消費税で簡易課税を採用できるのはどんなとき?メリット・デメリットを解説

消費税で簡易課税を採用できるのはどんなとき?メリット・デメリットを解説

消費税の仕組み

お店で物を買うと、消費税がかかります。この消費税を支払うのは、物を買った人(消費者)ですが、実際に税金を納めるのは物を売ったお店です。お店は消費者から受け取った消費税を税務署に納めなければなりませんが、お店も商品を仕入れする際に、仕入れ業者に対して消費税を支払っています。
そのため、お店は「消費者から受け取った消費税-仕入れ業者などに対して支払った消費税」で計算された金額で消費税の申告をして、税務署に納税することになります(原則課税)。このように消費税は、納税者が直接納税するものではなく、間接的に納税するものなので、間接税と言われています。

消費税の計算方法(原則課税、簡易課税)

消費税の計算方法には、原則課税と呼ばれる方法と簡易課税と呼ばれる方法があります。

原則課税とは、先ほどの解説の通り、消費税の納税をしなければならない人(先ほどの例ではお店)が「受け取った消費税-支払った消費税」を計算して、消費税を納税する方法のことです。この計算式で、支払った消費税の方が多くなれば、消費税は還付されることになります。

一方、簡易課税とは、その名の通り、簡易的に納税すべき消費税の金額を計算する方法で、課税売上高から課税売上高に業種ごとに決められた率(みなし仕入率)を乗じた金額を差し引いた金額で、消費税を納税する方法のことをいいます。

みなし仕入率は次のように、業種ごとにそれぞれ決められています。

第一種事業(卸売業)……90%
第二種事業(小売業)……80%
第三種事業(製造業など)……70%
第四種事業(その他の事業)……60%
第五種事業(サービス業など)……50%
第六種事業(不動産業)……40%

これは事業規模の小さい事業者に対する事務負担を配慮し、設けられている制度です。

簡易課税を適用できるのはどんなとき?

簡易課税を適用するためには、事前に消費税簡易課税制度選択届出書を税務署に提出することが必須となります。”事前に”とは、簡易課税を適用する課税期間の初日の前日までのことを指します。
たとえば、3月31日が決算の会社で、4月1日からの決算期について簡易課税の適用を受けたいときは、3月31日が提出期限です。

また、事前に届出をしていた場合でも、実際に簡易課税を適用できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であるときです。
基準期間とは、通常、消費税の計算期間(課税期間)の2年前の期間のことをいい、この基準期間の課税売上高に基づき、消費税の課税事業者となるのか免税事業者となるのか、そして簡易課税を適用できるのかを判定します。

たとえば、課税期間が2018年4月1日から2019年3月31日のときの基準期間は2016年4月1日から2018年3月31日となり、その期間の課税売上高が5,000万円以下であるときは事前に届出を提出していれば、簡易課税の適用が可能です。

なお、簡易課税は一度適用すると、最低2年間は原則課税への変更ができません。取りやめたい場合は、2年間適用した後、適用をやめる課税期間開始日の前日までに「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することにより、簡易課税制度の適用を取りやめることが可能になります。

簡易課税のメリットとデメリット

簡易課税は、課税売上高のみを集計すれば、あとはみなし仕入率を使い、消費税の金額を計算できるため、比較的簡単に消費税の計算をすることができます。これが原則課税であれば、仕入れや経費1つ1つについて、消費税の課税取引かどうかを区分して会計ソフトに入力する必要があります。
会計ソフトに入力する者に取引の消費税区分を判定するための知識が必要ですし、知識があっても入力間違いをしてしまう可能性もあります。そのため事務負担が少なくて済むというのが簡易課税の大きなメリットです。

また、これはメリットにもデメリットにもなり得ますが、原則課税と簡易課税では、消費税の計算方法が違うので、どちらを採用するかで、消費税が多く計算されたり、少なく計算されたり、有利不利が生じてきます。
たとえば、サービス業などのみなし仕入率は50%とされていますが、人件費などの消費税のかからない費用の割合がそれよりも高いときは、簡易課税を適用して50%のみなし仕入率を使った方が納税すべき消費税が少なく計算される場合があります。

一方で、多額の設備投資を行うときなどは、課税仕入(支払った消費税)が多くなるため、簡易課税よりも原則課税を適用した方が有利になる場合もあります。税金を減らす目的で簡易課税を選択するときは、将来の設備投資計画などのこともしっかりと考えることが必要です。

まとめ

簡易課税を適用することで事務負担が軽減されたり、税金が減ったりする場合もあるなど、大きなメリットがあります。
簡易課税を適用できる場合は、事前に原則課税とどちらが有利となるかシミュレーションを行うとともに、簡易課税を適用するための届出を忘れないように留意しましょう。
また、届出を提出していたとしても、基準期間の課税売上高が5,000万円超の場合は、適用ができないので十分注意してください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

アバター画像

税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

みんなの会計事務所