原価率とは?計算方法や抑え方、業種別の目安を解説

原価率とは?計算方法や抑え方、業種別の目安を解説

会社の経営成績を表す損益計算書には、営業利益、経常利益、当期純利益など複数の利益が表示されています。それぞれの利益にはそれぞれ意味合いがありますが、売上高から売上原価(製造業の場合は製造原価)を差し引いたものが売上総利益です。売上総利益は粗利とも呼ばれ、損益項目の中では通常最も金額が大きくなります。

原価率とは、この売上と売上原価を比較した指標であり、本業の商取引で十分なマージン(利幅)が獲得できているかを測る指標です。ここでは、原価率の計算方法や目安・業界平均、原価率の下げ方などについて解説します。

原価率とは

原価率とは売上高に占める原価の割合(%)のことであり、低いほど収益性が高いと言えます。売上高は、企業が商品やサービスを販売することによって得られた金額の合計で、業界による定義差は少なくイメージしやすいでしょう。

一方、売上原価は販売された商品などの仕入や製造にかかった費用のことで、商品が販売されたタイミングで計上します。製造業であれば製造活動によって発生した費用のこと、販売業であれば仕入によって発生した費用です。商品やサービスを販売する際にかかる販売費や管理部門などの一般管理費、借入金の支払利息といった費用は原価に含まれませんので注意しましょう。

計算方法

原価率の計算式は下記のとおりです。

原価率(%) = 売上原価 ÷ 売上高 ×100

損益計算書の一番上に記載される売上高と、二番目に記載される売上原価の数字を使って計算します。原価率と類似する指標に「売上高総利益率」(%)がありますが、売上総利益(粗利)は売上高から売上原価を差し引いて計算し、この利益が売上高に占める割合を表すのが売上高総利益率です。こちらは利益が占める割合なので高い方が良く、原価率と合算すると100%になります。

目安・業界平均

中小企業庁の統計調査によると、日本の全企業の平均原価率は73.1%となっています。業界によって差があり、各業界別の平均値は下記のとおりです。

業界原価率
建設業76.5%
製造業78.9%
情報通信業53.2%
卸売業83.9%
小売業69.6%
不動産、物品賃貸業56.0%
宿泊業、飲食サービス業37.3%

売上原価に人件費が含まれる製造関係の業界では高くなり、売上原価が仕入費用のみの販売業やサービス業では低くなる傾向があると言えるでしょう。一般的な飲食業の原価率は30%が目安。飲食業の原価はほぼ材料費ですので、食材コストの3倍以上の値段をつけないと、家賃や人件費をカバーして十分な利益を上げられないと考えられています。

一方で、わざと原価率を40%にし、食材の質を上げて差別化を図っている飲食店もあります。居抜き物件で初期費用を抑えたり、時間制限などで客の回転率を上げたりすることで、原価率40%の繁盛店にする戦略です。

業界の平均値は一定の目安としながら、自社の戦略と原価率を考えることが大切です。原価率は従業員の規模によっても一定の傾向が見られ、小さい企業の方が原価率は低いと言えるでしょう。

企業の人数規模原価率
5人以下67.0%
5~20人以下72.2%
21~50人以下74.4%
50人以上77.8%
個人企業41.9%

参考文献:「中小企業実態基本調査」中小企業庁

原価率が高い原因

原価率が高い原因としては、分子である売上原価が高すぎるか、分母である売上高が低すぎるかの2パターンが考えられます。景気などの外部影響が大きいので、昨年と比較して原価率が増えたとしても一概に悪いとは言えません。しかし、同時期の同業他社や業界平均と比較して劣位であれば、原因の分析が必要です。具体的に、原価率が高い原因として考えられるものを取り上げました。

販売価格を下げすぎている

売上高を増やそうとして安売りを行うと、原価率は悪化します。値下げは差別化の有力な手段ですが、一度下げると元に戻しにくいですし、価格競争に巻き込まれてしまう懸念があります。

仕入価格が他社よりも劣位

仕入先が1社のみに依存していたり、仕入れ規模が小さかったりすると、仕入価格が他社よりも劣位となり原価率が上がる原因となります。

ロス率が他社よりも劣位

製造業では機械の老朽化、飲食業では従業員の技能低下、販売業では長期滞留在庫による不良品化などによってロス率が上がり、原価率の悪化につながるケースがあります。工場の製造実力が低下してしまうと、ミスを見越して多めに材料を仕入れたり生産したりするので、これらも原価率の悪化要因となるでしょう。

原価率の下げ方

分析によって原価率が高い原因を把握したら、改善案を検討しましょう。原価率の下げ方としては、下記の方法が考えられます。

販売管理の充実

商品やサービスの原価を見比べ、原価率の低い商品の販促を優先的に行うなど売上構成の改善を図ります。原価率が高い商品と低い商品をセットで販売するのも1つの方法です。

商品の品質や魅力を改善しないで価格を上げると、原価率が改善しても売上高は下がってしまいます。競合製品との力関係を分析し、モデルチェンジなどで競争力を高めてから価格を改定すると良いでしょう。

仕入管理の充実

仕入単価の引き下げのため、仕入先の多角化や競争化、まとめ買いによる値引き交渉や物流費の削減などを検討します。信頼できる仕入先の確保は重要ですが、それが1社だけだと相手方の条件に合わせるしかなく、競争の原理も働きません。

また、万一、相手先の倒産や災害による生産停止などが発生した場合を考えると、自社のBCP(事業継続計画)の観点からも複数社と契約する方が良いでしょう。仕入にかかる物流費は、輸送費、保管費、梱包費などさまざまなコストの合算です。まとめ買いなどにより、物流費の最適化を検討します。

ロス率(歩留まり)の改善

投入した素材量に対する良品の割合を「歩留まり」と言いますが、これは製造実力を測る上で重要な指標です。歩留まりの改善は単に材料費の削減だけではなく、加工に必要な労務費や電力などの用役費の削減にもつながるため、原価全体へ大きく影響します。製造現場の実力向上の他、製造条件の見直しや客先への品質緩和なども歩留まりの改善につながるでしょう。

まとめ

原価率について、業界の平均値や原価率が高い原因、改善する方法などについて解説しました。原価率は低いほど収益性が良いと言えますが、業界によって事情が異なりますので所属する業界平均値を目安とするのが良いでしょう。原価率を分析し、自社に必要な改善策を見つけて実行していくことが重要です。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 柴藤 唯人

柴藤唯人様

大手製造業(鉄鋼メーカー)の経理財務担当として勤務。財務系は固定資産管理、棚卸資産管理、一般会計を担当。また、原価系は原価計算、月次、半期予算、中期計画、コスト分析、損益分析を経験する。管理職昇進後は会計実務からは離れて、公認会計士対応や内部統制、原価は全体のコスト総括や損益総括を担当。工場だけではなく営業へも情報を提供するなど、販売戦略にもかかわる。日商簿記1・2級保有。