交通費の課税は大丈夫?通勤手当の課税・非課税の判断方法

業務上で発生する交通費は大きく次の2種類に分けられます。

  • 役員や従業員の「通勤手当」
  • 出張や移動などの「旅費交通費」

いずれも会社の経費となりますが、それぞれ課税上の注意点が存在します。ここでは交通費の中でも「通勤手当」の非課税限度額や社会保険料などについて詳しく解説します。

 

通勤手当は非課税?

よく交通費については、「通勤手当をいくら支給すればよいですか?」という質問が聞かれます。通勤手当は、あくまで会社が定める任意の金額で支給することが可能です。ただし従業員に支給される手当は、基本的に従業員個人に対する所得税の課税対象です。例えば住居手当や残業手当、扶養手当など、全ての手当が課税対象となります。

ところが通勤手当の場合、課税方法が他の手当と異なります。通勤手当は一定基準の範囲内であれば、所得税は非課税です。その理由は、通勤手当の性質が会社に出勤するための単なる実費の補てんであり、所得に馴染まないからです。

 

非課税となる通勤手当とは

通勤手当であれば、交通費がいくらでも非課税になるわけではありません。非課税となる金額は、国税庁の通達で、以下のように分けられています。

  1. 交通機関で通勤する人
  2. 車両や自転車などの交通用具で通勤する人
  3. 定期乗車券で通勤する人
  4. 交通機関+交通用具を利用する人

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1.交通機関で通勤する人

運賃全額が非課税となりますが、1ヶ月15万円が上限です。ただし運賃について、国税庁の通達では「通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路及び方法で通勤した場合」としています。例えば、グリーン車の利用料金は交通費とはいえ非課税となりません。

2.車両や自転車などの交通用具で通勤する人

車やバイク、原付、自転車は、通勤距離で非課税限度額が定められます。車であっても自転車であっても、非課税限度額が変わりません。そのため、不公平感はあるかも知れませんが、経理側としては覚えやすくてありがたい規定です。なお、平成28年1月1日以後適用分の例では次のように定められています。

  • 2㎞未満(片道の通勤距離。以下同じ) ―全額課税
  • 2㎞以上10㎞未満 ―4,200円
  • 10㎞以上15㎞未満 ―7,100円
  • 55㎞以上 ―31,600円

適用する際は、必ず国税庁のホームページ等で最新の非課税限度額を確認しましょう。

(参考)国税庁 通勤手当の非課税限度額の引上げについて

車の場合、2点補足があります。
1点目は駐車場代です。会社に駐車場がない場合、近隣の月極駐車場を利用することがあるでしょう。この駐車場料金を会社が負担するかどうかは、会社の自由です。ただし負担する場合は全額課税となりますので、非課税の通勤手当に含めることはできません。
2点目は有料道路を使用する場合です。通勤途中に有料道路を使用する際は、距離に応じた非課税限度額に有料道路の通行料金を合計した金額が非課税限度額となります。例えば片道の通勤距離が60㎞で、うち30㎞が有料道路(通行料が5,000円)の場合、

31,600円(55km以上の非課税限度額)+5,000円=36,600円

となり、36,600円が非課税限度額です。ただし、1ヶ月で15万円が上限となります。

3.定期乗車券で通勤する人

通勤に必要な乗車区間分の定期券であれば、全額非課税となります。ただし、1ヶ月15万円が上限です。

4.交通機関+交通用具を利用する人

自宅から2㎞以上離れた最寄り駅まで自転車で行き、電車に乗る場合などが該当します。非課税限度額は前述した1・2の合計で、1ヶ月15万円が上限です。

 

課税通勤手当は年末調整で給与に含める

課税通勤手当を支給した場合は所得税を課税するため、年末調整で給与に含める必要があります。
給与計算ソフトを使用して課税・非課税を分離していると自動計算してくれるため、交通費の計算に間違いは起きにくいでしょう。ただし、もし手書きの給与明細書や社内で作成したエクセルなどで対応している場合は注意が必要です。毎月の給与明細の上で、通勤手当の課税と非課税を確実に分けて記録しておきましょう。

 

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通勤手当の消費税は?

消費税の納税義務者である会社の場合、通勤手当が課税仕入となるか、非課税仕入となるかを迷うかもしれません。
しかし、通勤手当の所得税が非課税となる理由は実費補てんです。所得の性質に馴染まないので、消費税には関係ありません。そのため、基本的に通勤手当は全額課税仕入れとなります。税額控除の区分は、その従業員が課税売上にのみ貢献している場合を除き、共通課税仕入で処理しましょう。

 

通勤手当の具体例

それでは、いくつか具体例を挙げながら交通費に伴う通勤手当について見ていきましょう。

<パターン①:徒歩+電車>

  • 条件
     自宅~最寄りのA駅:徒歩
     A駅~B駅:電車(1月の定期券代10,000円)
     B駅~会社:徒歩
     通勤手当10,000円支給
  • 課税・非課税の別
     課税通勤手当:0円
     非課税通勤手当:10,000円
  • 仕訳
     借方金額貸方金額
    給与10,000円現金預金10,000円

<パターン②:車+有料道路あり>

  • 条件
     自宅~会社:車30㎞(非課税限度額は、18,700円)
     有料道路:1,000円
     通勤手当:20,000円支給
  • 課税・非課税の別
     課税通勤手当:300円
     非課税通勤手当:19,700円
  • 仕訳
     借方金額貸方金額
    給与20,000円現金預金20,000円

<パターン③:2㎞未満>

  • 条件
     自宅~会社:車1.8㎞
     通勤手当:2,000円
  • 課税・非課税の別
     課税通勤手当:2,000円
     非課税通勤手当:0円
  • 仕訳
     借方金額貸方金額
    給与2,000円現金預金2,000円

仕訳で非課税・課税に分ける必要はありません。エクセルで給与計算を行う会社の場合は、補助科目で課税・非課税を分けておくと、年末調整の際に残高試算表で付け合せがしやすくなるでしょう。

 

社会保険料の計算には通勤手当が含まれる

交通費について通勤手当を支給する場合に迷いやすいのが社会保険料の算定です。多くの会社が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、社会保険料は従業員ごとの「標準報酬月額」に基づき、健康保険料は都道府県ごとに定められる保険料率で、さらに厚生年金保険料は全国一律の保険料率を掛けて計算されます。実際には都道府県ごとの保険料一覧表があるため、難しい計算は不要です。

迷いやすいのは、この「標準報酬月額」を算定する算定基礎届の手続きの際に非課税の通勤手当を含めるかどうかです。結論から言えば、これは含めます。ここで、例を挙げて考えていきましょう。

<例>

  • 月給25万円
  • 住宅手当1万5,000円
  • 課税通勤手当800円
  • 非課税通勤手当4,200円

これらを毎月支給する従業員の標準報酬月額は、27万円です。

非課税通勤手当はあくまで所得税が非課税というだけで、他の税や保険料が非課税となることはありません。また、毎月計算する雇用保険料の計算も、通勤手当を全額含めて計算します。上記の例で言えば、27万円にそれぞれの事業に応じた保険料率を掛けて計算する形です。

 

まとめ

最後に、交通費に伴う通勤手当について下記に覚えておきたい事項をまとめておきます。

  • 受け取った側の所得税が一定要件下で非課税となる
  • 交通機関を使う場合は基本的に全額非課税
  • 車両など交通用具は距離に応じて非課税限度額が変わるが、2㎞未満は全額課税
  • 非課税額の上限は15万円
  • 所得税以外の扱いでは課税・非課税の区別が不要

通勤手当の非課税額を間違えて処理し続け、後に税務調査で発覚した場合、従業員と会社のトラブルに発展する可能性も考えられます。定期的に金額に誤りがないか、国税庁の通達と付け合せて確認しましょう。

 

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● 著者

石田 夏

石田 夏

税理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、 税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。