事業者が行う住民税の納付処理とは?2021年改正のポイントも解説

事業者が行う住民税の納付処理とは?2021年改正のポイントも解説

住民税は、個人と法人の両方に納税義務があります。また、会社組織に属する個人の住民税は会社が代わりに支払うことが一般的です。そして、個人の住民税の支払いは、中途の入退社の場合の処理が煩雑になりがちです。

この記事では、個人の住民税にスポットを当て、住民税の納税方法や入退社時の処理方法などについてご紹介していきます。実務としてたびたび触れる機会がありますので、しっかりと理解しておきましょう。

住民税とは

住民税は、住所地がある市区町村(都道府県)に納める税金で、市町村民税と都道府県民税に分かれています。住民税は教育や福祉、ゴミ処分など、住民の暮らしのサービス維持に活用されています。

住民税には、定額の均等割と所得額に応じた税額負担の所得割があり、非課税の範囲内に該当しない場合は、2つの税額の合算が住民税となります。

均等割所得割
標準税率(年額)標準課税(合計10%)
市町村民税3,500円6%
都道府県民税1,500円4%

※政令指定都市や市町村民(都道府県)の独自政策により住民税率はそれぞれ変わることがある

住民税の起算日、納税地

住民税は、前年度の所得に対し算出されるもので、毎年1月1日時点で住所がある市区町村(都道府県)に納税義務があります。また、1月1日以降に転出したとしても、住民税を納税する市区町村(都道府県)は変わりません。

住民税の2021年改正内容のポイント

2021年分(2020年1月から12月までの所得)の住民税については、給与や公的年金収入などの控除額引き下げや、新たな所得金額調整控除などの改正があります。改正の中から、重要なポイントをみていきましょう。

給与所得、公的年金所得の控除額引き下げ

給与所得控除が一律で10万円引き下げられます。給与収入が162.5万円以下の場合、改正前は65万円までの控除額だったものが改正後は55万円になるなど、各給与収入の範囲でそれぞれ改正されています。

また、公的年金控除額が一律10万円引き下げられます。公的年金等の収入が1,000万円超えの場合、改正後は控除額上限が195.5万円になるなど、収入金額に応じてそれぞれ改正されています。

所得控除調整控除の創設

新たに給与所得の調整控除が創設されています。次の要件に該当することで対象となります。

  1. 前年の給与所得の金額が850万円超えかつ「特別障害者」「年齢23歳未満の扶養家族を有する」「特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養家族を有する」のいずれかに該当すること
  2. 前年の給与所得控除後の給与および公的年金等に係る雑所得の収入があり、給与所得控除後の給与および公的年金等に関わる雑所得の合計が10万円超えになること

ひとり親控除の創設と非課税範囲の拡大

前年度の合計所得が135万円以下のひとり親の住民税が非課税となります。また、一定の所得以下の寡婦については、ひとり親控除が適用されます。

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住民税の納税方法

住民税の納税方法は、「普通徴収」と「特別徴収」の2つの選択肢があります。それぞれの違いを解説します。

普通徴収

普通徴収は、納税者が自分で納付する方法です。前年度の収入をもとに算出された税額が、毎年5月から6月頃に納付書とともに郵送されてきます。同封されている納付書は、一括払いと4期までの分割払いの2種類です。また、個人が口座振替の手続きをしている場合もあります。どの方法でも選択することが可能です。

特別徴収

特別徴収は、会社が従業員の代わりに市区町村(都道府県)に住民税を支払う方法です。会社は年間の住民税を12ヶ月で分割し、毎月の給与から天引きします。そして、従業員から徴収した住民税を翌月の10日までに市区町村(都道府県)に支払います。従業員を抱える会社の場合、一般的には特別徴収を選択しています。

勤務形態による徴収方法

特別徴収は基本的に従業員の勤務形態によって変わるものではありません。そのため、正社員はもちろん、契約社員やパート・アルバイトも特別徴収が原則です。ただし、次に挙げる勤務形態の場合などは、例外も認められています。

  • 他から支給の給与で住民税が特別徴収されている
  • 退職のために特別徴収が不可能
  • 勤務日数が極端に少なく住民税を徴収できない

住民税の徴収ができないほど給与が少ない場合は、特別徴収は物理的にできません。また、退職後は給与の支払いがないため、こちらも特別徴収はできなくなります。

入退社時の住民税の取り扱い

従業員が年度の途中で入社または退社したときは、どのような手続きになるのでしょうか。入社や退社の時期にもよりますが、基本的には特別徴収の手続きが必要です。

入社時の手続き

入社前に普通徴収していた場合は、入社後に住所地に特別徴収切替届出書を提出します。前職で特別徴収をしていた場合で、引き継げるタイミングであればそのまま引き継ぎます。入社時に特別徴収を実施する場合は、前職の退職後にどのような手続きになっているか確認が必要です。

退社時の手続き

退職時は、転職先の有無や退職の時期により手続きが異なります。すでに転職先が決まっている場合には、本人からの申告により新しい会社でも継続して特別徴収が受けられます。

6月から12月末までに退職した場合は、退職後は普通徴収に切り替わり、住所地のある市区町村から納付書が郵送されます。1月から5月末までに退職した場合は、一括徴収が原則です。最後の給与から一括して徴収することになります。ただし、給与が少ないなど徴収できなかった場合には、普通徴収として自分で納付してもらいます。

入退社の住民税の取り扱いは、前職での住民税の支払方法や時期など状況により対応が変わります。また、従業員の住所地が異なると、それぞれの市区町村に対して個別に対応する必要があるため煩雑になりがちです。特別徴収の届け出も速やかに進めていかなければ、切替のタイミングに間に合わないこともあります。後から不足分が発生しないように、迅速で正確な処理をしましょう。

まとめ

今回は、会社にも関わりのある個人の住民税について、納税方法や2021年の改正ポイント、入退社時の手続きなどをお伝えしました。従業員からの徴収、市区町村への支払いまとまめ、中途入退社の場合の届出など、住民税だけでもさまざまな処理が必要です。

従業員が多いほど、また住所地が広範囲にわたるほど、まとめるには手間がかかりますので、処理の仕方を正しく理解してミスのないように進めていきましょう。
また、年末調整については下記の記事で紹介しております。こちらも併せてご確認ください。

経理プラス:年末調整の仕訳と勘定科目 還付あり・追加徴収の2パターンで解説

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

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大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。