仕入債務回転期間の基本 資金繰りを理解して改善する方法とは?

仕入債務回転期間の基本 資金繰りを理解して改善する方法とは?

仕入債務回転期間とは

仕入債務とは商品や材料を仕入れて、その仕入れ代金を支払う義務のことを言います。「ツケ」と言う言葉を用いるとイメージが湧きやすいかもしれません。そして仕入債務回転期間とは、商品や材料を仕入れてから支払うまでの期間を示す指標です。つまり、仕入債務が発生してから同債務が消滅するまでの期間ということになります。まずは、仕入債務の発生時と消滅時をまとめて見ておきましょう。

  • 仕入債務の発生時:商品を仕入れて、代金支払いを後払いにしたとき
  • 仕入債務の消滅時:後日、後払い代金を支払ったとき

なお、仕入れ代金の支払いは遅ければ遅いほど、会社にとっては資金繰りに余裕が出ます。よって、仕入債務回転期間は長い方が好ましいです。一方、仕入債務回転期間があまりに長い場合は注意が必要です。支払いサイトが長いだけなら良いのですが、支払条件が悪化している、あるいは資金不足のために支払いを延ばしている可能性があります。過去2.3年の同指標と比較し、異常値がないかを見ておくことも大切です。

売上債権回転期間との関係性

仕入債務回転期間が仕入れから後日決済までの期間であることに対し、売上から売上代金入金までの期間を「売上債権回転期間」と呼びます。企業が行う取引は売上と仕入のいずれに関しても掛取引が多いため、両者の回転期間は密接に関連して資金繰りに影響するもの。例えば売上債権回転期間がとても長い会社(売上の入金サイクルが遅い)は、仕入の支払いが先行するため資金繰りの調整が必要です。一方、売上が即時または売上直後に入金されるビジネスでは、売上債権回転期間が短くなって資金繰りに大分余裕ができることになります。以下に、仕入債務回転期間と売上債権回転期間の関係性をまとめておきました。

  • 売上債権回転期間が仕入債務回転期間より長い場合:
    売上入金前に仕入額支払いが発生するため、資金繰りの調整が必要
  • 売上債権回転期間が仕入債務回転期間より短い場合:
    売上入金後に仕入額支払いが発生するため、資金繰りに余裕がある

経理プラス:利益があるのに金がない?売上債権回転期間とは

仕入債務回転期間の計算方法

仕入債務回転期間は、どのように計算するのでしょうか。まず、計算式としては以下の通りとなります。月ベースと年ベース、それぞれ見ていきましょう。

仕入債務回転期間(月)=仕入債務÷仕入高(月)×12
仕入債務回転期間(年)=仕入債務÷仕入高(年)

なお、仕入債務については期首と期末の残高の平均値を用いることが多いでしょう。仕入高は一定期間(月または年)の値のため、仕入債務も一時点ではなく一定期間の期間平均の値にした方が良いという考え方です。

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仕入債務回転期間は、月単位と年単位、どちらで計算すべきか

仕入債務回転期間は月単位と年単位、どちらで計算するのが好ましいでしょうか。結論から言えば、どちらでも構いません。その理由は、計算結果が変わらないためです。極端な例ですが、1年という仕入債務回転期間が算出されたら、それは仕入債務回転期間=12ヶ月と言い換えることができます。ただし支払いサイトや比較対象になる売上に関する入金サイクルは、通常だと月単位で表現することが多いでしょう(支払いサイトは2ヶ月等)。そのため、月単位の方が理解しやすいかもしれません。

仕入債務回転率との関係性

仕入債務回転率とは、会社の仕入債務の支払いをいかに効率的に行っているかを示す指標です。計算式は以下の通りです。

仕入債務回転率=(仕入高÷仕入債務)×100

計算式から分かるように、仕入債務回転期間の分子と分母を反対にした指標となります。仕入債務回転率は低いほど仕入代金の支払いに時間を掛けていることを意味し、注視が必要です。仕入債務回転期間と仕入債務回転率の関係性を、以下で改めてまとめて確認しておいてください。

  • 仕入債務回転期間が長いとき:仕入債務回転率は低い
  • 仕入債務回転期間が短いとき:仕入債務回転率は高い

売上債権回転率との関係性

売上債権回転率とは、会社の売上債権の回収がいかに効率的に行われているかを示す指標です。計算式は以下の通りです。

売上債権回転率=売上高÷売上債権

先述したとおり、企業が行う取引は売上に関しても仕入に関しても掛取引が多いため、両者の関係性は資金繰りに大きく影響します。よって、仕入債務回転期間を分析する際は仕入債務回転率や売上債権回転率など、複数の指標を併せて分析するようにしましょう。なお、売上債権回転率は以下の記事で詳しく取り上げていますので、併せてご覧ください。

経理プラス:経営の「コスパ」を測る効率性分析!気になる投下資本の回転率は?

具体的な分析方法

仕入債務回転期間の目安は通常40〜60日程度と言われています。自社の仕入債務回転期間の方が目安よりも長ければ、支払いサイトは好ましい一方、資金繰り状態が悪く、支払いを先延ばしにしている可能性があり注視が必要です。逆に自社の仕入債務回転期間の方が目安より短ければ、仕入先との契約において支払サイトに関する条件が不利に締結されている恐れがありますので注意してください。

仕入債権回転期間を計算するために必要な数値の取得方法

仕入債務回転期間の分析方法としては自社の過去実績と比較する方法と、同業他社との比較を行う方法があります。また具体的な計算式に落とし込むために、仕入高と仕入債務の情報が必要となります。

自社の過去実績に関しては、自社内で財務情報にアクセスできるので情報がスムーズに入手できますね。

一方、同業他社との比較を行う際はどうでしょうか。同業他社との比較を行う際には、有価証券報告書を活用すると数値が集めやすいです。まず仕入債務は有価証券報告書の貸借対照表の買掛金と支払手形の残高から抽出が可能です。仕入高の情報を得るためには、有価証券報告書の「第一部>第2事業の状況>2生産、受注及び販売の状況(販売及び仕入の状況)」を確認しましょう。業種によるところも大きいのですが、有価証券報告書に仕入実績を載せていない企業は少なくありません。では仕入高の情報を入手できない場合、仕入債務回転期間をどのように計算するのが好ましいでしょうか。その際は仕入高に代えて、売上原価を用います。仕入高と売上原価はニアイコールの関係性にあるため、正確な回転期間は算出することはできませんが、傾向の大枠を計算することができるでしょう。

おわりに

仕入債務回転期間について詳しくご紹介しました。仕入債務回転期間は売上債権回転期間とともに、資金繰りに大きく影響を及ぼす指標です。過去数年と比較して異常値になっていないか、業種の平均値から大きく乖離していないか注視するようにしましょう。

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● 著者

篠原 泰之

篠原 泰之

1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、 管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。 日商簿記1級保有。