融資は企業の原動力 賢く使いわける証書貸付・手形貸付・当座貸越

借金というのは、なんとなく気が重たい言葉です。しかし、借金を有効活用することは事業経営の可能性を飛躍的に高めることでもあります。今回は「融資の活用」という観点から、その目的や融資の種類について概要を確認していきましょう。

なぜ融資は事業経営で重要なのか?

融資の効能は「時間の確保」です。例えば「新規設備を導入して生産性を向上したい」と考えたとします。事業を続けて自己資金を貯めてから機械を導入しよう、と考えると非常に長い時間がかかり、その間に商機を逸してしまう恐れもあるでしょう。

そこで、融資を活用することで「自己資金が貯まるまでの時間」を省略することができます。

  • 融資を活用して資金を確保し、新規設備を導入する
  • 導入した設備を活用し、生産性を向上させて利益を伸ばす(収益の増加・費用の削減)
  • 利益が増加することによりキャッシュフローが改善し、手元に資金が多く残る
  • 残った資金を活用して、融資の返済を進める

「無借金経営」は一見するとたいへん良い言葉にみえます。しかし、実は無借金にこだわることは「事業の可能性を大きく制限すること」にもつながりかねないことは、知っておくべきでしょう。

融資を受ける主な目的

“なんのために資金を借りたのか”はとても大切な情報です。事業が長期化し、借入の返済が常態化してくると「そもそもなんのために借りたお金だったのか?」と忘れてしまう経営者は決して少なくありません。

先述のとおり、融資の効能は「時間の確保」です。これを裏返すと「融資の成果を出すためには時間制限がある」ということでもあります。融資を活用したのと同時に、その企業は「解決しなければならない時間制限付きの課題」を抱えることとなります。

その課題は「きちんと期限までに解決できたのか?」について、常に検討を続けなければならないということです。

運転資金

企業の日常的な資金繰りは、さまざまな事情から一時的に悪化することがあります。そういった短期~中期的な資金繰りの悪化に対処するために、運転資金を確保するための融資があります。

このような目的で融資を受けた場合には、その資金繰りを悪化させている課題を早急に解決させ、融資を受けることが常態化しないようにすることが重要です。

また「運転資金相当額は常に外部から融資を受けるべき」という考え方も存在します。

卸売、小売、製造、建設などふくめ、一般的な企業では売上に先行して仕入が計上されます。また「収益や費用の計上」と「代金の回収と支払い」には時間的なズレが生じます。その結果、企業は望む望まないにかかわらず、外部に対して資金を貸し付けることになってしまいます。その分、手元の資金は常に不足することとなり、その分だけ継続的に融資で賄う必要がある、と考えられるのです。

※運転資金 = 棚卸資産 + 売掛債権 - 買掛債務

設備投資資金

経営改善のために新しい設備(建物や機械装置など)を導入するための融資です。上で紹介をしたように、新規設備を活用することで生産性を向上し、利益を増やすことが目的です。昨今のように技術革新が日進月歩で進む状況下では、設備投資の継続は企業の存亡を決める重要事項です。

分類が難しいものとして「雇用確保」「人材育成」のための融資があります。こちらも昨今では業態、規模を問わず経営上の最重要事項に位置づけられています。雇用した人材が収益を獲得できるようになるためには時間もかかることから、それまでの間「人件費の増加」に対処するための資金を確保しなければなりません。

借りる側からすると、融資の目的についてはそれほど重要事項に感じられないかもしれません。しかし、融資する側からすると融資の目的は非常に重要です。仮に「設備投資資金」として融資を受けたにもかかわらず「運転資金」に融通をしてしまうと、最悪の場合には金融機関との取引を中止されてしまうこともあります。
融資を受ける際には、なんのために借りるのかについて、きちんと金融機関と相談し、その目的に沿った用途に確保した資金を使いましょう。

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融資の種類

次に、融資の種類について確認します。

証書貸付

もっとも一般的な融資です。融資額と返済期間、金利を定めて融資を受け、事前の予定に従って返済を進めます。

信用度が低い企業は、受けられる融資額は小さく、返済期間は短く、金利も高くなります。また信用保証協会の活用(結果的には利息の二重払い)を求められることも多いです。
信用度が高い企業(業績が良い会社)はその逆で、融資額は大きく、返済期間も長く、金利も低くなります。そして保証協会を使わない、いわゆるプロパー融資を受けることが可能です。
返済は着実に迫ってきますので、設備投資・運転資金ともに、返済速度に負けないように課題を解決する必要があります。

手形貸付

銀行宛の約束手形を振り出し、銀行から利息相当額を差し引いた金額を受け取る形の融資です。
通常は短期資金の融資に用いられます。

しかし、なかには「手形期限の到来と同時に同額の手形を振り出す」という取引を繰り返すことで、融資を受け続ける場合もあります。「運転資金」のところで触れた「不足する運転資金分を常に外部から借り続ける」ために用いられることもあります。

当座貸越

企業に対して一定の枠(例えば3,000万円までなど)を設定し、その枠内で自由に融資を活用できる仕組みです。資金使途に制限はなく、返済についても企業が好きなときに行うことができます。

借りる側からすれば非常に利便性が高い融資で、信用度が高い企業に対して金融機関が売り込んでくることが多いようです。特に資金需要が差し迫っていない場合でも、当座貸越の枠を設定しておけば、いざというときに枠内で自由に融資を活用することができます。

複合的に活用する方法もある

上で紹介した融資は、いくつかの種類を組み合わせて活用されることもあります。例えば大規模が設備投資計画の場合には、以下のような流れで融資が実施されることもあります。

  • 大枠については証書貸付で資金を確保
  • 一部分について当座貸越を設定
  • 設備投資実施後、証書貸付の返済を進める
  • 投資の成果がどの程度出ているかに応じて、当座貸越の返済を企業が自由に進める

いずれにしても、優良企業の場合には選択肢が幅広く用意されることから、有利な条件で融資を活用することが可能となります。

まとめ

融資は上手に活用することで事業の可能性が大きく開けます。融資の目的は運転資金と設備投資資金に大別され、どちらの目的にせよ、一定の期間内に成果を出すことが求められます。融資は「証書貸付」「手形貸付」「当座貸越」といった種類にわけることが可能です。優良企業であれば、融資の目的や想定する返済期間に応じて、自社に有利な状況を構築することもできます。

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。