決算報告書の書き方や種類、読み方をわかりやすく解説!【テンプレートあり】

決算報告書(決算書)の種類や見方とは?テンプレートも紹介

経理担当者であれば、決算報告書は聞き慣れた言葉の一つかもしれません。しかし、実際にどのような種類の書類から成り立っているのか、その詳細までは理解できていない方もいるのではないでしょうか。

今回は、決算報告書の種類や作成の仕方、提出期限などについて解説していきます。あらためて、しっかりと理解しておきましょう。

決算書報告書とは

決算報告書とは、企業における1年間の事業の結果をまとめた書類のことです。毎年作成して、税務署に提出しなければなりません。簡易的に「決算書」と呼ばれることもあります。

決算報告書の開示義務

決算報告書は、法人税法上、税務署へ税務申告書類とともに提出義務がある書類です。また、上場企業の場合は、金融商品取引法によって開示が求められ、決算報告書は有価証券報告書と呼ばれます。有価証券報告書は誰でも閲覧することができます。一方、非上場企業は基本的に有価証券報告書を作成する義務を負っていませんが、会社法の規制によって一部開示義務を負います。会社法上は、決算報告書のことを計算書類と呼びます。

決算報告書の目的

決算報告書は、企業の収支状況から負債、資産状況なども把握することができる書類です。正確に作成され、開示されることによって、取引先や株主、債権者が著しく不利益を被らないように判断することができます。

決算報告書は、外部に向けて開示することだけが目的ではありません。自社の経営状況を客観的に分析する資料にもなるため、社内においても重要な役割を担う資料といえるでしょう。

決算報告書の種類

決算報告書と聞いて、貸借対照表や損益計算書のような代表的な書類をイメージされる方は多いでしょう。実際には法人税法で定められた複数の書類が存在します。以下が決算報告書の代表的な書類となります。

  1. 貸借対照表
  2. 損益計算書
  3. キャッシュフロー計算書
  4. 株主資本等変動計算書
  5. 個別注記表

特に貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は「財務三表」と呼ばれており、重要な書類として位置付けられます。

貸借対照表

貸借対照表はB/Sともいわれるもので、企業の資産、負債、純資産が記載されたものです。資産は、現金・預金などの流動資産と不動産などの固定資産、が記載されます。

負債は、返済1年以内の流動負債と1年以上の固定負債が記載され、純資産には資本が記載されます。

貸借対照表では、企業がどのように資金を調達しているか、どのように運用しているかを把握することが可能です。そのため、企業の財務状況を読み取る上でも重要な書類といえます。

経理プラス:貸借対照表とは?見るべき2つのポイントと財務三表の関係を解説
ビジネス書式テンプレート:貸借対照表

損益計算書

損益計算書はP/Lともいわれるもので、企業の1年間の経営成績が記載されたものです。損益計算書では、売上、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益などが記載されます。売上高から売上原価と販売費及び一般管理費を引いたものが営業利益です。

そして、営業利益から受取利息や支払利息などの営業外収益・費用を加減したものが経常利益となり、これに固定資産の売却損益などの特別損益を加減したものが税引前当期純利益となります。さらに税引前当期純利益から法人税、住民税及び事業税などを引いたものが、当期純利益として記載されています。損益計算書はいくつかの「利益」項目があり、混同しがちですが、それぞれの利益項目を正確に読み取ることが重要です。

ビジネス書式テンプレート:損益計算書

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、「C/F(シー・エフ)」とも呼ばれています。企業の1年間の現金の流れを表しており、手元にどれくらいの現金が残されているかを把握できるものです。上場企業は決算時の作成が義務付けられていますが、非上場企業は任意となっています。

なお、企業の1年間の収益という観点からすると、損益計算書も似ていると考えるかもしれませんが、帳簿上の結果と実際のお金の流れは一致していないこともあります。それは現金以外の勘定を使って収益や費用の仕訳をしているケースがあるためです。

キャッシュフロー計算書は単純にお金の流れにフォーカスして計算されたものであるため、損益計算書だけでは判断できない部分を補足する役割もあるといえます。

株主資本等変動計算書

株式資本等変動計算書は、貸借対照表のうち純資産の主に株主に帰属する部分となる株主資本の項目が変動した理由を記載するものです。株主資本がなぜ変動したのかを開示する資料となります。

経理プラス:株主資本等変動計算書で仕訳ミス発見!?基本を押さえて賢く活用
ビジネス書式テンプレート:株主資本等変動計算書

個別注記表

個別注記表とは、会計方針に関する注記、貸借対照表や損益計算書に関する注記、およびその他の計算書に記載されている注記を一覧でまとめて記載しているものです。

経理プラス:個別注記表は必須の資料! 中小企業が気を付けるべき項目を解説

決算書の作成方法

会計ソフトを利用していると、ある程度は決算報告書が自動作成される機能がありますが、あらためて決算報告書の作成方法を確認していきましょう。

決算報告書は、日々の取引を1年間で集計したものです。そのため、毎日の取引を記帳していることが、正確な決算報告書の作成につながっていきます。

仕訳帳 → 総勘定元帳 → 決算整理前試算表 → 決算仕訳 → 決算報告書

会計ソフトでは、仕訳帳に入力することで、自動的に総勘定元帳にも反映されます。手作業で元帳に転記する必要がないため、人的ミスを防ぐことが可能です。

自社で決算報告書まで作成しているケースもありますが、決算仕訳では減価償却費の計算や振替なども発生するため、会計事務所に依頼して作成してもらうことが多いでしょう。

決算書の作成期限

通常、決算報告書を添付して法人の確定申告をします。確定申告は事業年度の終了後2か月以内に行わなければなりません。そのため、決算報告書は確定申告書を提出期限までに作成する必要があります。なお、申告期限の延長の特例の手続きをすることで条件を満たせば法人税の申告期限を1か月延長することが可能です。

まとめ

決算報告書がどのような種類の計算書から作成されているか、1つ1つ確認していきました。決算書といえば、B/SやP/Lがメインと思われがちですが、その他の計算書も補足説明などにおいて大切な書類です。
また、日々の取引が決算書につながることも忘れてはなりません。提出時に慌てることがないように、日々の業務を正確に進めていきましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 公認会計士 白井 敬祐

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公認会計士。2011 年公認会計士試験合格後、清和監査法人で監査業務に従事した後、新日本有限責任監査法人及び有限責任監査法人トーマツで IFRS アドバイザリー業務や研修講師業務に従事。その後、株式会社リクルートホール ディングスで経理部に所属し、主に連結決算業務、開示資料作成業務や初年度の IFRS 有価証券報告書作成リーダーを担当。
そして、2021 年 7 月に独立開業し、現在は CPA 会計学院にて会計士講座(財務会計理論)や CPA ラーニングの講師を務め、近畿大学経営学部の非常勤講師として学生向けに会計士講座を開講。
会計を楽しく学べる『公認会計士 YouTuber くろいちゃんねる』を運営。
著書「経理になった君たちへ」。

白井敬祐公認会計士事務所