【2022年度税制改正】経理担当者必見!押さえておきたい8つのポイント

【2022年度税制改正】経理担当者必見!押さえておきたい8つのポイント

2022年度(令和4年度)の税制改正の大綱として、電子帳簿保存法やインボイス制度の見直しなどに加えて、国の経済対策に関わる税制もいくつか盛り込まれています。賃上げや地方拠点強化、5G投資の促進などがポイントです。税制改正は毎年行われており、中には実務に関係する内容もありますので、経理担当者は最新情報をチェックしておきましょう。

なお、電子帳簿保存法とインボイス制度については以下の記事で詳しくご紹介していますので、併せてご覧ください。
経理プラス:【2022年度税制改正】電子帳簿保存法とインボイス制度に関わる改正内容
無料ダウンロード:電子帳簿保存法とは?対象書類や遵守すべき保存要件を解説

賃上げ税制(現行制度の改組)

はじめに、賃上げ促進税制の見直しについて確認していきましょう。現行は新規雇用者給与等支給額の一定額の増加が税額控除の要件でしたが、改正後は継続雇用者給与等支給額の一定額の増加に変更されます。

ここでポイントとなるのは、対象要件が「継続雇用者」であるという点です。増加額は大企業と中小企業で要件が異なりますが、以下のように大企業で最大30%、中小企業で最大40%の税額控除が適用されます。また、適用期間は令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始する事業年度となります。

大企業の場合

改正前改正後
適用要件新規雇用者給与等支給額が前年度より2%以上増加・継続雇用者給与支給額(※1)が前年度より3%増加

・一定の大企業(資本金等が10億円以上かつ常時使用従業員1,000人以上)は従業員に還元、取引先に配慮を行うことを宣言し公表について経済産業省大臣に届け出が必要
税額控除額
(上乗なし)
控除対象の新規雇用者給与等支給額×15%控除対象の雇用者給与等支給増加額×15%(基本)
税額控除額
(上乗あり)
・(要件)教育訓練費が前年度より20%以上増加によって…
→控除対象の新規雇用者等支給額×20%
・(要件)継続雇用者の給与総額が前年度より4%以上増額によって…
→控除対象の雇用者給与支給増加額×25%(基本+上乗せ10%)

・(要件)教育訓練費が前年度より20%以上増加(※2)によって…
→控除対象の雇用者等支給増加額×30%(基本+上乗せ10%+上乗せ5%)(※3)
税額控除限度額
(上限)
法人税額×20%変更なし(左記のまま)

中小企業の場合

改正前改正後
適用要件(要件)雇用者給与等支給額が前年度より1.5%以上増加変更なし(左記の要件は継続)
税額控除額
(上乗なし)
雇用者給与等支給額の前年度比較増加額×15%雇用者給与等支給増加額の前年度比較増加額×15%(基本)
税額控除額
(上乗あり)
・(要件①)雇用者給与等支給額が前年度より2.5%以上増加

・(要件②)次のA・Bのいずれかを満たす(※4)
A:教育訓練費の前年度捕獲増加率10%以上
B:中小企業等経営強化税制の経営力向上が証明される

→(要件①②を満たすことによって)雇用者等支給額の前年比較増加額×25%
・(要件)雇用者給与等支給額が前年度より2.5%以上増額によって…
→雇用者給与支給の前年比較増加額×30%(基本+上乗せ15%)

・(要件)教育訓練費が前年度より10%以上増加(※2)によって…
→雇用者等支給増加額の前年比較増加額×40% (基本+上乗せ15%+上乗せ10%)(※4)
税額控除限度額
(上限)
法人税額×20%変更なし(左記のまま)

※1:前年度から全ての月で給料などの支給がある継続雇用者に対する支給額を指します。
※2:教育訓練費の明細書の保存が必要です。
※3:継続雇用者の給与総額の上乗せ措置(+10%)の適用を受けない場合は20%になります。
※4:雇用者給与等支給額の上乗せ措置(+15%)の適用を受けない場合は、25%になります

地方拠点強化税制の拡充

地方拠点強化税制が従来よりも拡充されます。以前から国は東京一極集中を避けるべく、企業が地方に拠点を移すことを推進してきていました。昨今はオンラインを活用したテレワークが定着しつつあることもあり、さらに企業の地方移転を促進するため、地方拠点強化税制の見直しと2年間延長が次のように実施されることになりました。

改正後の内容
特定業務施設特定業務施設の範囲に「情報サービス事業部門のために使用する事務所」を追加
常時雇用する従業員・特定業務に従事する常時雇用の従業員が5人以上(中小企業は2人以上)

・増加させる特定業務に従事する常時雇用する従業員が5人以上(中小企業は2人以上)

※上記の要件について「中小企業は1人以上」に緩和
対象資産中小企業以外の法人の取得価額要件を2,500万円に引き上げ
認定期限・適用期限は令和6年3月31日まで2年延長

・事業のように供する期限を認定日の翌日以後「3年」を経過するまでに変更

上記のほか、雇用促進税でも一部内容が改正されています。主な改正ポイントは次のとおりです。

改正後の内容
適用要件適用年度中の特定業務施設の雇用者増加数(有期雇用
又はパートの新規雇用者を除く)が2人以上の要件を廃止
対象雇用者認定日以後は特定業務施設「以外」の施設で新たに雇用された雇用者
認定期限適用期限は令和6年3月31日まで2年延長
雇用促進計画の提出期限従来の2ケ月内→3ケ月以内に変更

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5G投資促進税制の見直し・延長

さらに5G投資促進税制の一部見直しや対象期間の延長が行われます。5Gはさまざまな産業で活用することができるため、次世代インフラとして期待されているものです。対象要件の追加や税額控除率の見直しなどがポイントです。なお、適用期間は令和7年3月31日まで3年間延長されます。

改正後の内容
適用要件一部の要件を廃止し、5G高度特定基地局を追加
対象資産【特定高度情報通信用認定等設備】
・全国5Gとローカル5Gの補助金等の交付を受けたものを除外

・ローカル5Gについて先進的なデジタル化の取り組みであるものに限定

【周波数の電波を使用する無線設備】
3.6GHz超4.1GHz以下又は4.5GHz超4.6GHz以下の周波
数、27GHz超28.2GHz以下又は29.1GHz超29.5GHz以下の周波数の電波を使用する無線設備について、マルチベンダー構成、スタンドアロン方式に限定
税額控除率税額控除率
・令和4年4月1日から令和5年3月31日・・・15%
・令和5年4月1日から令和6年3月31日・・・9%
・令和6年4月1日から令和7年3月31日・・・3%

オープンイノベーション促進税制の見直し・延長

従来からのオープンイノベーション促進税制は、一部見直しと適用期間が2年延長されます。スタートアップ企業と既存企業の協業によるオープンイノベーションは近年さまざまな業種で取り扱われています。さらなる促進のため、次のように改正される予定です。

改正後の内容
出資行為の要件・取得株式の保有見込み期間の下限が5年→3年に短縮

・1件当たりの出資金額の下限について大企業は1億円、中小企業は1千万円

・資本金増加を伴う現金出資、純投資は対象外
出資先出資先のスタートアップ企業について売上に占める研究開発費の額の割合が、10%以上の赤字会社では15年未満
適用期限令和6年3月31日まで延長

少額減価償却資産の損金算入見直し

少額の減価償却資産の損金算入について、貸付の用に供したもの(主要な事業として行われるものを除く)が除外されます。また、中小企業者等の少額償却資産の取得価額の損金算入の特例が2年延長されます。

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グループ通算制度の見直し

グループ通算制度について一部見直しがあります。改正後の主な内容は次のとおりです。なお、通算税制の離脱時の見直しは、令和4年4月1日以降開始の事業年度から適用となります。

  • 離脱時の時価評価が帳簿価額1,000万円未満の営業権が時価評価となる。
  • 投資簿価修正が通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人が、その子法人株式に関わる資産調整勘定等対応金額について計算した明細書を添付し、なおかつ書類を保存することで通算子法人の簿価純資産価額に資産調整勘定等対応金額の加算が可能になる。
  • 利子税の額相当する金額とし各通算法人間で授受される金額は通算税効果額から除外となる。
  • 支配関係5年継続要件の特例について適用除外の範囲が変更となる。
  • 認定事業適応法人の欠損金に損金算入の特例見直し。
  • 外国税額控除の進行年度調整措置について、一定の要件に税務当局は調査結果を説明するなどの見直し。

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法人課税の制度の延長

次に挙げる法人課税の適用期限がそれぞれ延長されます。会計に直接関係するものもありますので、確認しておきたい項目です。

法人課税の制度延長期間
交際費等の損金不算入及び接待飲食費にかかわる損金算入の特例令和6年3月31日まで2年延長
国家戦略特別区域で機械等を取得したときの特別償却または税額控除
国家戦略総合特別区域で機械等を取得したときの特別償却または税額控除
海外投資等損失準備金制度

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法人版事業継承税制の延長

同じく延長となる制度に、法人版事業継承税制が加わります。同族経営の会社がスムーズに継承できることを目的とした制度ですが、非上場会式等に関わる贈与税や相続税の納税を猶予できたり、減免できたりする特例措置があります。

特例を受けるには事前の計画策定書などを5年以内に提出することが必要です。提出期限は令和6年3月31日まで1年間延長されます。提出期限が1年延長されたことがポイントであり、そもそもの適用期限は平成30年1月1日から令和9年12月31日までと変わりません。

制度が新設された時期は申請数も多くありましたが、年々減少しています。適用期限については、今後も延長の見込みはないと予想されますので、事業継承の予定がある会社は速やかに計画したほうが良いでしょう。

食料システム確立に向けた投資促進税制の創設

今回の税制大綱で創設された制度に「食料システム確立に向けた投資促進税制」があります。正式な制度名称はこれからですが、離農が進む中、農林水産業を持続可能にするための食料システムの確立に向けて投資を促進するものです。肥料や農薬など環境負荷を削減した生産体制をつくることがポイントです。

環境負荷を軽減するために必要な資材や設備に対しての税制支援をするわけですが、農林漁業者だけではなくメーカー等においても税制支援が受けられる予定です。

まとめ

今回は、令和4年度(2022年度)の税制改正について、賃上げに関わる税額控除の見直しや拡充、地方拠点強化、5G投資などの税額控除、交際費など既存の特例措置の期限延長、新たに創設された食料システム投資促進税などについて解説しました。

コロナ禍を見据えた、景気回復や経済成長のためにシフトされた税制改正の印象があります。中小企業にとって、賃上げは容易に決定できないかもしれません。ただ、雇用や経済全体の循環を考える上でも、控除制度を活用しながら最適な選択肢を行うことが大切になります。ぜひ今回の改正を参考にしながら計画してみてはいかがでしょうか。

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この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

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大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。