売上高と売上原価率とは?計算方法や売上原価率が高い場合の対策

売上高と売上原価率とは?計算方法や売上原価率が高い場合の対策

企業の経営分析をする際に役立つ指標として、売上原価率というものがあります。これは、売上高に対して売上原価率の割合がどれくらいかというのを示した指標で、企業の収益性を示す指標の一つです。

売上高は増やせば増やしだだけ良いと思われがちですが、そんなこともありません。いくら売上高を増やしても、売上原価率が高ければ稼げる利益は少なくなります。売上高を増やすことはもちろんですが、売上原価率を下げて利益を稼ぎ出すことも重要な要素となります。本記事では売上高や売上原価率について、それぞれの内容や求め方、どうやって改善していくかなどご紹介していきます。

なお、売上原価の詳細については以下の記事をご参照ください。

経理プラス:売上原価とは?4つの仕訳方法をマスターしよう

売上高・売上原価の意味と売上原価率の求め方

売上原価率の求め方を理解するためには売上高と売上原価の意味、また、その関係性を理解するのが良いでしょう。売上原価率は営業利益を求める基礎にもなるなど、さまざまな場面で役立ちます。ここでは売上高や売上原価を紹介したのちに、売上原価率の求め方についてもご紹介していきます。

売上高と売上原価の意味

まず売上高とは、一定期間における商品の販売やサービスの提供によって得られた収益の合計です。一般的に、企業の事業年度1年分の収益を合計したものが売上高となります。なお、企業にはさまざまな活動がありますが、その中でも本業から得られた収益を合計したものが売上高です。

一方、売上原価は商品の仕入、あるいは製造にかかった直接的な費用のことを言います。売上原価の計算方法は、以下の通りとなっています。

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高―期末商品棚卸高

上記の式は仕入れた商品のうち、残っているものを除くことで販売された分の商品の費用を計算しています。

売上原価率の意味と求め方

売上原価率は、売上高に対して上述した売上原価の割合のことを指します。企業の収益性を図る目安となるもので、割合が低ければ低いほど収益性は高くなります。一方、割合が高くなれば費用の割合が大きくなるということなので、収益性は低いと見られます。売上原価率の計算方法は以下の通りです。

売上原価率=売上原価÷売上高×100

上記の式の通り、売上原価の割合を見るため、高い方が悪い指標となります。

【業種別】売上原価率の目安

次に、売上原価率の目安について見ていきましょう。企業の属する業界で比較すると、より正確な目安を見極めることができます。企業同士を比較した場合、例えば製造業と小売業では収益構造がまったく異なります。業種が異なると比率が全然違う結果となるので、正しい比較となりません。そのため、比較する際は企業の属する業界を意識し、また、同じような商品や製品を取り扱っている会社と比較することが重要です。ここでは売上原価率の目安として、経済産業省の「2021年経済産業省企業活動基本調査確報(2020年度実績)」をもとに算出していきます。

全産業の平均売上原価率は81.06%となっています。これは売上原価の592兆2,903億8,400万円と、売上高の730兆4,726億7,200万円をもとに計算されています。ただし、先述した通り業種や企業、取り扱っている製品・商品などにより、売上原価が販管費などに含まれる場合もあります。業種によって収益構造が異なることから、あくまで参考値と考えてください。

参考に、「2021年経済産業省企業活動基本調査確報(2020年度実績)」に掲載されている業種ごとの売上原価率をご紹介します。

業種売上原価率売上高売上原価
製造業82.06%279兆4,138億4,400万円229兆2,943億7,800万円
卸売業88.53%220兆3,746億9,800万円195兆879億3,500万円
小売業72.00%94兆4,005億400万円67兆9,677億7,500万円
情報通信業68.48%35兆5,073億7,900万円24兆3,137億9,600万円
飲食サービス業51.25%4兆5,891億円500万円2兆3,517億6,900万円

出典:独立行政法人統計センター 2021年経済産業省企業活動基本調査確報(2020年度実績)」2021年調査(確報消費税込み推計値)

売上原価率が高くなる主な原因と下げるための対策

ここまで、売上原価率の求め方や業種による売上原価率についてご紹介しました。。最後に、企業において売上原価率が高くなる主な原因と、下げるための対策について解説します。

売上原価率が高くなる主な原因

売上原価率が高くなる原因としてあげられるのが、ロス率が高いということです。ロス率とは、売上に対して売上につながらなかった原因の割合を示します。例えば廃棄商品や値引きなどが挙げられ、食品ロスも廃棄商品に含まれます。ロス率は、以下の式から求めることが可能です。

ロス率=ロス高÷売上高×100

上記の式を見て分かる通り、売上に対してどれだけロスがあったかが、ひいては無駄な売上原価につながっていることを示す指標となっています。先述した通り、ロス高の要因は2種類あり、それが廃棄と値引きです。それぞれロス高は、以下の式で求めることができます。

(廃棄)ロス高=販売額(売上単価)×廃棄した個数
(値引き)ロス高=値引き額×値引きした個数

販売価格を値引きして販売した場合には、販売個数が増加したとしても利益に結びつかず、結果として利益は値引きしない時の方が多くなってしまうケースもあります。ロス率が高まることで売上原価率を算定する際の分母が減少し、売上原価率の上昇につながります。

売上原価率を下げるための主な対策

一方、いくつか売上原価率を下げるための対策があります。ここでは主な4つの対策についてご紹介しましょう。

まず、1つ目が在庫管理を見直すことです。企業が事業を営んでいく中で、仕入だけを進め、在庫を正確に管理できていないケースはよくあります。その結果、在庫が過大になってしまい、販売できずに廃棄することになってしまうこともあるでしょう。適正な量となるよう在庫を管理し、廃棄ロスを減らすことで売上原価率を下げることができます。

次に、仕入先を見直すということも、売上原価率を下げる対策の一つです。同じ商品を仕入れるにしても、1個あたりの金額を抑えることができれば、売上原価の金額は下げることができます。また、大量に仕入れたことで値引きなどを行ってもらう際の率も、率が大きい方を選べば売上原価の金額を下げることが可能です。できるだけ安く仕入れができる先を見つけることで、売上原価率を下げることができるでしょう。

また、先述したロス率を改善させることも、売上原価率を下げる対策となります。製造工程など見直すことで無駄な工程を洗い出す、あるいは材料を使いすぎている工程を洗い出すなどして、工程の中でもロス率につながる工程を見つける方法です。ロス率を下げることで、売上原価率を低下させることができます。

最後に、売上原価率を下げる対策として、そもそも原価率の低い商品の製造や仕入、販売に注力するという方法があります。企業はさまざまな商品を販売していますが、その中でも原価率の低い商品もあれば、原価率の高い商品もあります。原価率の低い商品に絞り、商品の種類を抑えることで、売上原価率を抑えることが可能です。

売上原価率の計算方法を理解することで売上原価率の改善につなげていきましょう

売上原価率は、企業の収益性を表す指標の一つです。とにかく売上高を増やせばいいと考えられることもありますが、企業が利益を残すためには売上高を増やすことも当然ながら、売上原価率を下げて獲得できる利益を増やすことも重要です。

売上原価率を下げていくには在庫管理を見直したり、ロス率を下げることなどで改善ができます。売上原価率の構造を理解し、売上原価率を下げることで収益性を上げていきましょう。

売上高と売上原価率に関するQ&A

売上原価率に関連する気になる内容をQ&Aでご紹介していきます。

Q1.売上原価率と売上総利益率の違いは?

売上総利益率は、売上高に対して売上総利益(粗利)が占める割合を示します。一方、売上原価率は売上高における売上原価の割合を示すものです。売上総利益は売上高から売上原価を控除して計算するため、売上総利益率と売上原価率は裏表の関係となっています。

Q2.売上高と営業利益や純利益との違いは?

売上高とそれ以外の利益は、売上原価や販売費及び一般管理費などの費用を控除している点で異なります。売上総利益は売上原価を控除、売上総利益からさらに販売や管理に関連する費用を控除すると営業利益となります。さらに、本業以外で発生する収益と費用を控除すると経常利益、一時的な損益を控除すると税引前当期純利益、税金を控除すると当期純利益となります。費用を控除されることで、それぞれの利益で持つ意味が異なるのです。

Q3.原価率が100%を超えた場合はどうなる?

利益は、売上高から売上原価を控除することで算出されるので売上原価率が100%を超えてしまうと、利益がマイナスとなります。

Q4.売上原価率以外で企業の収益性を図る指標は?

売上原価率以外で企業の収益性を測る指標としては、総資本経常利益率や自己資本当期純利益率などがあります。総資本経常利益率は「経常利益率÷総資本の期首期末の平均×100」で計算され、企業の総資産をいかに有効活用して利益を生み出しているかを示す指標です。

一方、自己資本当期純利益率は「当期純利益÷自己資本(=純資産―新株予約権―少数株主持分など)×100」で計算され、自己資本から生み出された利益の割合を示す指標となっています。

Q5.売上原価の仕訳方法は?

売上原価は期首の在庫に仕入高を足して、期末の在庫を控除することで計算されます。期中の仕入れに関しては仕訳をされているため、期末に以下の仕訳をすることになります。

(仕訳)期首の在庫1,000、期末の在庫1,500の場合

借方金額貸方金額
仕入1,000商品1,000
商品1,500仕入1,500

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 公認会計士 五輝

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公認会計士、税理士、FP2級。これまで監査法人の経験に加え、バリュエーションやデューデリジェンスを中心としたファイナンシャルアドバイザリーの経験があり、さらには事業会社でM&A案件のソーシングからPMIの経験を持つ。現在は事業会社で事業開発業務に取り組み中。