還元法で使用する原価率とは1事業年度を通じた原価率でなければならないため、やや複雑な計算が必要です。売価還元法における原価率は、次の分数で計算します。


分子
期首商品原価
原価ベース
+当期商品仕入原価




分母
期首商品売価



売価ベース
+当期商品仕入原価
+原始値入額
+値上額
▲値上取消額
▲値下額
+値下取消額
    • 分子について

分子は棚卸資産の「原価」をベースにしています。「期首商品原価」と「当期商品仕入原価」の合計、つまり当期に販売可能なすべての棚卸資産の原価合計。期首商品原価は、前期末の棚卸資産の評価額です。

    • 分母について

分母は、分子を「売価」ベースにしたものになります。つまり、当期に販売可能なすべての棚卸資産の売価合計です。「当期商品仕入原価」以下は、仕入原価に利益を加えるという方法によって原価から売価を計算しています。一見すると複雑な計算に思えますが、1つひとつの用語の意味を確認すれば計算自体は難しくありません。

 
まず「原始値入額」とは、仕入原価に最初に上乗せした利益のことです。つまり、最初に設定した販売価格の利益部分となります。そこから、値上げと値下げを行った場合はその金額を加減。値上げと値下げの取り消しがあった場合は、その額から取消額を控除します。
値上げは加算(+)と値下げは減算(▲)ですので、取消額はその反対の符号で控除されます。これについて、実際の数値で計算手順を確認しましょう。

<X社のA商品グループのデータ>

 原価売価
期首商品100150
当期仕入高500
原始値入額310
値上額80
値下取消額▲30
値下額▲20
値下取消額10
当期売上高800

  • 原価率
=(100円+500円)/(150円+500円+310円+80円-30円-20円+10円)
=600円/1,000円
=0.6

 

手順2:売価還元法による原価率を期末棚卸資産の売価にかける

続いて、期末棚卸資産の売価に原価率をかけて棚卸資産の期末評価額を計算します。期末棚卸資産の売価とは、グループ商品の在庫の売価です。
当期に販売可能な商品の売価合計(手順1の分母)から、当期の売上高を差し引くことで計算することができます。先ほどの例で計算してみましょう。

<計算式>

期末棚卸資産(売価)=(計算式)手順1の分母-当期売上高
200円=1,000円-800円

 

棚卸資産の期末評価額=期末棚卸資産(売価)×原価率
120円=200円×0.6

 

手順3:棚卸減耗費を計算する

棚卸減耗費とは、期中に発生した商品の紛失や破損等により、実際の棚卸資産が帳簿価額より減っているときに計上する損失のこと。売価還元法では、棚卸減耗損も売価ベースで計算します。
計算方法は、期末実地棚卸資産の売価に原価率をかけて期末実地棚卸資産の原価を算定し、手順2との差額を棚卸減耗損として認識します。先ほどの例で、期末実地棚卸高の売価を180円として計算してみましょう。

<計算式>

期末実地棚卸資産(原価)=期末実地棚卸資産(売価)×原価率
108円=180円×0.6

 

棚卸減耗費=手順2の期末棚卸資産(原価)-期末実地棚卸資産(原価)
12円=120円-108円

 

売価還元法のメリットとデメリット

メリット

  • 販売品目が多い事業に適している

売価還元法では、商品グループごとに原価率を使って棚卸資産の期末評価を行うことができます。そのため、個別の品目ごとに細かい仕入価格を管理する必要はありません。多くの品目を販売する業者では不可欠な評価方法と言えるでしょう。

 

デメリット

  • 同一グループの判断が難しい

同一のグループ化できる棚卸資産は、値入率や回転率が類似するといった基準によって行われます。しかし実務では、どこからどこまでを類似とするかの判断が難しいでしょう。

 

まとめ

売価還元法は、多くの品目を販売する業種では欠かせない評価方法です。しかし実務では、どの商品をグループ化するかが重要になります。グループ化する商品に迷ったときは、専門家に相談しましょう。

 

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● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。