簿記を知らないと会計ソフトは使えない? 実務で必要な簿記知識とは

簿記を知らないと会計ソフトは使えない? 実務で必要な簿記知識とは

会計ソフトが本格的に普及し始めて約10年。経理に関する知識がない人でもある程度の会計処理を行うことができるようになりました。しかし、会計ソフトで怖いのは「間違っていてもなんとなく形になってしまうこと」です。そこに気づくためには、やはりソフトを使う人が正しい会計知識をもっていることが必要です。今回はその基礎となる簿記について触れていきます。

簿記とは

簿記とは、企業が行うさまざまな取引(商品の売買や決済、融資や返済、出資など)について記録するための技術です。その歴史は古く、14世紀から15世紀にかけて成立し、ヨーロッパを中心に普及しました。

和訳された「簿記」という名称の由来には諸説あります。帳簿記録の略称、英単語(book-keeping)が省略されてボキといわれるようになったなど、雑学として知っておいても良いでしょう。

簿記の種類

簿記には、単式簿記と複式簿記の二種類があります。

単式簿記

現金や預金など、1つの項目に情報を絞って記録する方法です。
お小遣い帳や家計簿は単式簿記です。実際の業務においては補助的な資料として現金出納帳や売上帳といった資料の作成に活用されています。

複式簿記

すべての取引について、2つの側面を同時に記録するための技術です。
現代において簿記という場合には、基本的にこの複式簿記のことを指します。
複式簿記では、取引に関わる勘定科目(かんじょうかもく)を「資産」「負債」「資本(純資産)」「収益」「費用」に分類し、各取引においてどの勘定科目がどのように増減しているのかを記録していきます。

簿記の5要素

実際の記録では仕訳(しわけ)という方法が用いられます。また簿記の専門用語として借方(かりかた)と貸方(かしかた)という言葉があります。左に記載されるのが借方、右に記載されるのが貸方です。

事例:
・売上が10,000円あり、代金を現金で受け取った
売上(収益)と現金(資産)の増加

 借方金額貸方金額
現金10,000売上10,000

・商品を6,000円で仕入れ、代金は掛けとした
仕入(費用)と買掛金(負債)の増加

 借方金額貸方金額
仕入6,000買掛金6,000

・上記の掛けのうち4,000円を預金から振り込んだ
買掛金(負債)と預金(資産)の減少

 借方金額貸方金額
買掛金4,000預金4,000

・借入金のうち3,000円を預金から返済した 
借入金(負債)と預金(資産)の減少

 借方金額貸方金額
借入金3,000預金3,000
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経理業務の流れ

(1)仕訳を切る :各取引について複式簿記の方法に従って仕訳
(2)元帳に転記 :勘定科目ごとに増減を記載
(3)試算表を作成:簡易決算書として作成
(4)決算修正  :最終的な決算を組む際には特定の調整を行い、決算書作成

手書きで会計処理をする場合、(1)~(4)まですべて人力で行う必要があります。作業は非常に煩雑で、かつ転記ミスも頻繁に発生します。
会計ソフトを使用することで、(1)を行えば(2)と(3)は自動的にソフトが行ってくれます。会計ソフトの普及は、複式簿記という技術を使いこなすためのハードルを、本当に大きく引き下げました。しかし、(1)の仕訳段階が誤っていれば、その後の流れもすべて間違っているのは当然です。

つまり、会計ソフトを正しく使いこなせるためには(1)の段階「取引について仕訳を切れるようになること」が一番重要なのです。「この取引はどういう仕訳になるのか」ということについて適切に判断できるようになれば、経理担当者として相当な能力を手に入れたと考えられます。

また、会計ソフトで自動化されていますが、一度は体系的に(1)~(4)までの流れを学んでおくと、簿記全体の流れがよく把握できるようになります。体系的な勉強をする場合には、日商簿記などの資格試験に挑戦をするのが一般的です。

また業種に特化した簿記(工業、建設業、銀行など)も存在します。勤務している企業の業態などに応じて、学ぶべき簿記の種類も変わってきます。

目的意識をもつこと

上述の通り、簿記の勉強において最も重要なのは「仕訳の切り方を学ぶこと」です。ただし、それはあくまでも手続き論であり、最終的な目標を忘れてはいけません。

会計の最終的な目的は期間損益計算、つまり一定期間の利益を計算することです。経理担当者が日常的に仕訳を切る行為は、最終的には利益計算のために行っていることであり、その利益の数字は多くの利害関係者(経営者、投資家、金融機関、税務署など)に多大なる影響を与えます。

経理担当者はそのことを常に意識し、自分が行っている経理処理が多くの関係者に影響を与えることをしっかりと認識する必要があります。

まとめ

簿記とは企業が行う取引を記録するための技術であり、一般的には取引の二面性に着目した複式簿記のことを示します。上述の通り、会計ソフトの普及により、決算書作成までの手間は大きく削減されましたが、経理担当者は「取引を仕訳で処理すること」に慣れることで、間違いを減らし大きなスキルアップにつながるでしょう。
最終的な目的は利益の計算であり、日常的な処理が多くの利害関係者に影響を及ぼすことを経理担当者は心得ておく必要があります。

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。