消費税還付はいつ受けられる?仕組みや仕訳方法をわかりやすく解説

消費税還付を受けられる条件とは 仕組みや仕訳方法を学んで賢く節税

消費税還付とは

消費税の課税事業者は、課税売上や課税仕入によって受け払いする消費税から納付税額を計算し、期限内に消費税の確定申告と納税を行わなければなりません。納付税額は、課税売上から計算した消費税額と、課税仕入にかかる消費税額から計算した仕入控除税額との差額のこと。この額はおおむね、受け取った消費税と支払った消費税の差額と考えることができます。もし課税売上にかかる消費税額が10万円、仕入控除税額が6万円だった場合、消費税の納税額は4万円ということです。

では、消費税還付とは何なのでしょうか。これは、仕入控除税額が売上にかかる消費税額を上回るときに発生するものです。たとえば売上にかかる消費税額が10万円、仕入控除税額が16万円だった場合、計算上マイナス6万円となった消費税を税務署から還付してもらうことができます。

課税売上・課税仕入に該当するもの

消費税の課税取引となる課税売上や課税仕入には、簿記などで勘定科目として使用する売上・仕入だけでなくさまざま様々な取引が該当します。

  • 課税売上に該当するもの
    商品の売上げ、サービスの提供による収益、固定資産の売却収入(土地の売却収入を除く)、賃貸収入(住居や土地の賃料を除く)など
  • 課税仕入に該当するもの
    販売用の商品・製品の購入費、加工用の材料費、固定資産の購入費、広告宣伝費、消耗品費、事務所の維持管理費など

消費税還付が受けられるのは原則課税を適用する課税事業者

消費税還付を受けるには、法人・個人ともに以下が要件となります。

「課税事業者」であること
「原則課税」を適用していること

課税事業者とは

課税事業者とは、消費税の申告・納税義務のある事業者のこと。会社や個人事業主が課税事業者になるケースには、基準期間の課税売上高などから課税事業者と判定されるケースと、自ら「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になるケースがあります。

原則課税とは

消費税の課税方法には、原則課税と、事業者が任意に選択することによって適用される簡易課税の2つがあります。原則課税の仕入控除税額は、実際に支払った課税仕入れの対価の額から計算しますが、簡易課税では売上にかかる消費税額に40%~90%の割合(みなし仕入れ率)をかけて仕入控除税額を計算します。したがって、簡易課税により消費税の還付が発生することはなく、消費税還付を受けられるのは原則課税によって消費税額を計算する事業者となります。
簡易課税を選択していなければ原則課税が適用されますが、簡易課税を選択していても、基準期間の売上高などから原則課税が適用されるケースがあります。

経理プラス:消費税で簡易課税を採用できるのはどんなとき?メリット・デメリットを解説

消費税還付が発生しやすいケース

消費税還付が発生するのは、課税売上から計算した消費税額よりも課税仕入にかかる消費税額から計算した仕入控除税額の方が大きくなる場合です。消費税還付が発生しやすいケースには、次のようなものがあります。

機械など高額な課税仕入れを行ったとき

創業時や新しい事業を展開するときなどに、設備投資として高額な機械などを購入するとき。売上が軌道に乗るまでは一般的に課税売上も高くないため、消費税還付を受けられるケースが多くなります。
購入費はたとえ分割払いであっても、資産の引き渡し等を受けた日が課税仕入れを行った日となります。そのため、商品の引き渡しを受けたときに課税仕入れを全額計上することとなるのです。

売上が下がったとき

良い状況ではありませんが、課税売上が少なければ仕入控除税額がそれを上回り、結果的に還付が生じることもあります。ただし事業が赤字だからといって、消費税の還付になるというわけではありません。たとえば赤字であっても、給与や減価償却費といった課税仕入れに該当しない経費が多い場合は仕入控除税額もそれほど多くないため、消費税の還付にならないことがあります。

輸出がメインの事業

消費税は、外国で消費されるものには課税されません。そのため、輸出取引(商品の輸出、国際輸送、国際電話、国際郵便など)については所定の手続きを受けることにより、売上にかかる消費税は免税となります。輸出がメインの事業で国内における課税仕入れがあれば、消費税の還付を受けられることが多くなるでしょう。

消費税還付時の精算仕訳

消費税還付が生じるときの消費税額の精算仕訳では、還付税額を「未収消費税等」として計上します。仕訳の方法は、税抜経理方式か税込経理方式かで変わります。その後、消費税還付の振込みを確認したら「未収消費税等」の消込みを行うという流れです。次の例で、消費税還付時の仕訳を見ていきましょう。

【例】
消費税額を計算したところ、還付税額が6万100円であった。期中の仮受消費税等は10万円、仮払消費税額は16万円で、消費税精算差額(※)として、雑収入100円を計上した。

(※)消費税の納付税額は途中で端数処理が行われるほか、該当事業者において課税売上割合を使って仕入控除税額を計算することがあります。そのため、仮払消費税等と仮受消費税等の差額はぴったりにはなりません。消費税額の計算過程で生じた差額については雑収入、あるいは雑損失で調整処理をします。

税抜経理方式

  • 消費税額の精算時
    借方 金額貸方金額
    仮受消費税等100,000仮払消費税等160,000
    未収消費税等60,100雑収入100
  • 消費税の還付を受けたとき
    借方 金額貸方金額
    普通預金60,100未収消費税等60,100

税込経理方式

  • 消費税額を精算したとき
    借方 金額貸方金額
    未収消費税等60,100雑収入60,100
  • 消費税の還付を受けたとき
    税抜経理方式に同じ
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消費税還付を受ける方法

消費税の還付を受けるには、消費税の申告書に消費税の還付申告に関する明細書を添付の上、消費税の確定申告(還付申告)をしなければなりません。申告後、税務署によって多少時期に差はありますが、おおむね1か月から1か月半ほどで還付金が指定口座に振り込まれます。

還付申告の期限

法人の消費税の申告期限は、課税期間の終了から2か月以内です。
課税期間の終了とは、原則、事業年度の終了の日(課税事業の短縮を行っている場合を除く)となります。たとえば課税期間の終了が3月31日の場合、申告期限は5月31日です。
ただし還付申告は任意であり、期限後申告であることについてペナルティは生じません。
しかし期限内に申告がなければ、税務署からすれば還付かどうかはわかりません。そのため、連絡を受けたり税務調査の対象になってしまったりする可能性があります。万が一、計算間違いで実は納税額があったことがわかれば、延滞税も発生するでしょう。また、税務調査の後では通常より重い加算税も課されます。 したがって、還付申告であっても通常の期限内に申告するようにしてください。

まとめ

消費税還付は、課税売上から計算した消費税額よりも課税仕入にかかる消費税額から計算した仕入控除税額の方が大きくなる場合に発生します。このことを活用し、設備投資等の予定があるときに、あえて課税事業者となることを選択して消費税還付を受けるという節税方法も考えられるでしょう。ただし、選択して課税事業者になった場合は、最低でも2年間の課税事業者を継続しなければならないなど様々な注意点があります。消費税還付による節税を考える際は、顧問税理士に必ず相談しましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 石田 夏

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理士事務所、上場企業の経理職を経てフリーライターに転身。 簿記やファイナンシャルプランナー資格を活かして、税務・会計に関する企業向けコンテンツを中心に執筆中。 ポリシーは、「知りたいをわかりやすく」。