年末調整の進め方、注意しなければならないこと

2017年 年末調整の進め方、注意しなければならないこと

年末調整とは何か?実施時期は?

従業員がいて、給与を支払っている場合には年末調整をしなければなりません。
従業員がいると毎月、給与から源泉所得税などを天引きして、支給しているはずです。このときに天引きしている源泉所得税はあくまでその時点での扶養親族の数などをもとにした概算のもので、年間の所得税額はその他にも生命保険料の控除や住宅ローン控除などを適用した上で確定します。この年間の所得税額を確定させる手続きを年末調整といいます。会社が年末調整を行うことにより、従業員は確定申告をする必要がなくなります。
年間の所得税額を確定させる手続きであるため、12月に実施することとなります。

年末調整はどのような流れで行えばよい?

年末調整は通常、次のような流れで行うこととなります。

1. 対象者の把握

年末調整の対象となる者を把握します。通常は、最終の給与支払時に在籍している役員や従業員のすべてが対象となります。年の途中で退職した人などは年末調整の対象とはなりません。逆に、年の途中で入社し、最終の給与支払時に在籍している人は年末調整の対象となります。中途入社の方に前職があれば、前職での給料も合わせて年末調整を行う必要があるため、前職の源泉徴収票を提出してもらう必要があります。

2. 対象者へ書類を配布

扶養控除等異動申告書などの書類を配布します。扶養控除等異動申告書等の様式は税務署から送付されてきます。不足すれば、コピーをしたり、国税庁のホームページでも公表されていますのでそれを印刷して利用してください。

3. 対象者から書類を回収

期限を定めて扶養控除等異動申告書などの書類を回収します。生命保険料の支払がある場合は、証明書など添付書類が必要となりますので、それも漏れなく回収してください。
また、マイナンバー(個人番号)の提供をうけたときは、本人確認を行わなければなりません。本人確認は、マイナンバーカードもしくは通知カードと運転免許証などの身分証明書で行います。なお、本人確認を行う必要があるのは、給与所得者(従業員など)本人のみで、配偶者や扶養親族等の本人確認は、給与所得者自身が行うこととされています。

4. 年末調整計算

年間の給与支給額、社会保険料などの控除額、扶養控除等異動申告書等に記載された情報をもとに、各個人毎に年末調整計算を行います。通常は、給与計算ソフト等を利用します。

5. 年末調整による還付または徴収

ほとんどの従業員で、年末調整による所得税の還付額もしくは追加徴収額が生じます。それらを12月の給与などで調整することとなります。

6. 法定調書合計表、給与支払報告書の提出

年末調整の結果である法定調書合計表や対象者の源泉徴収票を税務署に提出します。また給与支払報告書を従業員が住んでいる地方自治体に提出します。

2017年からの年末調整での変更点

給与所得控除額の改正が行われており、平成29年分より給与収入が1,000万円を超える場合の給与所得控除額は220万円が上限となっています。

また、2018年からですが、配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正が行われます。配偶者控除及び配偶者特別控除の適用を受けることができる配偶者の所得金額の上限が引き上げられる一方、配偶者控除の適用を受ける本人の所得金額によって、配偶者控除等の控除額が徐々に減少していく仕組みが設けられました。適用を受ける本人の給与額面が1,220万を超えると、控除額はゼロとなります。この改正に伴って、平成30年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の様式が改正され、申告書には「源泉控除対象配偶者」のみを記載することとされました。記載する対象が従来と変わっているため、従業員などに周知しておくことが必要です。

また、令和2年(2020年)分の年末調整から、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等については、会社に電子データで提出できるようになっています。これに伴い、年末調整手続きの電子化が進められています。
(参考)国税庁 「年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)」

年末調整で注意しなければならないこと

年末調整での注意点は多岐にわたりますが、短期間で大量の書類を処理しなければならないため、時間的な余裕を持つことや処理誤りをしないことに注意しなければなりません。

従業員から回収した書類には不備があったり、添付書類が不足している、ということもよくあります。その場合、従業員に差し戻して、修正するなどしてもらう必要がありますが、そもそも期日に余裕がないと間に合わなくなってしまいます。そうなると、12月の給与の支払などにも影響してきます。そのため、そのようなことを見越して期限を設定しておくことが重要です。また、処理誤りなどもどうしても生じてしまいますが、そうならないように年末調整業務の実施者に事前に教育研修し、二重チェックの体制を作るなどして、ミスを防止する仕組みを作っておくことが必要です。

まとめ

年末調整は期限があって、従業員の税金に直結するものです。そのため、短期間で大量の書類を正確に処理しなければなりません。年末調整を行う担当者自身が手続きの流れや改正点を事前にしっかりと理解しておきましょう。

また、対象者の理解度が低ければ、書類の記載ミスや記載漏れなどが多く起こることにより、結果的に年末調整を行う担当者の業務が増えてしまうことになります。対象者への事前説明を適切に行うことも年末調整業務を効率的に済ませるためのコツと言えるでしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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