2023年にインボイス方式が導入!請求書等保存方式から何が変わるのか

2023年にインボイス方式が導入!請求書等保存方式から何が変わるのか

2023年に消費税の納付計算がインボイス方式に導入されることはご存知でしょうか。インボイス方式は別名「適格請求書等保存方式」とも呼ばれ、仕入税額控除に影響があります。今回はそのインボイス方式導入にあたって現在の請求書等保存方式から何が変わるのかを確認します。

「請求書等保存方式」とは

消費税の課税事業者である法人や個人は、消費税を納めなければなりません。その際の消費税の納税額は、原則として課税売上げに関わる消費税から課税仕入れに関わる消費税を控除した金額となります。ここで課税仕入れに関わる消費税を控除することを「仕入税額控除」といいます。闇雲に仕入税額控除できてしまっては、適正に消費税の納税がされない可能性があるため、仕入税額控除の適用を受けるためには要件が設けられており、一定の事項を記載した帳簿と請求書等の両方を保存しておかなければなりません。この要件のことを「請求書等保存方式」と言います。

ただし、例外が設けられており、支払額が3万円未満(税込)の場合で、一定の事項を記載した帳簿を保存しておけば、請求書等は保存しなくてもよいこととされています。
また、3万円以上の場合でも、やむをえない理由がある場合には請求書等がなくても仕入税額控除することが認められています。この場合、帳簿には通常の記載事項に加えて、止むを得ない理由や相手の住所などを記載しておく必要があります。

軽減税率制度導入後の変更点

2019年10月1日より消費税増税と合わせて、一定の品目(一定の飲食料品及び一定の新聞)に対する軽減税率制度が導入される予定です。その場合、消費税等の税率が、軽減税率である8%と標準税率である10%の複数の税率となります。
消費税の申告にあたっては、取引等について適用される税率ごとに区分して経理処理をしなければなりません。また、区分経理に対応した帳簿の作成及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。この要件のことを「区分記載請求書等保存方式」と言います。

インボイス方式とは 概要と開始時期

2019年10月1日から2023年9月30日までは上記の「区分記載請求書等保存方式」が仕入税額控除の要件とされています。
そして、2023年10月1日からはインボイス方式(適格請求書等保存方式)が導入され、区分記載請求書等の保存ではなく、インボイス(適格請求書等)の保存をしていなければ仕入税額控除をすることができなくなります。
インボイスとは、適用する税率や税額などの定められた事項が記載されている書類のことをいいます。単一税率であれば、適用する税率や税額が明記されていなかったとしても仕入税額の計算をすることができますが、複数税率の場合には、これらの記載がなければ正確な仕入税額の計算ができないと考えられるため、このインボイス方式が導入されます。

インボイス方式の下において、課税事業者はインボイスを発行することが義務づけられます。そして、インボイスを発行する課税事業者は、あらかじめ税務署長に申請をして適格請求書発行事業者の登録を受けていなければなりません。この適格請求書発行事業者の登録を受けると、登録番号が付与されますので、その登録番号をインボイスに記載しなければなりません。また、適格請求書発行事業者がインボイスを発行した場合には、その副本の保存が義務づけられます。もちろん偽りのものを交付すると罰則が適用されます。
インボイス方式後に必要になる適格請求書発行事業者の登録申請書の提出は2021年10月1日から行うことができることとされています。

このようにインボイス方式の導入以降は、インボイスの保存が仕入税額控除の要件の一つとなります。
これまで免税事業者からの仕入れについても仕入税額控除が認められていましたが、インボイス方式の導入以降は、「インボイス」を発行することができない免税事業者からの仕入については仕入税額控除ができなくなります。ただし、経過措置が設けられており、段階的に仕入税額控除ができないようになるという配慮が設けられています。

また、免税事業者であっても、課税事業者を選択することで、適格請求書発行事業者の登録を受けることができます。インボイス方式導入により、仕入税額控除を行うためのインボイス発行と発行に必要な手続きが発生しますので注意してください。

インボイス方式で必要なインボイスの記載事項

インボイス方式で必要になるインボイスには次のような事項を記載しなければなりません。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
  2. 取引があった年月日及び取引の内容
  3. 相手方の氏名・名称
  4. 軽減税率対象品目がある場合は、その旨
  5. 税率毎に区分して合計した対価の額と適用税率
  6. 税率毎に区分して合計した消費税額等

請求書とインボイスにそれほど大きな違いはありませんが、登録を受けた事業者でないと発行できないことや記載する事項が細かく決まっていることがインボイス方式導入後の一番の違いと言えるでしょう。
なお、インボイスには受領者の氏名や名称を記載しなければなりませんが、飲食店やタクシーなどの事業者の場合、そこまで記載したインボイスを発行することが困難な場合があります。そのため、飲食業やタクシー業など不特定多数の人を対象とした事業を行っている場合で、一定の事業に該当するときは、相手方の氏名を省略したものを発行することができます。これを「適格簡易請求書」と言います

まとめ

2023年から導入されるインボイス方式について解説しました。インボイス方式について理解いただけましたでしょうか。軽減税率制度やインボイス方式が導入されると事業者の負担は大きく増えると考えられます。請求書保存方式からインボイス方式への移行に備え、準備を早めに進めていくとよいでしょう。

経理プラス:インボイス制度とは?2023年から変わること、記載方法を分かりやすく解説!

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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