複式簿記と単式簿記の違いを解説!経理が見るべきポイント3選

複式簿記と単式簿記の違いを解説!経理が見るべきポイント3選

経理担当者であれば、日頃から簿記に触れていることでしょう。簿記には単式簿記と複式簿記の2種類がありますが、多くの場面で複式簿記が使われていると思います。

この記事では、2種類の簿記の違いや決算書の仕組み、経理担当者が簿記で気を付けるべきポイントなどについて詳しくご紹介します。日常の経理業務をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。

そもそも簿記とは

簿記とは、会社のお金の出入りや取引を記録するものです。毎日のように発生する取引を正確に帳簿へ記帳し、まとめます。一般的には1年間をひとつの期間として区切り、まとめた帳簿をもとに決算書などを作成します。

日々の取引を帳簿に記載したり、書類を整理して保管したりする業務を「経理」といい、決算書などを作成して報告することを「会計」といいます。

簿記の処理には「単式簿記」と「複式簿記」の2種類があります。取引を帳簿に記載するのはどちらも同じですが、記載の仕方や青色申告特別控除の控除額が異なります。

単式簿記と複式簿記とは

続いて単式簿記と複式簿記の概要と違いについて解説をしていきます。それぞれの特長を理解していきましょう。

単式簿記

単式簿記とは、ひとつの取引に対してひとつの科目を用いて帳簿に記録するものです。主に現金の増減について記録します。一般家庭の家計簿がイメージとして近いでしょう。会計としては簡易的でシンプルであるため、簿記の知識に自信がない場合でも記録しやすいものです。ただし、青色申告特別控除であっても最大65万円ではなく10万円の控除のみとなります。なお、白色申告の10万円控除も単式簿記で受けられます。

<単式簿記の例>

現金支出
〇月〇日 支出 水道代 10,000円

複式簿記

複式簿記は、ひとつの取引を「借方」と「貸方」の勘定科目に分けて記録するものです。取引の原因と結果を正確に分けて分類し、資産と負債がどのように増減したか記録します。個人事業者を含む青色申告の会社では、一般的に複式簿記を採用しています。複式簿記で記録することによって、青色申告特別控除では最大65万円の控除が受けられます。

複式簿記は、勘定科目や仕訳の仕方といった専門的な知識が必要とされていました。しかし、今は会計ソフトの仕訳サポートもあり、自動で元帳への転記もできます。そのため、帳簿を手書きで作成していたときと比べ、簿記の実務に不慣れであっても取り組みやすくなっています。

<複式簿記の例>

借方金額貸方金額
水道代10,000円現金10,000円

決算書の仕組みと複式簿記

日々の取引が記録された帳簿をもとに作成されるものとして、決算書があります。決算書とはどのようなものか、複式簿記との関係などについて詳しくみていきましょう。

決算書の仕組み

決算書は、ある一定の期間の会計年度(事業年度)において会社の収益や費用などをまとめた業績や財務内容がどのような状態であるか、把握して報告するための書類です。代表的な書類としては、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などが挙げられます。一般的に、会計年度は1年毎でまとめ、毎年決算書を作成します。

決算書のもとになるのは、日々の取引の記録です。帳簿に記録された内容が集計され最終的に決算書としてまとめられます。

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複式簿記と決算書の関係

決算書類を作成するためには、複式簿記での帳簿記録が必要になります。貸借対照表や損益計算書に登場する勘定科目は、単式簿記では対応できていないためです。「借方」「貸方」と詳細に分けて帳簿付けして集計することで、決算書類のような一見すると複雑に感じる財務諸表を作成することができるのです。

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青色申告と複式簿記

税務署に提出する確定申告書には「白色申告」と「青色申告」があります。白色申告は10万円、青色申告は10万円か最大65万円の特別控除が受けられます。所得税負担を少なくするためには、最大65万円の控除を受けることが良いですが、そのためには「複式簿記」で処理することが義務付けられています。そのため、一般的な会社では複式簿記を採用しています。

経理担当者が気を付けるべき簿記のポイント

経理担当者にとって簿記は日常的な業務のひとつですが、次のような点に注意して進めることが大切です。

取引を速やかに正確に処理すること

簿記の基本として、取引は速やかに、かつ正確に処理することが求められます。帳簿に記録する取引は毎日、複数発生します。取引を速やかに、かつ発生順に記録していかなければ、帳簿残高にマイナスが発生するなど「つじつま」が合わないケースがでてしまいます。

また、正確に処理することも重要なポイントです。取引毎に最適な勘定科目を使って記録を重ねていきます。会計年度の途中では複数発生する同じ取引を、別々の勘定科目を用いることがないように勘定科目を一貫して用いることも大切です。

エビデンスがあること

帳簿に記載する取引には、必ずエビデンス(根拠資料)が必要です。請求書や領収書、契約書など取引を確認できるものを意識しながら処理します。電子取引化が進み、スキャナやデータで受け取る機会も増えていると思いますが、簿記の処理は基本的に同じであると捉えましょう。

検証・検算すること

簿記の処理では、検証・検算も大切なポイントのひとつです。帳簿と手元の現預金の残高が同じか確認することは、現金を扱う部署において必要となる業務です。また、複式簿記は「借方」「貸方」に分けて仕訳をしますが、それぞれの残高は一致することが前提です。複雑な取引の場合は、注意するようにしましょう。

<複式簿記の仕訳例>

借方金額貸方金額
当座預金49,200円売掛金50,000円
支払手数料800円
合計50,000円50,000円

※借方と貸方のそれぞれの合計金額は同じになります

まとめ

今回は、複式簿記と単式簿記の違いについて、決算書との関係、青色申告の特別控除には複式簿記が必要になること、簿記の処理での注意点などについてお伝えしました。日常的に触れている簿記ですが、決算書類の作成や納税の負担を軽くするためには複式簿記が大切なものだということが分かります。

会計ソフトが普及し取り組みやすくなったとはいえ、簿記についての知識を深めることは、正確な決算書類の作成につなげるためにも必要なものです。業務の中で理解できないことがあれば、会計事務所などにも相談しながら進めていきましょう。

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

監修 税理士 川口 拓哉

著者

税理士(近畿税理士会)。2017年の税理士試験で官報合格。個人の税金から法人の税金までの幅広い税目について知識と実務経験を有する。川口拓哉税理士事務所所属。

川口拓哉税理士事務所