短期借入金とは?長期借入金との違いや会計処理方法を徹底解説

短期借入金とは?長期借入金との違いや会計処理方法を徹底解説

企業経営において自己資金で資金繰りができない場合、金融機関から借り入れることがあり、これを借入金と言います。借入金には短期借入金と長期借入金の2種類があり、今回の記事では短期借入金と長期借入金の違いやそれぞれのメリットなどについて解説していきます。

短期借入金とは

短期借入金とは、返済期限が1年以内に設定された借入金のことです。たとえば、返済期限が3カ月の借入を行った場合、借入金に分類されます。金融機関からの借入を筆頭に、関係会社からの借入や個人からの借入も返済期限が1年以内の場合は短期借入金に含まれます。

長期借入金との違い

長期借入金とは、返済期限が1年を超えて設定された借入金のことを示します。つまり返済期限が1年を超えるか否かで、貸借対照表において短期借入金か長期借入金か区分が変わります。この1年を超えるか否かで、処理が変わることを「ワンイヤールール」と呼びます。

短期借入金、長期借入金の種類

借入金には4つの種類があります。それぞれ借り入れの仕方が異なりますので、1つずつ見ていきましょう。

証書借入

証書借入は金銭貸借契約証書を用いるもので、借入においてもっともポピュラーな方法です。企業は借入時に、金融機関と金銭消費貸借契約書を締結します。当該契約書をもとに借用証書が作成され、借入が実行されます。

手形借入

手形借入とは企業が融資を受ける際、先述の借用証書を発行する代わりに企業が振出人となり、受取人を金融機関とする約束手形を振り出す取引形態です。手形の満期が到来するに伴い、借入額を返済する必要があります。

ファクタリング

ファクタリングは売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらい、即時資金化を行う形で資金調達を行う形で資金調達を行う方法です。通常、資金に困窮している会社が利用するケースが多く、利率や手数料は高く設定されることになります。

当座貸越

当座貸越とは、小切手を振り出す手法の1つです。通常、当座預金残高を超える小切手発行を行うと不渡りになってしまいますが、金融機関と当座貸越契約を結ぶと、当座預金残高を超える額で小切手を発行することができるのです(限度額は契約内で定めます)。

なお、証書貸付・手形貸付・当座貸越については以下ページで詳細を取り上げていますので、合わせてご参照ください。

経理プラス:融資は企業の原動力 賢く使いわける証書貸付・手形貸付・当座貸越

短期借入金と長期借入金のメリット、デメリット

短期借入金のメリット

金利が低い

短期借入金のメリットとして、金利が低いことが挙げられるでしょう。これは借入期間が短いことから、貸付側からすると貸付債権の未回収リスクが少ないことに起因しています。しかし、信用状態が低い会社が貸付を受ける場合は、金利が高く設定されることも少なくありません。

借入が容易

長期借入金と比較すると借入しやすいこともメリットとして挙げられるでしょう。一般的に短期借入金は運転資金目的で借入することが多いです。返済の原資は売掛金の回収金があてられるケースが多いため、返済計画が立てやすいです。そのため貸付側の回収計画の妥当性も高くなり、容易に借り入れることができます。

短期借入金のデメリット

1回あたりの返済額が大きくなる

短期借入金のデメリットは、返済期間が短いことから1回あたりの返済額が大きくなる傾向にあることです。返済原資が何か別の都合で調達できないと(たとえば大型案件の売上金額未入金など)、一気に資金繰りが厳しくなります。

管理的コストの増大

また、管理的コストの増大もデメリットになるでしょう。短期借入金は借り換えを行うことも少なくありません。また、複数の金融機関から借入を行っている場合には、返済期日の細かな管理が必要になります。

長期借入金のメリット

キャッシュフローが安定する

長期借入金は返済期間が長いことから、キャッシュフローは安定する傾向にあり、調達した金額でじっくりと時間をかけて事業に取り組むことができます。

長期借入金のデメリット

融資審査が厳しい

デメリットとしては、借入時の融資審査が厳しいことが挙げられます。金融機関としては資金を長期間融資するわけですから、当然ながら審査は厳しくなるでしょう。
また、保証や担保設定が短期借入金より厳しくなる傾向にある点もデメリットです。代表者が保有している資産を、担保に入れるよう要請されるケースも数多くあります。一方、会社の信用度が上がれば上がるほど、保証や担保の要請は少なくなります。

会計上の表記方法

短期借入金や長期借入金は、会計上どのように処理・表示されるのでしょうか。返済期限が1年を超えるか否かで、区分が変わることを先述しました。会計上の処理も同じく1年基準(ワンイヤールール)を用います。融資期間が1年以内の借入金については短期借入金として処理し、流動負債の部に表示します。一方、融資期間が1年を超える借入金については原則として長期借入金として処理し、固定負債の部に表示します。ただし、1年以内に返済する金額は一年内返済長期借入金として処理し、流動負債に計上することに注意が必要です。

融資期間返済期限勘定科目BSでの表示箇所
1年以内1年以内に返済する金額短期借入金流動負債

1年超
1年以内に返済する金額一年内返済長期借入金流動負債
1年以上後に返済する金額長期借入金固定負債

なお、融資の際の仕訳処理については、以下ページで詳しく紹介されていますので、合わせてご確認ください。

経理プラス:知ってる?経営者が勘違いしがちな融資(借入金)の仕訳処理

また、短期借入金や長期借入金はキャッシュフロー計算上、財務キャッシュフローで表示されます。借入時は財務キャッシュフローのプラス要素、借入返済時はマイナス要素です。財務キャッシュフローについては、以下ページで詳しく紹介されていますのでご確認ください。

経理プラス:財務キャッシュフローで確認したい重要ポイントとは

短期借入金の注意点

最後に、短期借入金の注意点についても確認しておきましょう。短期借入金は、借り換え前提で融資を受けることも多いでしょう。仮に、想定していた借り換えができなくなった場合、資金繰りに多大な影響を及ぼし、引いては倒産リスクにつながる可能性があることに注意してください。リスクを減らすためにも常日頃から金融機関担当者と密に連携し、信用を得ておきましょう。
なお、執筆時現在(2020年10月)は新型コロナウィルスによる業績悪化を補填すべく、一時的に短期借入金が増えている会社が増えています。ただし、補填とはいえあくまで借入です。そのため、将来的に返済が必要な資金であることは注意しておきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 篠原 泰之

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1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。日商簿記1級保有。