電子帳簿保存法の対象書類は?保存期間や手続き方法を分かりやすく解説
電子帳簿保存法(電帳法)は、1998年7月に制定された法律で、国税関係帳簿書類の全部または一部について電子データによる保存を認めています。 その後、2005年3月に一部が改正され、紙媒体の書類をスキャンして電子保存したものも認められることになりました。2016年にはスマートフォンやデジカメで撮影し、データ保存が可能となり、さらに2022年(令和4年)1月1日から施行の改正内容によって、電子化の要件が緩和されることや電子取引データについては電子保存義務化(2022年1月1日以降)などがはじまります。特に電子保存義務化は全ての企業が対象となりますので内容を押さえておきましょう。
今回は電子帳簿保存法に関して、次の3点についてお話ししますので、ぜひ参考にしてみてください。
- この法律は何を定めているのか?
- どういった書類が電子保存できるのか?
- 電子保存するためにはどんな手続を踏む必要があるか?
2020年12月に発表された令和3年度(2021年度)の電子帳簿保存法に関する税制改正の情報につきましては下記をご参照ください。
経理プラス:【令和3年度税制改正/後編】電子帳簿保存法に関わる税制改正ポイント
無料ダウンロード:電子帳簿保存法とは?対象書類や遵守すべき保存要件を解説
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電子保存法が定めていること
電子帳簿保存法は大きく次のことを定めています。
- 国税関係帳簿書類の電子保存をすること
- 国税関係帳簿書類をスキャナで読み取って電子保存すること
1つ目は、ある書類について、作成の最初の記録段階から一貫してPCで作成した場合の書類の保存方法です。
2つ目は、既に紙媒体のものをスキャナで読み取る保存方法です。
このスキャナは、もともとは原稿台付きのスキャナのみを指していましたが、2017年にはスキャナの定義が緩和され、デジカメやスマートフォンで撮影したデータも認められるようになりました。
ただし、スキャナ保存では原則としてタイムスタンプの付与が必要になります。
タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在していたこと、それ以降改ざんされていないことを証明するものです。電子データは後に改ざんされるリスクがあるため、タイムスタンプを付与することによって、改ざんのリスクを無くすこと、また、改ざんされていないことを確実に証明することができます。
経理プラス:電子帳簿保存法のスキャナ保存要件となるタイムスタンプとは?
電子帳簿保存法でデータ保存できる帳簿・書類とは?
国税関係帳簿書類の電子保存は「帳簿」、「決算関係書類」、「その他の証憑類」の3種別でそれぞれ制定され、どのように保存ができるかどうかが定められています。 その内容をまとめると以下の通りとなります。
種別 | 主な文書 | 区分 | 電子保存 | スキャナ保存 (紙→データ) |
---|---|---|---|---|
帳簿 | 総勘定元帳 仕訳帳 現金出納帳 売掛金・買掛金元帳固定資産台帳 売上・仕入帳 等 | - | ○ | ☓ (書面保存) |
決算関係書類 | 棚卸表 貸借対照表 損益計算書 その他決算に関して作成した書類 | - | ○ | ☓ (書面保存) |
その他の証憑類 | 契約書や領収書 上記の写し 等 | 発行 | ○ | ○ |
受領 | - | |||
見積書 請求書 注文書 契約の申込書 納品書 検収書 等 | 発行 | ○ | ○ | |
受領 | - |
電子帳簿保存法の改正内容について
2015年度(平成27年度)以降、スキャナ保存制度の要件が緩和され、契約書や領収書は3万円未満という金額上限はなくなりました。そして、2018年の改正では、スマートフォンによる撮影でも保存が可能になり、原本の保存は不要になっています。
また、データ内容については白黒でも可、大きさについての指定も不要になりました。2020年10月1日以降は、タイムスタンプの付与が緩和され、請求書等の発行者側で付与された場合は受領者側のタイムスタンプは不要になりました。
さらに2022年1月1日以降の緩和要件では、3日以内だったタイムスタンプの付与期間が最長2カ月以内となります。さらに不正防止の策として電子データの修正や削除の履歴が残せるシステムであればタイムスタンプ付与は不要となります。
電子データも保存期間は7年
なお、保存する期間ですが、税務上は帳簿書類の7年間の保管が求められていますので、電子データについても同様に7年間の保存が必要となります。ただし、電子データ保存の記録を紙で出力し保存している場合、電子データの保存は不要です。
電子帳簿保存法に必要な手続きは?
原則として、2021年中に、電子帳簿保存法の適用を受ける場合は、事前承認を税務署長から得る必要がありますが、2022年1月1日以降分より事前承認制度は廃止されます。
電子帳簿保存法に対応できるシステムやスキャナ等を準備し、2022年1月1日以降に電子化(スキャン)した時点から電子保存が可能になります。
参考:国税庁 電子帳簿保存法関係
JIIMAの認証制度について
電子帳簿保存法が施行されてから、電子データを活用する企業は増加しています。電子データとして保存するスキャナ保存では、一定の要件において認められるわけですが、要件が十分ではない会計ソフト等を誤って利用するケースが起こらないように、JIIMAという機関がソフトウェアの仕様をチェックして、要件を満たせると判断した製品を認証する制度が行われています。この認証制度は、企業がより安心して製品を選択する上で重要な役割を果たすものといえるでしょう。
JIIMAの認証制度についてはこちらの記事で紹介をしていますので、併せてご覧ください。
経理プラス:目指せ!電子帳簿保存法対応で効率化!成功のカギは「JIIMA認証」
2022年1月1日以降の変更点
また、以下が主な変更点となりますので、ぜひ覚えておきましょう。
事前承認不要
法改正により、電子帳簿保存の「承認申請書」及び「添付書類」の提出が不要となりました。
電子帳簿が2つの区分に分けられる
総勘定元帳等につき、「訂正・削除履歴の確保」「相互関連性の確保」「検索機能の確保」等の要件を満たした電子データで記録、保存している場合、「優良な電子帳簿」とされました。
一方、「マニュアルの備付」や「データのダウンロード機能」などの最低限の要件を満たす電子帳簿についても「その他の電子帳簿」として、電子データによる保存が可能となりました。
なお、国税関係帳簿の全てが優良な電子帳簿の要件を満たし、予め税務署長に一定の届出をしている場合、過少申告加算税が賦課されるとき、軽減措置が受けられます。
検索機能の要件変更
電子データとして保存した帳簿については、以下の検索機能を備える必要があります。
- 取引年月日、取引金額、取引先で検索できること
- 日付または金額については範囲を指定して検索できること
- 2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できること
税務職員の質問検査権に基づく電子データのダウンロードの求めに応じることとする場合は、②③の要件は不要、前々事業年度の売上高が1,000万円以下で電子データのダウンロードの求めに応じることとする場合、検索要件の全てが不要となりました。
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電子帳簿保存法と共に検討すべきは「経費精算システム」
ここまで手続きや法要件について見てきましたが、電子帳簿保存法への対応には法要件を満たすシステムの導入が不可欠です。
必要な機能を持つシステムを使用することで電子帳簿保存法に沿った運用を行っていくことになります。
ひとくちに「システム」と言いましたが、中でも、法要件に対応する「クラウド型経費精算システム」を導入し、電子帳簿保存法対応の運用を始めるという企業が増えています。
経理プラス:【インタビュー】電子帳簿保存法に対応!ファーストキッチン株式会社の経費業務効率化の取り組みとは
クラウド型経費精算システムで電子帳簿保存法に対応するメリットは以下のようなことが挙げられます。
クラウド型経費精算システムは、クラウドシステム上で経費や支払の申請~承認~経理処理のワークフローを一括で管理でき、自宅や外出先から精算業務を可能にするシステムです。
請求書や領収書をデータとしてアップロードし、システム上で回覧、そのまま保存するためのファイリング等の業務が不要になり、精算業務を効率します。
また、領収書や請求書のデータをアップロードする際には書かれた金額や日付などの情報を読み取って文字に起こしたり、会計ソフトへの手入力を削減する機能など、電子保存だけでなく、精算業務を助ける様々な機能があります。
電子帳簿保存法への対応検討するのであれば、合わせて経費精算システムを導入することをお勧めします。
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最後に
以上が電子帳簿保存法の大まかな内容となります。
細かな要件が多く、適用がしにくい印象を持たれたかもしれません。
しかし、紙ベースで無くなると単純なスペースの確保による保管コストの削減など、メリットも多いものとなります。ぜひ1度検討されてみてはいかがでしょうか。
今後、電子帳簿保存法に対応していく場合、クラウドサービスの活用がポイントになってきます。電子帳簿保存法に対応できる経費精算システムは多くありますが、株式会社ラクスが提供する「楽楽精算」は、これらの要件を満たす機能を揃えた経費精算システムです。
電子帳簿保存法を検討する際は、経費精算システムも併せて検討されてみてはいかがでしょうか。
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。
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※:デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2022年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/)より
この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。