テレワーク導入時の経費は課税?非課税?区分を確認しておこう

テレワーク導入時の経費は課税?非課税?区分を確認しておこう

テレワーク導入を検討しているものの、導入のための設備や従業員への手当などをどのように扱えば良いか、不安に感じている企業も多いのではないでしょうか。

今回は、テレワーク導入する場合のパソコン等のハードウエアの課税区分や、手当を支給したときの課税区分について詳しく解説していきます。導入前にきちんと理解しておくことで、スムーズな運用につなげていきましょう。

テレワーク導入で従業員に発生する費用

テレワーク導入により、従業員の仕事場は自宅などになります。オフィスに出社していたときとは異なり、在宅勤務によって下記のようなさまざまな経費が発生すると考えられます。その一例として挙げられるのが、以下のような経費です。

  • 消耗品費
  • 通信費
  • 水道光熱費
  • 机、椅子等の環境整備費
  • レンタルオフィス料金 など

まず、在宅勤務に対応するには自宅でのインターネット環境が必須です。もともとネット環境が整備されている従業員もいますが、整備されていなかった場合はネット回線の契約からパソコン、ルーターなどもあらためて購入しなければなりません。

また、継続的に在宅勤務をすることが想定される場合、仕事用の机や椅子などの備品、ファミリー世帯であれば、リビングの一角を簡易的にブースで仕切るケースもあるでしょう。環境によっては自宅では仕事ができない場合もあり、レンタルオフィスやオープンオフィスなどを契約することも考えられます。

そのほか、オフィス勤務では負担することがなかった電気代、水道代、コピー用紙やインク代などの消耗品費も発生します。テレワークを導入するには、単に「オフィスに出勤しない」ということだけでは解決しない、さまざまな費用があるのです。

経理プラス:テレワーク時の経費対象とは 経理処理方法と注意すべきポイント

テレワーク導入費用の課税区分

企業がテレワーク導入をスムーズに進めるために、従業員が環境を整備し、在宅勤務を維持するための費用として現金支給することがあります。または、企業から従業員に対しパソコンなどのハードウエアを貸与したり現物支給したりすることもあるでしょう。

パソコンやモニターなどのOA機器や机・椅子などの事務用品は、支給か貸与かで課税区分が異なります。

企業側が直接購入従業員側が立替購入し精算
現金支給給与課税
事務用品等の貸付非課税非課税
事務用品等の支給給与課税給与課税

上記の表の通り、あくまで企業側が所有者であり将来的に返却しなければならない「貸与」の場合は「非課税」の扱いとなり、現金支給または現物支給のように「支給」の場合は、「給与課税」の扱いとなります。

企業側としては、「貸与」であることが非課税条件ですから、税務調査などで指摘を受けても証明できるように、管理台帳など明確な資料でまとめておくことが大切です。

中小企業経営強化税制について

一定の要件に該当する設備導入を行った中小企業に対し、税制優遇が受けられる「中小企業経営強化税制」というものがあります。

テレワーク導入を促進するため、デジタル化設備(C類型)が追加されています。優遇内容は、投資額の即時償却または特別控除を受けることが可能です。中小企業庁サイトで詳しく見ることができます。

また、「中小企業経営強化税制」についてこちらの記事でも解説をしております。
経理プラス:経営力向上計画とは?制度の概要とお得な特典

在宅勤務手当の課税区分

テレワーク導入後は、インターネットや電話などの通信費、電気・水道代など、従業員が在宅勤務をするための経費がかかります。このような経費負担を軽減するために、従業員に対して何らかの方法で支給するケースがあるでしょう。

従業員に支給した場合、在宅勤務手当としてまとめて一律支給か、経費を実費精算するかで課税区分が異なります。

在宅勤務手当などで一律支給給与課税
実費精算非課税

実費精算の場合で、インターネットや電話の通信費、電気代、水道代などは業務で使用した分と自宅使用分とを按分し、そのうちの業務分については非課税と認められることとしています。実際には、按分した経費を精算するのは手間がかかる上に、使用分の請求額が届いてからとなるため煩雑になりがちです。

給与課税の対象になるとはいえ、在宅勤務手当として一律支給という方法とどちらが自社に向いているか、しっかりと検討しましょう。

在宅勤務時の通勤手当の課税区分

テレワーク導入によって在宅勤務になると、基本的に毎日オフィスに通勤することはありません。従来通りの勤務で通勤手当が支給される場合は、一定の範囲内で非課税となっていました。では、在宅勤務の場合、通勤手当の支給はどのような課税区分になるでしょうか。

オフィスへ出社する機会は当然減ることになるわけですが、非課税のままかどうかは勤務形態の「実態」に則した判断になります。

勤務地は会社のまま勤務地は自宅
従来通りの通勤手当を支給非課税給与課税
一律で同額の通勤手当を支給経済的に合理的な範囲内で非課税
出社の度に実費精算非課税

実態に則すとは、在宅勤務になったとしても勤務地がオフィスのままで支給される場合は非課税となりますが、リモートワークとして雇用契約を結んでいる場合など、はじめから勤務地が自宅となる場合は給与課税となります。なお、出社の度に実費精算になる場合は、勤務地にかかわらず非課税です。

経理プラス:交通費の課税は大丈夫?通勤手当の課税・非課税の判断方法

在宅勤務の経費精算をスムーズにするには

新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワーク導入は国からも経済業界からも強く勧められているにもかかわらず、一定の割合以上はなかなか進まないのが現状です。その理由のひとつとして、パソコンやインターネット環境を整備するだけでは対応できない業務があることが挙げられます。

たとえば経理部署では、紙ベースの資料作成が多く、管理者などからの押印手続きも少なくありません。請求書の取りまとめから支払い手続き、経費精算など在宅勤務では対応しきれない業務があります。

とはいえ、経理業務は月間でも年間でもある程度は業務スケジュールを立てやすい部署でもあります。そのため、在宅勤務が可能なとき、出社しなければならないときなど、あらかじめ計画を立てることができるでしょう。

その際のポイントは、出社しなければならないときを削減する方法です。従業員が個別に経費精算や通勤費の精算を行うためだけに出社するのは、企業としてもその都度コストがかかりデメリットでしょう。

どうしても出社しなければならない場合を除き、普段はデジタルを活用して在宅勤務を可能にしておくことが、スムーズなテレワーク導入につながります。デジタル活用の例としては、クラウド形式の会計システムや経費精算システムの導入などが考えられます。セキュリティにも対応し、オンラインで経理業務を進めることが可能です。経費精算など、日常的に頻出する業務を在宅で対応できることは、在宅勤務を継続するためにとても有効です。

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まとめ

今回は、テレワーク導入時の費用や在宅勤務手当、通勤手当などの課税区分についてご紹介しました。ハードウエアや事務用品については、支給か貸与かがポイントになります。また、勤務手当では、勤務地がどこになるかがポイントです。自社が運用する場合にどのようなシステムが良いか、事前にシミュレーションしながら、効率的に活用できるテレワーク導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

渡部さんお写真w240h240

大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。