原価計算とは?目的・種類・計算方法・仕訳例などを解説!

原価計算とは?目的・種類・計算方法・仕訳例などを解説!

「日本企業の競争力が低下している」という言説は、ここ十年ほどで嫌というほど聞く機会が増えました。その理由のひとつとして日本企業は「生産性が低いこと」が挙げられます。生産性が低い、つまり原価が高いということです。今回は経営方針全体を左右する原価計算と管理について、俯瞰的に学んでいきます。

原価計算とは

原価は工業簿記に登場するもので、多くの経理担当者が目にしたことがあるでしょう。では具体的に「原価」とはなんでしょうか。費用は、大きく次のように分けることができます。

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原価(売上原価)

売上と直接的な関係が認められる費用です。小売業における商品仕入、製造業における原料の購入などにかかる材料費や加工費、現場での労務費などが該当します。売上が増加すれば原価も増加する、という比例的な関係にあることが一般的です。

販売費及び一般管理費

企業の販売促進や事務管理などに関する費用です。事務所の家賃や総務、事務に関する人件費や消耗品、広告宣伝費などが該当します。売上の計上額とは比例しないものも多いです。

その他の費用

借入金に対する利息、本業以外での損失(投資活動や災害による滅失など)、法人税などの支払いが該当します。

原価計算とは、これらの費用のうち原価部分がどれくらいあるのか、適正な販売価格はいくらなのか、ということを調べるための手法です。

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直接費と間接費

原価計算は、「直接費」と「間接費」に分けて考えます。

直接費

直接費は、製品やサービスに対して直接的にかかる費用を指しています。製造業でいえば、製品を作るときに必要な材料費、製造作業を行う従業員の賃金などが直接費です。

間接費

間接費は、製品やサービスの提供に間接的にかかる費用を指しています。工場の電気代や減価償却費、いくつかの製品・サービスにまたがる費用などがあります。

直接費は、比較的わかりやすいものですが、間接費に関しては分類に迷うケースもあります。どの工程で発生した費用なのか、他の製品などとの共有があるかなど総合的に判断する必要があります。

また、原価計算を行うときには、「材料費」「労務費」「経費」の3つに分類します。これを「費目(ひもく)」といいます。費目のそれぞれに「直接費」と「間接費」が存在しますので合わせて6つに分類されます。

材料費

商品や製品の製造過程で発生する燃料費や消耗品費、補助材料費、消耗工具器具備品費です。製造業はもちろん、建設業や飲食業など、業種に応じた原材料があります。

労務費

労務費の内訳は製造現場などでかかる人件費や福利厚生費などです。正社員、パート・アルバイトなど、雇用の形態は問いません。「現場における賃金」と「販売管理部門の給与」などを区分することが重要です。また近年では社会保険料の負担比率も上がっており、労務費の一大構成要素となっています。

経費

材料費と労務費以外の費用です。具体的には外注加工費、運搬費、現場での水道光熱費、減価償却費などさまざまな費用が該当します。また、これら以外にも以下の4項目で分類されます。

  • 測定経費
  • 支払経費
  • 月割経費
  • 発生経費

たとえば、上述の材料費の中では、原材料費、部品費などが直接材料費となり、消耗品や工具などが間接材料費となります。

原価計算が重要な理由

原価計算を行う目的は大きく5つあります。

  • 原価管理
  • 価格計算
  • 予算管理
  • 財務諸表作成
  • 経営計画

参考:企業会計審議会 原価計算基準

これらの目的を達成するために原価計算を行います。5つの目的を理解することも大切ですが、原価計算の重要性を知るためには、まず粗利益(売上総利益)について確認をする必要があります。

損益計算書(P/L)は、次のような形式で作られています。

売上高         10,000
売上原価        6,500
―――――――――――――――
粗利益         3,500 

 

販売費及び一般管理費   2,500
―――――――――――――――
営業利益         1,000
営業外収益         50
営業外費用        100
―――――――――――――――
経常利益         950
※以下省略

まず事業において重要なのは「粗利益の確保」です。売上に対して粗利益が高い企業は、それだけ付加価値の高い商品・サービスを市場に提供していることを意味します。その状態であれば、積極的に新規展開を目指したり、新商品の開発に乗り出したりすることも可能です。
一方、粗利益が低い、つまり原価率が高い企業は、それだけ付加価値の低い商品・サービスを販売しているわけですから、選択肢が狭まります。いわゆる「薄利多売」と呼ばれる状態に該当します。
実際の事業経営では、薄利多売を実現するためには相当に大きな事業規模が必要です。中小企業においてはいくらで販売し、利益を上げるのかが重要です。言い換えると「しっかりと粗利益を取れる仕事をすること」が非常に大切なのです。

この重要な粗利益を確保できるようになるためにできることは、2つだけです。

売上を増やす

売上は「単価 × 販売数」で決まります。 現在の販売単価は適切なのか?より顧客が増やせないか?この両面から検討をする必要があります。

原価を減らす
使用する材料や製造工程の見直し、新規設備の導入など、さまざまな手段を通じて原価を下げる努力が必要です。

原価計算は、当然ながら「原価を減らす」ことを主目的として行われます。まず基礎として「原価管理を担当する者の判断を支援する」という機能があります。

ごく小規模な事業者であれば、材料の仕入れや外注先との単価交渉について決済をするのは社長その人です。またある程度の規模になった会社であれば、各部門について担当者がいることも珍しくありません。

原価計算の重要な役割は、「現在、どのような原価が、どれくらいかかっているのか」こういった情報を適宜担当者と共有し、適切に原価管理を実施するための判断基準を提示することです。気がついたら仕入価格が上がっていないか、外注加工について特定の取引先とのやり取りが不自然に増減していないか、その人が決定権をもつ事項について問題が無いか、効率的に判断を下せるような支援をすることが原価計算の重要な役割です。

そして、正確な原価計算は、正確な財務諸表作成にも欠かせません。金融機関や投資家、課税庁といった外部の利害関係者は、企業が作成する財務諸表が正しく作られているという前提でさまざまな判断を下します。仮に原価計算が誤っている場合、内部ばかりでなく、外部の利害関係者からも厳しい指摘を受けることになりかねません。

経理プラス:原価計算で押さえておくべき視点と原価管理の重要性

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原価計算の種類

原価計算には、「標準原価計算」「実際原価計算」「直接原価計算」の3つの手法があります。原価をどのようなもので捉えるかで計算結果が違います。

標準原価計算

標準原価(目標原価)とは、「これまでの実績なども踏まえ想定される標準的な原価」です。原価の概算を直感的に算出したい場合に向いています。予算編成の際にこの計算方法が使用されます。

実際原価計算

実際原価とは、「実際の事業活動を通じて集計された原価」です。原材料の期中仕入や在庫の確認、外注加工の変動、運搬費など、一定期間におけるさまざまな原価を積み上げて計算されます。

これら「標準原価計算」「実際原価計算」は全部原価計算で計算した原価を財務諸表に反映させる必要があるため、「財務会計」と関連します。

直接原価計算

直接原価とは、原価に対して固定費と変動費を分けて計算します。製品としての原価率や利益がわかりやすいことが特徴です。

「直接原価計算」は、「部分原価計算」と同義となり、管理会計と関連して行います。また、原価計算は生産形態別に以下の「総合原価計算」「個別原価計算」のいずれかを使い分ける必要があります。

総合原価計算

製品を大量に生産するときに、その期間全体にかかった原価を計算する方法です。ある程度の期間に大量生産する場合に使います。平均的な原価計算ができることが特徴です。

個別原価計算

発注された製品を1単位ごとに個別に生産するときに、その数だけの原価を計算する方法です。大量生産とは異なり、特注で製造する機械など、受注生産形態で製造する際にどれくらいの原価率になるか知ることができます。損益分岐点の目安を図ることも可能です。

原価計算の方法と管理手法

原価計算を行うときには、「費目別原価計算」「部門別原価計算」「製品別原価計算」の順に進める場合があります。それぞれの仕訳例とともに計算の流れを簡単に紹介します。

計算の元になる要件は次のとおりです。

仕掛品・・・100,000円(月初)
直接材料費・・・200,000円
間接材料費・・・100,000円
直接労務費・・・300,000円
間接労務費・・・50,000円
直接経費・・・100,000円
間接経費・・・50,000円
仕掛品・・・150,000円(月末)

費目別原価計算

材料費、労務費、経費の費目に分類し、それぞれの直接費と間接費にさらに分類します。合計で6つに分類されます。原価の計算のため営業や経理、総務職の給与手当や雑給、賞与、退職金は対象外となります。

 借方金額貸方金額
材料費200,000円買掛金200,000円
労務費300,000円未払費用300,000円
経費100,000円買掛金100,000円
製造間接費100,000円未払費用100,000円
製造間接費50,000円未払費用50,000円
製造間接費50,000円未払費用50,000円

部門別原価計算

製造間接費を製造部門費に配賦します。部門別に割合を設定しそれぞれに分配します。たとえば、解体部門、加工部門、梱包部門などの分け方が一般的です。

 借方金額貸方金額
製造間接費(解体部門)30,000円製造間接費90,000円
製造間接費(加工部門)30,000円
製造間接費(梱包部門)30,000円

製品別原価計算

製品の種類ごと、直接税良否、直接労務費、直接経費、製造部門費の原価計算をします。

【直接配賦の仕掛品振替】

 借方金額貸方金額
仕掛品70,000円材料費30,000円
労務費30,000円
経費10,000円

【部門の仕掛品振替】

 借方金額貸方金額
仕掛品80,000円製造間接費(解体部門)40,000円
製造間接費(加工部門)20,000円
製造間接費(梱包部門)20,000円

振替仕訳(直接配賦の仕掛品振替・部門の仕掛品振替)を行う場合、月初と月末の仕掛品振替の仕訳は不要となります。但し、月初仕掛品を経費に配賦する仕訳が必要となります。

【製品製造原価の振替】
個別の製品ごとに原価を配賦します。

 借方金額貸方金額
製品1〇〇円仕掛品〇〇円
製品2〇〇円

原価計算の分析例

実際の分析は、たとえば次のように行われます。

例:同業他社との比較において、原価率が高止まりしている。原価の内容を確認したところ、経費内の外注費が高いことが分かる。一方で労務費の比率は低い。原価率の改善を目指すため、直接雇用を増やすことで、外注費の比率を下げることを検討すべきだ。

ただし、昨今では新規雇用者の確保は困難であり、また雇用を増加させることは「継続的な人件費の負担」というリスクも抱えることとなる。 「原価率の高止まり」と「雇用をすることのリスク」がトレード・オフの関係となっており、どちらを選択するか入念な検討を要する。

各原価担当者がこういった分析を積み重ね、企業としての経営方針を練り上げていくことが原価計算の重要な役割です。

また特に決算書や税務申告書の作成において重要な棚卸資産や未成工事支出金の確定においても、原価計算は重要な意味をもちます。

例:期末近くに受注した建設現場について、原材料や労務費は先行して計上されていたが、売上については期末時点で未計上である。

この事例の場合、先行して支出していた原材料費や労務費は「まだ収益計上に結びついていない費用」ということで、棚卸資産(建設業会計の場合には未成工事支出金)として当期の費用から除外し、資産として計上しなければなりません。

※当期原価 = 機首棚卸高 + 期中発生原価 - 期末棚卸高

前期末に計上された在庫相当分を当期の原価に含め、期末時点で保有していた在庫相当分は翌期以降の原価へ先送りします。
この期間配分を適切に処理しないと、課税庁からは確実に指摘をされてしまいます。悪質と判断された場合には重加算税(罰則的な税金)を課されることもあります。また金融機関なども棚卸しの評価については必ずチェックをしています。

こういった個別案件ごとの原価管理は、適切な税務申告や決算書作成でも重要な意味をもちます。

経理プラス:知っておくべき原価の種類と原価計算の方法

製造業以外にも採用事例は増えている

原価計算の仕組みは、どちらかというと製造業を中心に採用されています。しかし、近年では製造業以外にも、サービス業やコンテンツ制作業など、さまざまな分野で原価計算に取り組む事例が出ています。

たとえばソフトウェア製作であれば「仕様確定やソースコードの作成を製品の製造原価と考える」「デザインなど外部に発注をかけている部分は製造経費と考える」といった方法を採用することで、原価計算の手法を取り入れることができます。このように、原価管理の考え方は、会計ソフトの発展に伴い、その適用範囲を広げていると言われています。

ひとつの企業でいくつかの事業を展開している場合、その事業種類によってどのような原価科目を採用するのか、選択をする必要があります。こういった原価の部門別管理は、個別分野ごとの採算性を把握するためにとても重要です。

また原価のなかには「部門を横断して負担されるようなもの」「自部門では直接発生せず、他部門で発生したものが賦課されるもの」など、原価分析をする担当者が自分で管理できないものなども存在します。そのような配分が難しい原価についてどのように割り当てるかは、より経営者側に近いところで決定をする必要があります。

経理プラス:原価計算基準を応用した原価管理の運用例

人事や総務、経理などの部門も分析してみる

なかには、売上との直接的関係が薄い事務管理部門について、原価計算を試みた事例も存在します。

経理プラス:製造業のためのコスト削減のポイント ―「経理コスト」を「原価計算」してみた―

上記リンク先の事例などは、経理部門について原価計算を試み、経理にかかる労務費をどのように削減するか、という観点から改善策を提示しています。

この「事務部門の改善」は、多くの中小企業において課題となっています。請求、給与計算、税務処理など、以前には紙と手計算で行われていた分野の作業について、昨今ではクラウドをはじめとした便利なサービスが多く普及しています。そういったサービスを導入することにより増加する経費と、それにより削減される労務費を比較することは、原価計算の手法に通じるものがあります。
グローバルな時代にあって、多くの企業に求められる生産性の向上。実はそのためにできることは意外と身近なところにあります。原価計算の手法は、そういった身近な改善点をあぶり出すために有用です。ぜひ御社事業にも原価計算の考え方を導入し、隠れている無駄について見つけ出してください。

まとめ

原価とは“売上を獲得するための費用”です。原価計算を通じて原価を正確に把握することは、原価管理者の意思決定、売価の確定、経営方針の検討など、事業におけるさまざまな場面で有用な情報を提供することにつながります。
また、正確な原価計算は、正確な決算書や税務申告にも必要不可欠です。近年ではクラウドツールの普及発展もあり、製造業以外にもさまざまな事業分野で原価計算の考え方を取り入れることが可能となってきました。
特に、多くの企業で多大な時間を浪費する事務部門の効率化などにおいては、原価計算の考え方を導入することにより、大きな成果を期待することができるでしょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

経費精算システム「楽楽精算」

監修 税理士 谷澤 佳彦

1993年に税理士資格を取得し、「谷澤佳彦税理士事務所」を開設。近年は相続・事業承継に対する税務相談を数多く対応する。司法書士や不動産鑑定士など他の専門家とタッグを組み、組織として企業の繁栄・事業承継をサポートすることも得意とする。AFP(Affiliated Financial Planner) 資格を 2002 年に取得、 2 級 FP 技能士資格を2003 年に取得。

谷澤佳彦税理士事務所