2019年から出国税が施行 海外への出張精算はどう変わる?

2019年から出国税が施行 海外への出張精算はどう変わる?

日本から出国する際に課税される「国際観光旅客税」、いわゆる「出国税」が、2019年1月から施行されました。これにより出張費精算の在り方がどう変わったのか、海外への出張が多い企業では不安に感じているのではないでしょうか。そこで今回は、出国税の概要や、出張費精算での注意点などについてお伝えします。

出国税とは 概要と導入の背景

出国税とは、日本から海外へ行く際に支払う税金のことで、日本人と外国人の区別はありません。そのため、日本人が海外に出国する際はもちろん、日本にビジネスや観光で来日している外国人観光客も帰国するときに出国税を支払うことになります。

出国税の税額は1人1,000円となっており、航空券を購入する際に1,000円がプラスされる仕組みです。別途あらためて支払うわけではないので、税金がかかったという意識はあまり感じることはないかもしれません。

一部、この出国税に該当しないケースがあります。24時間以内にまた別の国へと移動する乗り継ぎ客や、2歳未満の幼児へは課税されません。

そもそも、なぜこの出国税が導入されたのでしょうか。その背景として、日本を訪れる外国人観光客が急増したことがあげられます。特に2012年以降、外国人観光客は年々増え続けており、2017年の年間訪日外国人の数は、2012年の2倍~3倍となる約2,870万人にのぼります。国は、2020年には4,000万人の訪日外国人を呼びたいとしています。

たしかに、2020年には東京オリンピックが開催されるなど、ますます増え続ける要因があります。しかし、これだけ外国人観光客が増えているにもかかわらず、国内のインフラ整備は十分ではないのが実情です。それは、インフラ整備にまわせる国の財源が乏しいことが要因となっているようです。

このようなアンバランスな状態を改善するため、今回徴収する出国税を財源に、インフラ整備を進めたいという狙いがあるようです。実際のところ、徴収された税収がきちんとインフラ整備に使われるかは不透明な部分もあるため、しっかりと適所に使われてほしいと思います。

ちなみに、出国税を導入している国は、日本以外にもアメリカ、ドイツなどいくつかあります。出国税は、決して日本だけのものではありません。

出国税は会社の経費になるのか

出国税は、日本から海外に出る度に必要となる税金です。そのため、海外出張が多い企業にとっては、「出国税は会社の経費になるのかどうか」という点はとても気になるところでしょう。

あきらかに業務上の海外出張である場合

100%業務上で海外出張をする場合は、基本的には出張費として会社が負担します。会社の重要な業務を担っているわけですから、航空券とともに会社が負担するのが自然の流れです。したがって、会社側としては経費計上になります。

100%業務上の海外出張ではない場合

業務上の海外出張ではない場合は、扱いが変わります。たとえば、社員への慰労として海外旅行をさせた場合や、業務と観光と半々だった場合など、現地での観光時間も含まれると経費とは判断されなくなります。このようなケースでは、負担した出国税は経費ではなく従業員への給与扱いとなることもあり、所得税が課税されることになります。

同じ会社負担でも、海外への出国の目的が違うと、その後の処理にも違いがあることを覚えておきましょう。

出張精算で出国税を経費にするための注意点

ここからは、出張費精算を行う際に出国税を会社経費とするためにはどのような点に注意すれば良いか確認しましょう。

出国税を会社経費とするためには、「業務で必要な海外出張であること」を客観的にも明確にする必要があります。たとえば、「どのような目的で海外に行くのか」そのために「どのような場所を訪問するのか」「誰と会ったのか」そして、「何をしてきたか」など、詳細に明記することができる、または、領収書など証明できる資料が求められるでしょう。

従業員の給与扱いとならないよう、出張の内容は明らかにすることを確実にしておきたいですね。

国内での出張では、出張費精算を行うのが一般的ですが、海外の場合でも同じ流れとなります。国内での移動手段も含めて、海外で使用した交通手段、宿泊施設などを精算します。出張の目的によっては、交際費、研修費、福利厚生費となることもあるため、どの分類に属することになるかは、しっかりと確認するようにしましょう。

また、海外出張の場合は、3泊4日以上など滞在日数が長くなることが予想されます。日当、宿泊費などの出張旅費規程をしっかりと整備して作成しておくこともおすすめです。
(参考)出張経費で節税!?出張旅費規程のメリットと作成の3つのポイント

そして、出張精算で迷いそうな消費税の扱いですが、海外出張の旅費、日当は、原則として課税されません。しかし、国内での宿泊費や交通費、日当は課税されますので、気を付けましょう。

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まとめ

今回は、2019年から導入される出国税の概要と、会社経費で取り扱う際の注意点などについてご紹介しました。海外との取引が増えている企業や、今後海外での新規事業を増やす企業も多くなっているでしょう。そういった企業は、当然海外出張も増え、出張精算も増えてくることが予想されます。会社経費となるか、給与扱いとなるか、しっかりと区別ができるように準備しておきたいですね。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 渡部 彩子

渡部さんお写真w240h240

大学卒業後、自動車関連の社団法人にて10年以上に渡り管理部門に在籍。経理・総務・人事の実務を経験し、同法人在籍中に日商簿記2級を取得。その後、保険・金融業界での経理業務の経験を経て、ライターとして独立。これまでの実務経験を元に経理業務をテーマとしたコンテンツ制作を中心に執筆。