経理担当者必見!繰越利益剰余金とは?

日常的な経理処理ではあまり出てこない繰越利益剰余金という会計用語があります。一体どのような項目で、そこから何がわかるのでしょうか?今回はその点について確認をしていきましょう。

 

会計の目的は「期間損益計算」である

会計について、あらためて大前提を確認します。現在の企業会計は「適正な期間損益計算」を基本目的にしていると言われています。ここで注目をしてみたいのは「期間」という言葉です。

通常、会計ではこの期間に1年間を採用します。中には7ヶ月や8ヶ月といった決算を採用している企業もありますが、ごく少数です。また、大企業においては1年間をさらに細分化(半年や四半期、さらには月次レベル)して損益、つまり利益(損失)の金額を計算しています。

ここまでで1つの疑問が出てきます。日常的な経理処理は「1年間の利益」を計算するために行われています。それでは、その企業が誕生してから今までの生涯成績はどうやって知れば良いのでしょうか?

 

毎年計上される利益が溜まっていく

その生涯成績を知るための項目が繰越利益剰余金です。企業が決算作業を行い、利益額が確定した後に何もしなかった場合、残った利益の額は繰越利益剰余金という勘定に蓄積されていきます。

イメージとしては、

  • 企業の誕生から今までの売上 – 企業の誕生から今までの経費 = 繰越利益剰余金

このような計算です。毎年の利益計算は1年ごとにリセットされますが、結果についてはこの繰越利益剰余金勘定に蓄積されていきます。

 

純資産の部

貸借対照表をよくみると「資産の部」「負債の部」「純資産の部」と分かれています。資産と負債については、ある程度わかるでしょうが、純資産というのは少しわかりづらい言葉です。

純資産というのは「株主から出資してもらうなど、企業が自力で獲得した資金源」のことを示しています。純資産を別の言葉では自己資本と呼びます(正確には別の定義ですが、今回はそこまで詳しくは触れません)。一方、負債のことを他人資本と呼んだりします。他人から出してもらった資本は返済が必要です。一方で自己資本は「自分が稼いで獲得したもの」であるため返済をする必要がありません。

繰越利益剰余金は、この純資産の部(自己資本)に計上されます。企業が自力で稼ぎ出した利益が蓄積したものとして、純資産の部を構成する主要素です。

 

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 交通費・経費精算システム「楽楽精算」

 

どのような理由で増減する?

繰越利益剰余金には利益が蓄積される、と説明しました。それではこの金額は、ひたすらに増え続けていくだけなのでしょうか?

実際にはそうではありません。蓄積された利益は以下のような理由で減少することがあります。

配当の実施

配当性向という言葉があります。株式投資を行っている人にとってはお馴染みの言葉です。配当というのは「獲得された利益の中から株主に分配されるお金」です。獲得された利益、つまり、その原資は繰越利益剰余金です。
そのため、株主に対して配当すると繰越利益剰余金は減少します。複式簿記の仕訳でいえば

 借方貸方
繰越利益剰余金(純資産の部)現預金(資産の部)

上記のように処理します。蓄積されていた利益を配当金という形で株主に支払った、という取引の流れが確認できます。なお、実際には配当金を満額支払うわけではなく、会社側で源泉所得税を預かる必要があります。それに配当金の額に併せて「利益準備金」という勘定科目を計上する必要が出る場合があります。

特に上場企業の場合、配当をいくら支払うのか、というのは非常に大きな論点となります。繰越利益剰余金が多額に残っているにも関わらず、設備投資や人材育成に回すこともなく「なんとなく蓄積を続けている」ような企業に対しては、株主から「だったらもっと配当金を出せ」という要望を突きつけられることもあります。

任意積立金の計上

上記でも紹介した通り、特に大きな会社では株主に対して配当金を支払うのが通例です。しかし、獲得した利益をすべて配当として出してしまうと企業にはお金が貯まりません。そこで、企業側が「蓄積した利益のうち、これくらいの金額は将来の特定目的に使用したいので留保させてもらえませんか?」という意思表示をすることがあります。それが任意積立金です。

任意積立金については、以下のように経理処理を行います。

計上時)

 借方貸方
繰越利益剰余金○○積立金
(○○には修繕、退職金など特定の目的が入る)

取崩時)

 借方貸方
○○積立金繰越利益剰余金

任意積立金の計上を通じて、企業は株主に対して「将来のビジョンについて説明をすること」が必要です。

 

これら繰越利益剰余金の処分に関する情報は、決算書内にある「株主資本等変動計算書」という資料にまとめられます。この資料をみることで、企業が蓄積した利益をどのように処分したのかがわかります。

繰越利益剰余金は、日常的な経理処理ではあまり触れることがないのでイマイチ実態がわかりづらい項目です。しかし、これが読み解けることで「当該企業がどういう方向に会社を進めていきたいのか?」を判断するための情報を得ることができます。

 

まとめ

繰越利益剰余金は、企業の毎年計上する利益が蓄積していく項目です。この項目をみることで企業の生涯成績を判断することができます。また、繰越利益余剰金は配当や役員賞与、任意積立金の計上により減少をすることがあります。株主資本等変動計算書を通じて、繰越利益剰余金がどのように処分されたのかがわかります。繰越利益剰余金が理解できると、その会社のこれまでの歩みとこれからの方向性を理解することができるので、ぜひ参考にしてみてください。

 

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。