経理責任者であれば知っておきたい消費税の節税テクニック5つ
2014年4月から消費税が8%へと増税され、2019年10月にはさらに10%に増税されました。
かつては税率の低さから法人税などの国税よりも目立つことのなかった消費税ですが、今後は増税により会社の財務面の負担が増えていくことになるのは明白です。
今後は、今以上に経理責任者として少しでも消費税の納税を抑えるテクニックを知っておくことが重要になるのは間違いありません。
今回は、消費税の節税テクニックの中でも厳選した5つの手法をご紹介します。
課税売上割合に準ずる割合を利用しよう
たまたま土地を譲渡した場合など非課税売上があったときには「課税売上割合をもとに計算した仕入控除税額がその事業者の事業の実態を反映していない」など、課税売上割合により仕入控除税額を計算するよりも、課税売上割合に準ずる割合によって計算する方が合理的な場合があります。
そのようなときには課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合によって仕入控除税額を計算することができます。
どうやって割合を設定するの?
課税売上割合に準ずる割合は、使用人の数又は従事日数の割合、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合といったものなど、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等の性質に応じた合理的なもので設定しなければなりません。
なお、課税売上に準ずる割合を適用する場合には、その事業者が行う事業の全部について同一の割合を適用する必要はなく、事業の種類の異なるごと、事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごと、事業に係る事業場の単位ごとのように区分して申請することができます。
適用したい場合にはどうすればいいの?
課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、納税地を所轄する税務署に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出して、適用しようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受けておく必要があります。
外注や派遣を上手に利用しよう
給与などの支払は課税仕入れとなりませんが、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。
そのため、加工賃や人材派遣料、警備や清掃などを外部に委託している場合の委託料などは課税仕入れとなり仕入税額控除の対象となります。
なお、令和5年10月からはインボイス制度がはじまるため、適格請求書を交付してもらえなければ仕入税額控除から除かれます。
適格請求書の発行事業者は、課税事業者となりますから売上1,000万円以下の免税事業者と取引をしている場合は、注意が必要です。
経理プラス:インボイス制度とは?課税事業者が2023年10月から対応すべきこと
給与と外注の違いは?
給与か外注のどちらに該当するかは、税務署側が客観的事実に基づいて判断することとなるので、勝手に決めることはできません。
しかしながら、大きく分けて下記5点に注目してみることで、給与認定されるリスクを軽減できますので確認してみてください。
- 契約は雇用契約ではなく請負契約となっているか
- • 支払時は社会保険や所得税、住民税などは控除されていないか(ただし、所得税法第204条第1項に該当する報酬・料金については、源泉徴収が必要です)
- 事業を行う上で指揮管理を受けていないようになっているか
- 役務提供に係る材料や用具を供与していないかどうか
- 請求は役務提供者が自身で行っているかどうか
このように、給与受給者と明確に分けることで、消費税の仕入税額控除の対象とすることができます。
収入印紙は金券ショップで買おう
収入印紙の購入は、郵便局やコンビニ、または法務局の売りさばき所で行っている方が多いかと思います。もちろん、このような場所で購入した場合は非課税扱いとなります。
ところが消費税法では、郵便切手類や印紙を国、簡易郵便局、郵便切手類販売所、印紙売りさばき所において譲渡した場合と証紙を地方公共団体、証紙売りさばき人が譲渡した場合のみ非課税取引とすることとしているため、金券ショップでの購入は課税仕入れで処理することが可能となります
収入印紙を金券ショップで買うだけでどのくらい節税になるの?
月10万円ほど購入するような会社であれば、年間で約9万円が節税となります。収入印紙を購入する機会が多い不動産会社は積極的に利用する価値があります。
購入時の注意点
1.種類が豊富にない場合がある
金券ショップでは常にすべての金種を取り揃えているわけではないので、必要なときに必要なものがない場合があります。
2.在庫は資産計上が必要になる場合がある
原則として期末に在庫として残っている場合には貯蔵品勘定などの資産として計上する必要があるため、期末に一括で購入しても、節税効果はなくなります。
経理プラス:収入印紙はどこで買える?印紙税額一覧と貼り方を解説
出張旅費日当を活用しよう
国内の出張又は転勤のために、役員又は使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。
ただし、海外への出張又は転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。
この特典を受けるためには、社内に旅費規定を整備する必要があります。
旅費規定の作成方法については、下記に詳しく書かれておりますのでぜひ一読ください。
経理プラス:節税効果あり?!出張旅費規程のメリットと、規定作成の3つのポイント
不動産の課税区分を詳細に判断しよう
不動産業に特化でもしていない限り、不動産取引は出現頻度が多くありません。また、関係する法令が複雑で取引金額が大きいために処理を誤った際の税額に対するインパクトが大きいため、消費税の取り扱いについては注意が必要です。
駐車場として更地を借りた場合は非課税扱いとなり仕入税額控除の対象にはなりません。一方、アスファルトで舗装された駐車場を借りた場合は課税仕入れとして処理することができるなど特殊な事項も多いため、経理担当者は影響の大きい不動産取引に関する消費税の取り扱いを確認しておく必要があります。
不動産に関する消費税の判断については下の記事にて詳しく書かれておりますので、こちらもご一読ください。
経理プラス:これだけ読めばOK!不動産取引にかかる消費税
消費税の節税は経理責任者の腕の見せ所です
今回ご紹介した5つのテクニックは、経理責任者が知っているか否かで消費税の納税額を大きく変動させることになりますので、経営に大きな影響があります。
消費税は一つひとつの取引の積み重なりによって構成されますので、売上規模が大きくなれば必然的に納税額が大きくなる傾向にあります。節税しにくいといわれる消費税ですが、自社の処理に隙はないか今一度ご確認してみるのはいかがでしょうか
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。