資金繰り表とは?キャッシュフロー経営の手法と効果

資金繰り表とは?キャッシュフロー経営の手法と効果

近年注目を集める経営フレームの一つが「キャッシュフロー経営」です。キャッシュフロー経営とは、一言で言えば、キャッシュフロー管理の徹底に重きを置いた経営手法です。
今日はこのキャッシュフロー経営について基本的理解を確認した上で、実際の業務に役立つ資金繰り表の作成方法をみていきましょう。

「キャッシュフロー経営」とは

1990年代後半から21世紀にかけてわが国で実施された会計制度の改革を契機に、日本企業に広く浸透した経営モデルの1つが「キャッシュフロー経営」です。キャッシュフロー経営の捉え方はさまざまですが、基本となる考え方は、「現金資金の流れの管理を徹底すること」とされています。

「黒字倒産」という言葉をご存じでしょうか。これは、会計上は利益が計上されているにもかかわらず、資金繰りに窮して倒産してしまうことをいいます。会計上の利益は必ずしもキャッシュ(現金)の裏付けがあるものばかりではありません。そのため、一時的に債権者への資金繰りに窮して倒産してしまうケースが起こり得るのです。
こうした黒字倒産の事態を避けるためには、キャッシュフロー経営の概念を持つことが有効です。会計上の利益のみならず、現金資金の流れについて細かく計画を立て適時モニターすることにより、資金が枯渇する事態や、そのリスクの高まりを事前に察知することが可能となります。

最初に述べたようにわが国でキャッシュフロー経営が注目を集めた背景には、会計制度の改革に加えて、1990年代の不況の影響もあるでしょう。さらに近年では、異なる観点からもキャッシュフローに熱い視線が注がれています。それは「企業価値創造」という観点からの視点です。企業価値は将来のキャッシュフローの割引現在価値として定式化されています。つまり、企業価値を最大化するためには、将来のキャッシュフローを最大化することが求められているのです。こうした点からも、キャッシュフロー経営は注目を集めているといえます。

指標となるフリーキャッシュフロー

キャッシュフロー経営を行うにあたって重視される代表的な指標は、「フリーキャッシュフロー」(FCF)です。FCFとは、資本提供者である株主や債権者らに分配・提供することができるキャッシュのことを指します。

FCFは、営業キャッシュフローから経常的な経営行動に必要となるキャッシュフローを控除して算出します。経常的な経営行動に必要となるキャッシュ・アウトフロー(資金の流出)をどのようにとらえるかで、FCFにはいくつかの算出方法が存在しますが、キャッシュフロー計算書上の「投資活動によるキャッシュフロー」を用いることが多いです。

キャッシュフロー経営分析に必要な視点

キャッシュフロー経営分析には、大きく分けて次の2つの視点が必要です。

1つは、そのフリーキャッシュフローがどのような水準かという視点です。当期のフリーキャッシュフローを増加させるには、営業キャッシュフローを増加させるか、それを生み出すのに必要となる投資キャッシュフローを低下させればよいわけです。しかし、後者を選択した場合、投資を抑制しすぎると、将来のキャッシュフロー獲得能力が低下する恐れがあります。各期のFCFがどういった意味を持つ数値であるのかを吟味することが重要です。

もう1つは、フリーキャッシュフローの使途です。配当や自社株買いなどで株主へ還元するのか、あるいは借入債務の返済にあてるのか、それとも将来の買収資金として内部留保するのかなど、さまざまな使い方が考えられます。こうしたフリーキャッシュフローの使途から、企業のキャッシュフロー経営への取組姿勢を分析することができます。

経理プラス:フリーキャッシュフローとは 計算方法と分析の具体例

EVAを用いた企業評価

キャッシュフロー経営についてご紹介してきましたが、これとよく似た概念としてEVAという指標があります。

EVAは、「Economic Value Added」の略で、日本語では「経済的付加価値」と呼ばれ、スターン・スチュアート社によって商標化されている企業評価指標です。
「投資した資本に対して、一定期間にどれくらいのリターンを生み出したか」という、その企業が作り出した経済価値を把握する指標を指します。

EVA = NOPAT(税引後営業利益) - 投下資本 × 加重平均資本コスト

会社利益の限界を克服

近年、EVAが注目される理由は、2つあります。

1つは、EVAが会計利益の限界を克服するという側面を持っていることです。スターン・スチュアート社の創業者であるスターン氏は、一般に求められた会計原則(GAAP)に従って算出された会計情報をそのまま利用すれば、経済的真実を歪めてしまい、資源配分を誤ることになると主張しました。実際にスターン・スチュアート社が数えたところ、こうした会計の潜在的な歪みは120か所以上にのぼるといいます。

EVAを算出する際にNOPAT(税引後営業利益)が利用されますが、これは損益計算書上の営業利益から法人税を差し引いたというだけの指標ではありません。NOPAT算出に際して必要となる調整を行うことで、会計の潜在的な歪みを修正しようというわけです。

たとえば我が国の会計基準では、研究開発費を支出したその期に一括費用計上することが求められています。しかし、企業は何のリターンも期待せずに巨額に資金を研究開発活動に投入しているわけではありません。こうした投資の効果は将来の利益に反映されるはずです。そこで、NOPAT算出にあたっては、まず設備資産への投資と同様に研究開発投資を資産計上した上で、その研究開発活動の効果が期待できる期間にわたって費用計上していきます。また、繰延税金、広告宣伝費、営業権償却費、その他引当金などについても修正を加える必要があります。

企業が生み出した真の利益

もう1つの理由は、EVAの算出にあたって、先に説明した資本コストを考慮している点です。EVAはしばしば「企業が生み出した真の利益」といわれます。というのも、EVAは当期純利益から株主資本コストを控除して算出されるからです。つまり、株主を含め、取引先、従業員、債権者、政府といったすべてのステークホルダーに対するコストを差し引いた後の残余利益がEVAなのです。

これらの理由から近年、EVAが注目を集めています。
「企業価値創造」というキャッシュフロー経営の概念と共通する部分があることが、おわかりいただけると思います。

一般的には税引後利益や株式時価総額などの指標に注目が集まりがちですが、本来、企業評価する際、また自社を経営目線で捉える場合には、その目的に応じて視点を変えることが有効なのです。

資金繰り表の作り方

資金繰り表に所定のフォーマットはありません。各々の企業や業界、ビジネスモデルによって、キャッシュ推移を予測するためにモニターすべき項目は異なるからです。

一般的な資金繰り表の基本的な構造としては、前月末の現金残高を起算点として、当該月に発生するキャッシュインフロー(資金の流入)項目を加算し、キャッシュアウトフロー(資金の流出)項目を減算することで、当月末の現金残高をシミュレーションし、予実管理を行うことが可能な表です。

資金繰り表  (単位:万円)
 1月2月3月
予算実績予算実績予算実績
前月繰越現金
営業キャッシュインフロー(+)現金売上
売掛金の回収
受取手形期日入金
前受金の入金
その他の入金
収入合計
営業キャッシュアウトフロー(-)現金仕入
買掛金の支払
支払手形期日決済
未払金の支払
人件費の支出
その他支出
支出合計
営業キャッシュフロー
その他(+)借入れ
(+)手形割引
(-)設備投資
(-)借入金返済
次月繰越現金

まとめ

ここまでキャッシュフロー経営の有効性と資金繰り表について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
企業を評価する際、税引後利益や株式時価総額などの指標へ目が行きがちです。しかし、より本質的な評価が必要な場合、また経営目線で自社を捉え実効性のある経営戦略を描く場合には、資金残高の推移をきめ細やかにモニターするなど、その目的に応じて視点を変える必要があります。ぜひ参考にしてみてください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

経費精算システム「楽楽精算」

著者 田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。 東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もあり。