内部留保が企業を守る!? コロナ禍で注目される理由とは

内部留保が企業を守る!? コロナ禍で注目される理由とは

内部留保とは企業の所有する資産のうち、借入金や株主の出資ではなく自己の利益によって調達した部分を指すものです。社内留保や社内分配と表現されることもあります。

会社が上げた利益は、最終的に株主に帰属するものです。しかし、会社の利益がすべて株主に還元されるわけではありません。利益の一部は株主に配当や自社株買いという形で還元される一方、それ以外は内部留保として積み立て、またはM&Aや新規事業に再投資されてサイクルが成り立ちます。

内部留保と損益計算書・貸借対照表との関係性

内部留保と損益計算書、貸借対照表との関係性を見ていきましょう。損益計算書で算出された利益(税金控除後の税引後当期純利益)が貸借対照表の利益剰余金に積み重なっていき、その後、配当を行った上で残った金額が内部留保となります。なお、内部留保はあくまで概念的な言葉であり、貸借対照表の勘定科目に出てこないことに留意しましょう。

【損益計算書と貸借対照表との関係性】

<損益計算書>

  • 売上―(経費+税金)=利益

<貸借対照表>

  • 損益計算書で計算された利益が、純資産の利益剰余金へ振替
  • 利益剰余金から配当を実施
  • 配当を実施後に残った利益剰余金が内部留保として残る(同時に資産も減少)

なお、利益剰余金に関して詳しく知りたい方は以下記事も参考にしてください。
経理プラス:経理担当者必見!繰越利益剰余金とは?

内部留保の重要性~コロナ禍で注目される理由~

昨今(2020年6月時点)の新型コロナウイルス感染症拡大による経営危機で、従業員への支払いや固定費の支払いなど、これまで以上に手元資金の重要性が高まっています。助成金や融資など国からの補助もありますが、入金までには一定のタイムラグがあるでしょう。利益が出ていても、手元資金がないが故に倒産してしまう黒字倒産は有名なこと。助成金や融資の入金、その先の売上入金が新型コロナウイルス感染症が流行する前の状態に戻るまでは、手元資金で耐え忍ぶしかありません。これらの理由から、内部留保の重要性が注目されているのです。今回は新型コロナウイルス感染症の影響で注目が高まりましたが、もし首都圏直下地震などが今後発生した場合にも同様の論点が再燃すると予想されます。

~内部留保は守りと同時に、攻めにも使われる~

内部留保は攻めの投資にも使用されます。それは、内部留保に積み上げた利益を新規事業や新製品開発投資に回し、長期的な企業価値増大を目指すというもの。事業の多角化を行っている会社では、例えば金融事業で稼いで新規事業の投資に回すということもよくあります。例えば楽天がこの傾向が顕著でしょう。楽天カードや楽天銀行などの金融部門で稼いだ内部留保を、楽天モバイルの新規事業への投資に回しています。

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内部留保の推移

日本全体で、内部留保額は過去数年どのように推移しているのでしょうか。財務省集計の企業統計調査によると、過去5年の内部留保額の推移は下記のとおりです。

(単位:兆円)

 2016年3月2017年3月2018年3月2019年3月2020年3月
内部留保額366390426466483

(参考):財務省 法人企業統計調査 結果の概要(該当年度の資料を参照)

この表から、内部留保額が毎年、増えていることがわかります。ちなみに今回は2016年以前のデータを割愛してありますが、2000年以降の過去20年間で内部留保額の増加傾向のデータが出ているようです。来たるリスクに備え、保守的に利益を内部に積み立てている構図が伺えます。なお、設備投資も過去数年で増加傾向が見られますが、利益額の伸び率を下回っているのが現状です。

内部留保課税とは?

先述した内部留保の増大を受けて、財務省は内部留保課税の検討を近年始めています。内部留保は本来、法人税納付後の利益を積み立てているため課税対象ではありません(課税すると二重課税となります)。しかし近年、企業の内部留保増大の対策として、内部留保に課税することを検討し始めています。まだ制度実装は叶っていませんが、今後注目される課税対象のひとつとなるでしょう。

おわりに

会社の内部留保について詳しく解説しました。内部留保は企業にとって、いざというときの備えになる一方、M&Aや新規事業開始時の大切な資金源泉にもなります。現在の会社に必要な内部留保を常に把握しておくことが、経済危機から企業を守る有効な手段になるでしょう。

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この記事は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

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● 著者

篠原 泰之

篠原 泰之

1990年生まれ、東京都出身。スタートアップで経営管理業務に従事する傍ら、 管理部門構築支援や簿記講師、執筆活動など、財務経理を軸に幅広く活動している。 日商簿記1級保有。