年末調整の失敗事例集−押さえておきたい重要ポイント—

年末調整の作業はしっかり進んでいますか?
年末調整が予定通り進まなかった例を見てみると、ボトルネックとなる項目は限られた一部であるケースがほとんどです。
本来ならば、資料が揃い、毎年と同じ処理を行い、予定通りスムーズに終わるはずなのですが、実際には全体のうち限られた一部の項目のせいで年末調整全体に悪影響が出てしまいスケジュール通り完了することができなくなってしまうわけです。

この記事では失敗しやすい項目をピックアップし、ややテクニカルなものも含まれますが、その項目を解決するための方法をお伝えしようと思います。

記入漏れ、控除漏れが多い項目 
—16歳未満の扶養親族、配偶者特別控除—

ここでは、「記入漏れによる控除漏れが起こりやすいポイント」を2点お伝えします。
生命保険料控除のように、控除証明書さえ出してくれれば正確に計算できる項目ではなく、記載が漏れることにより経理担当者の方で控除適用漏れが起きることにより発生する失敗です。

16歳未満の扶養親族の記入漏れ

扶養控除申告書一番下の16歳未満の子の欄の記入漏れがないか確認してください。
16歳未満の子は、所得税の計算上は扶養親族から外れることになりましたが、住民税の計算上は引き続き控除の対象となっています。記入箇所が他の扶養親族と別になり、書き漏れてしまうことが多いため注意が必要です。

配偶者特別控除の適用漏れ

配偶者の年収が103万円を超えた場合も、「配偶者特別控除」の対象となる可能性がありますので確認してください。
「配偶者控除」として38万円満額を控除できるのは配偶者の給与収入が103万円以下の場合ですが、年調対象者の合計所得が1,000万円以下である場合には、配偶者の給与収入が103万円を超えた場合にも141万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けることができます。103万円を超えてしまったことに気を取られ、配偶者特別控除申告書の記載が漏れてしまうことがありますので注意が必要です。

【参考】
合計所得金額1,000万円を超えるかどうかの判断は、給与所得だと年収12,315,790円を超えるかどうかで行います。

 

年末調整の資料の提出が遅い人のせいで年末調整を完了することができない

全社員の年末調整が終わらなければ、年末調整を完結させることはできません。
収集資料さえ集まったならば、計算自体は機械的に完了させることができるのですが、資料がなかなか出てこない人のせいで年末調整のスケジュールが遅れてしまう場合があります。
こちらもよくあるケースごとに対応方法をお伝えします。

控除証明書が揃わないため、提出が遅れる人への対策

控除証明書が揃わない場合、すぐ再取得をしてもらうか、確定申告し、ご自身で控除してもらいましょう。
控除証明書を紛失した社員がいたら、再発行の手続きは早めにしてもらって下さい。いずれの控除証明書を発行してもらう場合にも、問い合わせが集中しているため時間を要する場合があります。
また、あまり知られていませんが、国民健康保険の領収書、国民年金の控除証明書をなくしてしまい書類が提出できない人がいる場合は、国民健康保険は各市町村、国民年金は年金事務所に本人の身分証明書と年金手帳などの必要資料を持って直接取りに行くと、その場で発行してくれます。

社内で定めた期限に間に合わない場合には、ご本人様で確定申告してもらうよう伝え、控除なしで年末調整を完了させる方法も検討して下さい。

扶養控除申告書、保険料申告書の提出すらしない人への対策

本来であれば扶養控除申告書の提出がないため年末調整の対象外となりますが、まずは形式だけでも年末調整を行い、あとで資料を収集するということであれば下記の3点さえ分かれば年末調整を行うことはできます。

・氏名
・住所
・生年月日

内容よりもとにかく終わらさなければならないという状況になってしまった場合には、上記の3点だけ確認し年末調整を行い、正確な還付額の計算はご自身に確定申告で行って頂くという方法も検討することもできます。

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年末調整の改正部分の適用方法を間違ってしまう

年末調整業務は、近年ほぼ毎年改正が行われています。
経理担当者の方は毎年年末調整業務を行っていますので例年通りの部分はスムーズに進められますが、適用を誤ってしまった箇所、時間をかけてしまった箇所は、改正されたごく一部の項目であることが多いです。
過去5年の年末調整業務に関する改正内容をまとめましたので確認しておきましょう!

平成26年分の改正

・生命保険料控除の対象範囲拡大
 この改正については、特に対応は必要ありません。
 理由は、社員から提出された控除証明書に従うだけだからです。
 今回の平成26年分の年末調整で変更となった大きな事項はありません。

平成25年分の改正

・復興特別所得税の上乗せ
 年税額は、従来の所得税額に102.1%を乗じて計算されるようになりました。
・給与所得控除の上限を245万円に設定
 給与収入1,500万円以上の人が対象となります。

平成24年分の改正

・マイカー、自転車通勤者の非課税通勤手当の限度額が引き下げ
 公共交通機関の運賃以下だったものが、距離比例分までしか認められなくなりました。
・生命保険料控除は、「介護医療分」が新設され、控除限度額は12万円に引き上げ
 「一般分」、「個人年金分」に新旧契約の区分が設けられ計算過程が増えました。

平成23年分の改正

・16歳未満の扶養控除38万円が除外された。
 子供手当の支給に伴う改正です。扶養控除申告書の記載に注意して下さい。
・16歳以上19歳未満の扶養控除上乗せ部分25万円が廃止された。
 こちらも上記と同じ理由によるものです。

平成22年分の改正

なし

【参考】
●平成27年分の改正項目
・所得税の最高税率が40%から45%に引き上げ
 課税所得が4000万円以上の人が対象となります。

 

再年末調整必要となってしまった。

年末調整をスケジュールに通りに進んで還付も完了したあと、控除の内容に変更が出てしまい再計算が必要となる場合があります。多いのは、配偶者の収入が実際には103万円を超えていたため配偶者控除の修正が必要となった、控除証明書が出てきてしまったケースなどです。
経理担当者の方からすると再年調は精神的なダメージを大きく感じますが、下の区分に従って完了させて下さい。

翌年1月31日までに判明した場合

各市町村に提出する給与支払報告書の提出期限は翌年1月31日より前であれば、年末調整を新たな情報で再度実施し、修正前との差額を精算します。その後、他の社員の源泉徴収票と一緒に各市町村に提出して下さい。

給与支払報告書の作成後に判明した場合

給与支払報告書の提出期限を過ぎてしまった場合には、社員自身で確定申告を行って頂くことになります。
会社では対応できない旨を伝えて下さい。

 

以上、気になる点はありませんでしたか?
年末調整作業に着手する前に確認し、実際に作業が終わった後に再確認すると良いですね。

皆様の年末調整業務がスムーズに終わることにご活用頂ければ幸いです。
 

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経費精算システム「楽楽精算」
● 著者
服部 峻介(セブンリッチ会計事務所)

服部 峻介(セブンリッチ会計事務所)

北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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