【税理士監修】売上高営業利益率とは?財務分析で必須の計算式や分析方法を解説
企業会計の大目的は「利益を計算すること」です。計算式でまとめると
「収益 - 費用 = 利益」となりますが、実際の企業分析ではその利益をいくつかの段階に分けて計算します。今回はその中のひとつ「売上高営業利益率」について、その計算方法と意義について確認をします。
売上高営業利益率の計算方法
売上高営業利益率は、次の算式により計算されます。
売上高営業利益率は、この計算式の通り「売上高の中に占める営業利益の割合」を求める指標です。ここで考えなければならないのは「そもそも営業利益とは何か?」ということです。営業利益を計算する際には、売上総利益を求める必要があります。
営業利益の計算手順
売上総利益は「どれだけ付加価値のある商品を販売しているか?」を測るために求められます。小売業であれば「仕入れている商品は顧客に支持されているのか?」、製造業であれば「自社の製造技術がどれくらい評価されているのか?」ということを検討するための指標となります。
商品や製品は、用意すれば売れるというものではありません。顧客に購入してもらうために販売促進や事務管理、広告宣伝などさまざまな過程を経て市場へと流通していきます。このように「商品や製品を生み出すまで(売上粗利益)」と「市場に流すまで(営業利益)」という段階を経て、当社が本業を通じてどれだけの利益を獲得できているのかが計算できます。
つまり、売上高営業利益率とは「当社は本業からどれくらいの利益を得ることができているのか?」を図るための指標といえます。
売上高営業利益率の分析について
どのような経営分析でもいえることですが、基本となるのは同業他社との比較です。自社の業界における平均的な数字を確認し、それと自社を比較することで課題や問題点を把握し、その改善に努めます。
同業他社の情報を集める方法には、公的な情報を活用する方法があります。
(例)日本政策金融公庫 中小企業の経営等に関する調査 小企業の経営指標調査 調査結果
上記リンク先では、業種は規模ごとの平均的な指標が公開されています。実際に自社の指標を計算したら、同業種と比較をすることで有効な分析をすることが可能となるでしょう。
また、実際の分析においては次のような考え方が非常に重要です。
分解する
売上高営業利益率だけではなく、売上高総利益率など他の比率も一緒に比較します。仮に営業利益率が同じだとしても、総利益率が異なるとすれば、そこに自社の課題が見えてきます。
(例1)同業他社と比較すると総利益率は高いが営業利益率は同じ
この場合、商品や製品の価値は認められていますが、それを市場に投入するまでの段階に問題があるのかもしれません。事務体制(顧客管理や債権管理、経理処理など)や広告宣伝などについて無駄がないか、検討をするべきでしょう。
(例2)同業他社と比較すると総利益率は低いが営業利益率は同じ
例1とは逆に、商品や製品の価値があまり認められていないようです。つまり「値付けに失敗している」可能性があります。総利益は事業活動の源泉となる重要な指標です。
また「値付けは経営における最重要事項」という指摘もあります。顧客との単価交渉を見直すとともに、もちろん原価の見直し(製造工程の効率化)も同時に進めるべきです。
自社の経営方針と数字が一致しているか考える
同業他社との比較や自社分析は確かに大切ですが、時には「あえて他社との比較を無視をする」ことも必要です。
(例3)現在は多少の利益は犠牲にしながら市場占有率を高める努力をしている
事業というのは、規模が小さいときの方が利益率は高くなるものです(非常に大きくなれば話は別です)。指標が同業他社と比べて悪いとしても、それが「自社の経営方針」に合致しているのであれば、自信をもってその方向に進むことも必要でしょう。
もちろん、あまりにも指標が悪すぎる場合には立ち止まることも必要です。健康診断のように、現状について客観的に把握することで致命的な大失敗を回避したいものです。
他の分析手法も使ってみる
売上高営業利益率以外にも、有名な分析手法がいくつかあります。
以下の記事を参考にしてみてください。
経理プラス:限界利益とは?固定費と変動費を区別する損益分岐点分析の有用性
経理プラス:財務分析をするうえで押さえておくべき5つのポイントと重要指標
あまり取り入れすぎると大変ですが、利益率だけでなく安全性などの比率も同時に分析していくことで、経営全体の健全性を高めることが可能です。利益率ばかりに気が向いてしまうと、資金管理面などでつまずきがちです。「勘定合って銭足らず」という金言もありますので、特に資金繰りに関する分析は併用することを強くおすすめします。
まとめ
売上高営業利益率は「営業利益 / 売上高 × 100(%)」の計算式で求めることが可能です。これは、企業の本業での利益率を示します。また、売上高営業利益率の分析をする際には、同業他社と比較して分析をするのが一般的です。加えて、自社の経営方針と合致しているか確認をすることが必要となります。
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