棚卸資産の評価方法をマスター! その5:総平均法

棚卸資産の評価方法をマスター! その5:総平均法

総平均法とは

総平均法とは原価法による棚卸資産の期末評価方法の1つで、平均原価法とよばれる評価方法に該当します。

経理プラス:棚卸資産の評価方法をマスター! その1:原価法

総平均法では、事業年度中に仕入れた棚卸資産の仕入価格の総額から1単位あたりの平均原価を計算し、その平均原価に期末の棚卸資産の残数をかけて評価を行います。

<総平均法の計算式>

期末棚卸評価額=平均原価×期末在庫数

総平均法を使った棚卸資産の評価方法

総平均法の計算方法を、具体例で見ていきましょう。

<例1>X社(3月決算法人)の商品Aの受払状況

  • 4/1  前期繰越 80個(@40円)
  • 6/15  仕入   20個(@30円)
  • 7/1  売上   50個
  • 9/15  仕入   60個(@20円)

【総平均法】

日付摘要受払個数(単価)残数(平均単価)
4月1日前期繰越80個(@40円)80個
6月15日仕入20個(@30円)100個
7月1日売上50個50個
9月15日仕入60個(@20円)110個
3月31日翌期繰越 110個(@31.25円)

平均原価:(80個×@40円+20個×@30円+60個×@20円)÷(80個+20個+60個)=31.25円
期末棚卸評価額:@31.25×110個=3,437.5円(→3,437円)

総平均法では、前記繰越分を含めた1事業年度の仕入価格の総額をその個数で割って、1単位あたりの平均原価を求めます。

総平均法と移動平均法の違い

総平均法を含む平均原価法には、総平均法のほかに移動平均法という評価方法があります。移動平均法もまた、仕入価格から1単位あたりの平均原価を計算して期末の棚卸資産の評価を行う評価方法です。しかし総平均法と移動平均法では、以下の点に違いがあります。

  • 平均原価を計算するタイミング
  • 売上げ時の対応

総平均法は、1事業年度の仕入価格の総額から1単位あたりの平均原価を計算します。そのため、平均原価を計算するのは最後の仕入れが行われた際になるのです。売上げ時に、特に対応は必要ありません。
これに対して移動平均法は、仕入れのたびに1単位あたりの平均原価を計算します。そして売上げ時には、その時点での平均原価で払い出すという処理が必要です。

この売上げ時の処理の違いによって、総平均法と移動平均法の平均原価には差が生じます。逆に期中に売上げがまったくなければ、2つの平均原価は同じです。

さきほどと同じ具体例を、移動平均法でも計算してみましょう。

<例2>X社(3月決算法人)の商品Aの受払状況

  • 4/1  前期繰越 80個(@40円)
  • 6/15  仕入 20個(@30円)
  • 7/1  売上 50個
  • 9/15  仕入 60個(@20円)

【移動平均法】

日付摘要受払個数(単価)残数(平均単価)
4月1日前期繰越80個(@40円)80個(@40円)
6月15日仕入20個(@30円)100個(@38円)
7月1日売上50個(@38円)50個(@38円)
9月15日仕入60個(@20円)110個(@28.18円)

<6月15日の平均原価>
(80個×@40円+20個×@30円)÷100個=38円
<9月15日の平均原価>
(50個×@38円+60個×@20円)÷110個=28.1818…

総平均法との違いは仕入れ時にそれぞれの平均原価を計算することと、売上げ時はその時点での平均原価で払い出すことです。

総平均法のメリット・デメリット

メリット

価格変動の影響を受けにくい

総平均法では、期中の全ての仕入価格が取得原価の算定に反映されます。このことから、一時的な仕入価格の変動が起きたとしても、棚卸資産の評価額への影響は少ないと言えるでしょう。

計算が少なく簡便的

総平均法と同様に、平均原価法に分類される評価方法に、移動平均法があります。
総平均法は、移動平均法と異なり期中の払い出し単価を計算する必要がありません。したがって、計算の回数が少なく簡便的な評価方法であると言えます。

デメリット

特定の時点での平均原価を把握できない

総平均法では、特定の時点における平均原価の算定を正確に行うことができません。これに対し、移動平均法では仕入れのたびに平均原価を計算するため、売上げ時点での平均原価も正確に把握できます。

まとめ

総平均法は他の評価方法に比べて市場価格の変動の影響を受けにくい上、計算も簡便的です。移動平均法と異なり、特定の時点での平均原価を把握することはできません。しかし期中に適宜計算しておくことで、ある程度の予測を立てられます。総平均法を棚卸資産の評価方法として導入する場合は、他の評価方法のメリット・デメリットと比較して行いましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 石田 夏

アバター画像

理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。