年末調整の仕訳と勘定科目 還付あり・追加徴収の2パターンで解説

年末調整とは

年末調整とは給与所得者の確定申告を勤務先が代行し、所得税の精算を行う制度です。具体的には年間の課税支給額から所得税額を計算して、その所得税額とそれまで天引きした源泉所得税額の差額を還付、あるいは追加徴収で調整します。

中には還付金が受け取れる制度として、ボーナスの一部のように感じている人もいることでしょう。しかし実際には、天引き額の過大徴収分が返還されているだけです。そして経理担当者にとっては、年末年始の多忙時期の中で間違いが許されない鬼門の業務となるため、あまり嬉しくない制度になります。

  • 年末調整の対象となる人

    年末調整は、年末に勤務している従業員に対して年末に行うことが原則です。しかし次の場合の従業員については、年の途中でも年末調整を行わなければなりません。
    国税庁では年の途中で年末調整を行う必要がある人を以下のように定めています。

    1. 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人
    2. 死亡によって退職した人
    3. 著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除きます。)
    4. 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
    5. いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除きます。)

    (参考)国税庁HP  No.2665 年末調整の対象となる人

    要するに、「退職後に年末調整を受ける可能性がない人が退職した場合は、最後の職場が年末調整をして下さい」ということを意味しています。したがって、上記に該当しない自己都合の退職者などに対する年の途中の年末調整は必要ありません。

  • 年末調整の対象となる給与はいつからいつまで?

    年末調整の対象となる給与とは、1月1日から12月31日の間に支払いが確定した給与や賞与です。対象となる給与の判定は、年内に支払いが「確定」したかどうかで行います。

    例えば月末締め翌月10日払いの場合、年末調整の対象となる給与は1月末日締め2月10日支給分から12月末日締め1月10日支給分が対象です。1月10日支給分は年内の支給ではありませんが、給与が「確定」した日が12月のため、当年の年末調整の対象となります。

  • 年末調整の期限はいつ?

    年末調整は、サラリーマンの確定申告の代行です。したがって、その結果は職場から税務署と市町村に書類で申告しなければなりません。書類の提出期限は翌年1月31日までになります。

    税務署に提出する書類は「給与所得者の源泉徴収票」という支払調書の一種です。税理士等への報酬などを記載する「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などがあれば、それも一緒に提出します。市町村に提出する書類は「給与支払報告書」という書類で、様式は源泉徴収票とほとんど変わりません。

    ここで注意すべき点は、源泉所得税の納付がある場合です。もし還付が少なく納付するべき源泉所得税が生じた場合、その納付期限は翌10日(納期の特例で1月20日)になります。また、納付税額がなくとも、税務署にその旨を納付期限までに通知しなければなりません。

    納付額の算定は年末調整を終えなければ行えないため、実務上は、この納期限までに年末調整業務を終わらせる必要があります。最後の給与が確定した後、多くの会社では他の全ての業務を後回しにして年末調整に臨むこととなるでしょう。

 

年末調整でなぜ還付金がもらえるのか

年末調整とは、天引きされた源泉所得税額の調整です。なぜ還付金がもらえるかというと、この天引き額が概算であり、個人の事情による控除額が反映されていないためです。
実際の所得税額は、従業員が職場に提出する扶養控除申告書や保険料控除申告書の内容に基づき所得控除が計上されます。したがって、天引き額が過大となる場合が多く、還付金がもらえるケースが多いのです。

 

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年末調整の仕訳と勘定科目を還付あり・なしの2パターンで解説

  • 調整時(還付あり)の仕訳と勘定科目

    年末調整時で還付ありという際の仕訳です。ここでは、Aさんに5,000円の還付金が生じたとしましょう。

    ・Aさんの12月分の給与で精算する場合(振込で返却する場合など)

     借方金額貸方金額
    給与300,000 未払金252,100
    預り金(源泉所得税)5,000預り金(源泉所得税)7,000
    預り金(社会保険料)35,000
    前払保険料(雇用保険)※900
    預り金(住民税)10,000

    ※預り金で処理する場合もあります。

    ・給与は振込にし、還付金を手渡しで行う場合

    この場合は仕訳を分けます。

    ▼Aさんの12月分の給与確定日の仕訳

     借方金額貸方金額
    給与300,000 未払金247,100
    預り金(源泉所得税)7,000
    預り金(社会保険料)35,000
    前払保険料(雇用保険)900
    預り金(住民税)10,000

    ※ここでは、通常の源泉徴収税額のみを預り金とします。

    ▼Aさんに5,000円を還付した日の仕訳

     借方金額貸方金額
    預り金(源泉所得税)5,000 現金預金5,000
  • 調整時(追加徴収)の仕訳と勘定科目

    同じ給与額の設定で、Bさんに追加徴収8,000円が生じたとします。

    ・Bさんの12月分の給与で精算する場合

     借方金額貸方金額
    給与300,000未払金239,100
    預り金(源泉所得税)15,000※
    預り金(社会保険料)35,000
    前払保険料(雇用保険)900
    預り金(住民税)10,000

    ※12月分の預り金(源泉所得税)7,000+追加徴収8,000円=15,000円

    ・給与は振込にし、現金で追加徴収する場合

    ▼Bさんの12月分の給与確定日の仕訳

     借方金額貸方金額
    給与300,000未払金247,100
    預り金(源泉所得税)7,000
    預り金(社会保険料)35,000
    前払保険料(雇用保険)900
    預り金(住民税)10,000

    ▼Bさんから8,000円を追加徴収した日の仕訳

     借方金額貸方金額
    現金預金8,000 預り金(源泉所得税)8,000
  • 年末調整では還付でも納付書を提出する?

    年末調整で還付金が生じても通常通り給与からの源泉所得税は納付しなければならないため、納付書を金融機関に持ち込み普段に納税します。
    ただし、年末調整後の納付書は、いつもと少し書き方が異なります。例えば先程の例では、Aさん(還付あり)からの預り金(源泉所得税)は、12月分の預り金(源泉所得税)7,000円から年末調整還付金5,000円を差し引いた2,000円、Bさんに追加徴収があった場合では15,000円(12月分の預り金(源泉所得税)7,000円+追加徴収8,000円)でした。

    もしこの2つの預り金を翌月10日に納付する場合の納付税額は、Aさんからの預り源泉所得税2,000円とBさんの15,000円を合計し17,000円です。納付書の記載方法は、「給料等」の源泉所得税額欄の12月分の給与に対する「預り金(源泉所得税)」の項目でAさんとBさんを足した14,000円(7,000円+7,000円)を、「年末調整による不足税額」の項目でBさんから追加徴収した8,000円を、「年末調整による超過税額」でAさんに還付した▲5,000円を記載し、合計額を17,000円と記載します。

    それでは、もし先ほどの例でAさんの還付金が25,000円だった場合はどうなるでしょうか。「給与等」の源泉所得税額の項目は、AさんとBさんの給与に対する預り金14,000円のまま、「年末調整による不足額」の項目はBさんから追加徴収した8,000円のままでOKです。ポイントは「年末調整による超過税額」の項目です。ここは▲25,000円にして合計、-3,000円と書きたいところですが、納付書にそうは書きません。

    この場合、「年末調整による超過税額」を25,000円ではなく22,000円と記載し、納付税額を-3,000円ではなく0円に調整します。税務署には、このように0円に調整した納付書をしなければなりません。残りの3,000円は次回納付する源泉所得税額で相殺します。ただし金額が大きいなど、所定の要件を満たせば税務署に還付請求も可能です。0円に調整した場合も、提出期限は納期限と同じなので注意しましょう。

 

まとめ

年末調整の仕訳を、還付あり・追加徴収の2パターンで解説しました。年末調整は、タイトスケジュールで終わらせなければならない業務です。年末が近づく前に、ぜひマスターして下さい。

 

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● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。