利益があるのに金がない?売上債権回転期間とは

会計の世界には「勘定合って銭足らず」という名言があります。利益があるのに金がない、そんなことがなぜ起こるのでしょうか。今回はその主要因の一つである「売上債権」について学ぶとともに、その代表的な分析指標である「売上債権回転期間」についても見ていきましょう。

 

売上債権とは

売上債権には「売掛金」「受取手形」といった科目が該当します。どちらも企業が売上(収益)を計上した結果、手に入れた代金請求権です。

ここで重要なのは「売上計上から代金回収までの流れ」です。通常、以下のような流れで取引が行われます。

  1. 売上を計上した結果、売掛金が生じる
  2. 売掛金の決済として、受取手形を相手から受け取る
  3. 受取手形の期日が到来し、代金が入金される

もちろん、すべての企業がこのような流れになるわけではありません。小売業やサービス業など、対消費者向けの現金商売では「売上計上、即入金」ということもあります。また手形を用いない場合には「売掛金の決済で代金が入金」ということもあります。

 

売上債権回転期間とは

売上債権回転期間とは、以下の算式により計算されます。

日単位の場合: 売上債権の残高 ÷ (年間売上高/365日)
月単位の場合: 売上債権の残高 ÷ (年間売上高/12ヶ月)

この指標から計算できるのは

  • 自社が保有する代金請求権は大体何ヶ月分(何日分)の売上なのか

ということです。これを別の表現で言い換えると

  • まだ回収できていない売上代金は大体何ヶ月分(何日分)あるのか
  • 自社は代金を回収するのにどれくらい時間がかかっているのか

となります。

例:年間売上高1億2,000万円。売掛金と受取手形の残高が2,000万円。
 売上債権回転期間 = 2,000万円 ÷(1億2,000万円/12ヶ月)= 2

つまり、この企業であれば代金の回収までに平均して2ヶ月かかっている、ということを意味します。

売上債権回転期間は、業種によって平均が異なります。現金決済が多い業種ほど短く、製造業や建設業といった業種では長くなる傾向があります。

大まかな目安として

  • 建設業や製造業:1ヶ月超から2ヶ月くらい
  • 卸売業:1ヶ月超から2ヶ月くらい
  • 小売業やサービス業:1ヶ月くらい
  • 飲食業等の接客業:0.5ヶ月未満

大体これくらいが相場になっているようです。ただし、特に大手企業を相手にした場合、売上債権回転期間は長期化する傾向にあるようです(理由は後述します)。

 

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売上債権回転期間が長いとどんな問題があるのか

前述の通り、売上債権回転期間は「代金を回収するまでにどれくらい時間がかかっているのか」という意味です。これが長ければ長いほど、仕事をしてから手元にお金が来るまで待たされるということを意味します。その結果、以下のような問題が生じます。

手元資金の不足

売り上げたにも関わらず代金が来ないわけですから、当然手持ちのお金は減っていきます。売上の入金が待たされる一方、各種支払い(人件費、仕入代金、借入返済等)は待ったなしで期限が到来します。最悪、その支払期限に手許現金が追いつかない場合には倒産の憂き目に遭う可能性すらあります。

資金不足を賄うための融資活用による金利負担等

上記のような資金不足を回避するためには、融資の活用が考えられます。代金入金まで借りたお金でやりくりをするのです。しかし、当然ながらお金を借りるのも無料ではありません。金利の支払いや融資手数料など、様々な費用を負担しなければなりません。

このように、売上債権回転期間の長期化は企業の資金繰りに深刻な影響を与えます。これを逆の立場から考えると、代金を支払う側は「支払いが先であればあるほど自社に有利」な状況を構築できます。ですから、大手企業を相手にすると、立場上売上債権回転期間が長期化する傾向にあるのです。

 

改善方法

売上債権回転期間の長期化対策には、以下のようなものがあります。

債権回収の確実な実施

特に取引先が多い業種の場合、代金の回収が疎かになってしまうことは珍しくありません。各取引先についてしっかりとチェックし、未払いの場合には繰り返し催促をすることや、最悪の場合には取引停止や法的手続きの活用も検討する必要があります。

仕入債務回転期間の長期化

売上債権回転期間の逆で、支払い側について「支払いまでの期間を長くする」ことにより、売上代金の回収があるまで支払いを延ばす、という考え方です。
ただし、この方法は仕入先などに対して「こちらの負担をつけ回す」行為でもあります。理屈的には良い方法ですが、信頼関係の醸成などからすると非常に高度な対応を迫られます。

手形割引やファクタリングの活用

受取手形は金融機関に持ち込むことで割引をすることができます。一定の割引手数料を支払うことで、手形をすぐに現金化することができます。また最近では売掛金を買い取るファクタリングというサービスも一般的になってきました。
どちらも資金繰り改善には役立ちますが、結局は手数料を支払って現金化を急いでいることになります。可能であれば活用しないで済むほうが好ましい手段です。

売上債権回転期間の長期化が慢性化した結果、利益はあるのに代金回収ができず、結局倒産をした……これが冒頭に紹介した「勘定合って銭足らず」の正体です。そんな事態にならないよう、代金回収までの期間にはしっかりと目を配るようにしましょう。

 

まとめ

売上債権とは売上から発生する代金請求の債権(売掛金・受取手形)です。その債権を現預金として回収するのにかかる時間を知るのが売上債権回転期間です。売上債権回転期間が長いということは、それだけ手元に現預金が来るのが遅れることを意味するので、融資などによる追加費用が生じることとなります。改善のためには回収の確実な実施や、費用側の支払期間見直し、また債権の売却といった手段があります。

 

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。