売上原価とは?4つの仕訳方法をマスターしよう

売上原価とは

売上原価とは、売上を生み出すために直接かかった費用のことをいいます。例えば、製造業における材料費や製造者の労務費、小売業であれば商品の販売商品の仕入高などが該当します。

 

なぜ売上原価を算定するのか

売上原価の算定が求められる最大の理由は、損益計算書で表示が義務付けられているためです。

企業は外部に業績を正しく報告しなければならず、そのために損益計算書などの決算書は財務諸表の表示ルールに従わなければなりません。損益計算書の上で売上原価は売上総利益、いわゆる粗利と呼ばれる利益を示すために必要な数字になります。光熱費や事務職員の人件費といった管理コストとは、明確に区別することが求められるのです。

 

売上原価の仕訳は4パターン

売上原価の仕訳には、三分法、売上原価対立法、分記法、総記法の4パターンがあります。直接的に売上原価を計上するパターンと間接的に計上するパターンに別れますが、どの仕訳を使っても正しい売上原価を計上することが可能です。

三分法

原価(仕入)と売価(売上)、在庫(繰越商品)を別の勘定科目で管理するポピュラーな仕訳方法です。決算整理後の仕入勘定が、売上原価の金額を直接表します。期中の原価管理はできませんが、その分仕訳はシンプルでわかりやすいものとなるでしょう。

売上原価対立法(売上原価計上法)

売上原価勘定で、売上原価を直接管理する方法。期中でも売上原価がひと目で確認できるメリットがありますが、売上を計上する都度に売上原価を算定するため、仕訳数が多く計算回数が多いことがデメリットです。

分記法

「商品販売益」という勘定科目を使って、期中から原価管理を行う仕訳です。ただし、売上原価を直接示す勘定科目はないため、残高勘定を用いた計算が必要となります。

総記法

「商品販売益」という勘定科目を使って、期末にまとめて原価管理を行う仕訳です。期中に売上原価を管理できない上、期末に計算した残高でも売上原価を直接示す勘定科目がありません。このことから、売上原価の管理に関しては使い勝手の悪い仕訳方法になります。

 

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計算方法別 売上原価の仕訳

仕入時の仕訳

例)原価@500円の商品を4個(2,000円分)仕入れた

  • 三分法
     借方金額貸方金額
    仕入2,000 現金預金2,000

    三分法では、最終的に仕入れ勘定を整理して売上原価を算定します。
  • 売上原価対立法(売上原価計上法)、分記法、総記法
    借方金額貸方金額
    商品2,000 現金預金2,000

    三分法以外の仕入は、全て商品勘定で管理されます。

 

売上時の仕訳

例)原価@500円の商品を売価@700円で3個(2,100円分)売上げた

  • 三分法
     借方金額貸方金額
    現金預金2,100 売上2,100

    売上時に、売上原価の管理はしません。
  • 売上原価対立法(売上原価計上法)
     借方金額貸方金額
    現金預金2,100 売上2,100
    売上原価1,500 商品1,500

    売上の都度、売上原価を計上します。
  • 分記法
     借方金額貸方金額
    現金預金2,100 商品1,500
    商品販売益600

    売上高を、原価と販売益で分記します。
  • 総記法
     借方金額貸方金額
    現金預金2,100 商品2,100

    商品販売益に分記することなく、商品勘定で売価を記録します。したがって、商品勘定からは原価だけでなく、商品販売益が減額されていることになります。

 

決算時の仕訳

例)決算を迎えた。期首商品棚卸高(前期末の在庫)は300円、期末商品棚卸高は800円である。

  • 三分法
     借方金額貸方金額
    仕入300 繰越商品300※1
    繰越商品800※2 仕入800

    ※1は期首商品棚卸高、※2は期末商品棚卸高です。

    この仕訳により、仕入勘定の残高を「期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高」の値、つまり当期の売上原価に調整することができます。したがって、上記の仕訳を行った決算整理後の仕入勘定の借方残高は売上原価です。今回の売上原価は、「300円+2,000円-800円=1,500円」となります。

  • 売上原価対立法(売上原価計上法)、分記法
    仕訳なし

    売上原価対立法(売上原価計上法)の売上原価は、そのまま売上原価の借方残高となるため、仕訳は不要です。分記法の売上原価は、勘定残高で直接表すものはありません。期末商品棚卸高を求め、「期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高」で計算して売上原価を求めることとなります。

  • 総記法
     借方金額貸方金額
    商品600 商品販売益600
  • 総記法は最終的に分記法の残高に合わせることとなります。したがって、総記法の場合も売上原価を直接表す勘定残高はありません。期末商品棚卸高を求め、「期首商品棚卸高+当期仕入高-期末商品棚卸高」で計算して売上原価を求めることとなります。

    総記法の決算整理仕訳では売上時に商品勘定に商品販売益を含めていることから、その分を商品勘定から排除しています。ただし、数字の計算方法は決算整理前の商品勘定の残高がプラス(借方残高)かマイナス(貸方残高)かで仕訳の計算手順が変わるため、少々ややこしいでしょう。
    プラス(借方残高)の場合、期末棚卸商品高から商品勘定の借方残高との差額が商品販売益になります。これに対してマイナス(貸方残高)の場合は、商品販売益は期末商品棚卸高+貸方残高です。

 

返品・値引き・割戻し時の仕訳

商品の返品、値引き、割戻し時にも、それぞれの仕訳方法で違いが生じます。

  • 三分法
     借方金額貸方金額
    仕入返品・値引き・割戻現金預金×× 仕入××
    売上返品・値引き・割戻売上××現金預金××

    三分法は単純に逆仕訳で構いません。ここにも三分法の利便性が表れます。
  • 売上原価対立法(売上原価計上法)
     借方金額貸方金額
    仕入返品・値引き・割戻現金預金×× 商品××
    売上返品売上××現金預金××
    商品××売上原価××
    売上値引・割戻売上××現金××

    売上原価対立法も、基本は単純な逆仕訳で大丈夫です。ただし、売上値引・割戻については原価部分ではなく利益部分の変動であるため、売上原価を戻す必要はありません。
  • 分記法
  •  借方金額貸方金額
    仕入返品・値引き・割戻現金預金×× 商品××
    売上返品商品××現金預金××
    商品販売益××
    売上値引・割戻商品販売益××現金預金××

    分記法も基本は単純な逆仕訳ですが、売上値引・割戻については利益部分(商品販売益)の変動となり、原価には変更を加えません。
  • 総記法
  •  借方金額貸方金額
    仕入返品・値引き・割戻現金預金×× 商品××
    売上返品・値引き・割戻商品××現金預金××

    総記法は単純に逆仕訳で構いません。

     

    割引時の仕訳

    割引とは、掛け代金の早期決済により代金を一部免除したものです。この場合の免除額は、利息の受け取り・返還と捉えるため、損益計算書の表示場所は売上原価とは別になります。したがって、仕入や売上、商品勘定等を減額せず、4パターンとも下記の仕訳で計上しなければなりません。

     借方金額貸方金額
    仕入割引買掛金×× 現金預金××
    仕入割引××
    売上割引現金預金××売掛金××
    売上割引××

     

    まとめ

    売上原価の仕訳は、前年通り行ってしまえば大きな問題はありません。しかし仕訳の意味を理解すると、期中の売上や仕入勘定の残高から読み取れる内容が濃くなるでしょう。また、普段使わない仕訳方法を知ることにより、現在使っている仕訳に対する理解を深めることにも繋がります。ぜひこの機会に、4パターンの仕訳方法を覚えておきましょう。

     

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    経費精算システム「楽楽精算」

    ● 著者

    石田 夏

    石田 夏

    税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。