自社の配当性向を知っていますか?株式から見た企業の財務体制

株式投資の世界において評価軸の一つとなるのが配当です。その株式を保有していることで「どれくらいの配当がもらえるのか」というのはとても重要な情報です。今回は配当に関する指標の一つ「配当性向」について学んでいきます。
 

配当性向の計算式

配当性向は、以下の算式により計算できます。

配当性向(%) = 配当金の支払総額 ÷ 当期純利益 × 100

次の式でも計算が可能です。

配当性向(%) = 1株当たりの利益配当金 ÷ 1株当たりの当期純利益 × 100

※利益配当金以外に、資本剰余金を原資とする配当もあります。配当性向の計算では「当期利益の内からどれだけ配当をしたか」を計算しているため、資本剰余金を原資とする配当は計算に含めません。

具体例)
1株当たりの配当金を40円、1株当たりの利益が200円とした場合

配当性向(%) = 40円 ÷ 200円 × 100% = 20%

文章で言い換えると「利益のうち何%を配当として株主に支払っているのか」となります。配当性向が高ければ高いほど、株主に対して配当を支払っているということを意味します。

通常、配当金の原資は利益となります。したがって、経理担当者が正しい処理を行い、適正な期間損益計算を実現することが配当性向の正しい分析には必要不可欠です。

 

誰にとって有用な情報なのか

配当性向の情報を主に利用するのは、その会社の株式を購入するか否かを検討している投資家です。
株式投資の世界は、主に2つの方法で利益をあげることができます。

  • 株式の譲渡による利益
  • ある株式を値段が低いときに購入し、高いときに売却することで得られる利益です。短期から中期に渡り保有する株主の多くは、こちらの方法により利益を獲得しています。

  • 受取配当による利益
  • 配当金は、特定の基準日にその株式を保有している株主に受け取りの権利が生じます。特に長期間に渡り株式を保有している株主は、企業からの配当金が主な利益源となります。また、株式の購入金額に対する配当金額の割合である「配当利回り」といった指標も存在します。

配当性向の数字は、主に長期的な株式保有を考えている投資家にとって有用な情報と言えます。配当による利益は、その会社が利益をあげ続けて配当を継続する限り、ずっと手に入るものです。投資家からすれば「企業がどれくらい配当をする気があるのか」というのは重要な情報です。

経営者は、投資家の「配当が欲しい」という要求に対してどのように対応するのか、検討をしなければなりません。その意味で、配当性向は「経営者と投資家のせめぎ合いの指標」とも言えます。経理担当者としては、自社の配当状況について正確に把握し、正しく処理をすることで、経営者と投資家の橋渡しをしているとも言えます。

 

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配当性向が高い会社 = 良い会社、とは限らない

では「配当性向が高い会社」の株式が常に人気が高いのかというと、一概にそうとも言えないのが難しいところです。
配当性向が低い会社は、次のように言い換えることができます。

  • 獲得した利益を株主にあまり分配しない、ケチな会社 = 人気がないかも?
  • 獲得した利益をしっかり社内に留保し、必要な投資に回そうとしている会社 = 将来有望かも?

これはどちらも間違っていません。
後者の視点に立った場合、配当性向が低いということは、それだけ成長の機会をうかがっている企業と考えることも可能です。特にITをはじめとした新興企業の場合、株主に配当をするよりは、しっかりと内部留保を厚くして今後の投資に備えた方が、結果的に株主の期待に応えることにつながる可能性もあります。その企業が成長し、株価が上昇すれば株主は多額の譲渡利益を獲得することができるためです。

一方、配当性向が低いことで投資家からたたかれる企業もあります。
10年ほど前から、日本でも「物言う株主」と呼ばれる機関投資家が増えてきました。配当性向が低く、手元に多額の現預金を保有しており、かつ「今後の成長性についてきちんとした説明ができない企業」の株式を「物言う株主」は大量に取得します。そして「使い道のない内部留保をしているくらいなら、株主に配当で還元すべきだ!」と会社に迫るのです。
特に成熟産業では、このような事例が多数出ています。企業としては「なぜ内部留保を手厚くしているのか」という理由について、明確に説明できるようにした方がよいでしょう。

つまり、配当性向が高い、低いだけでその企業の評価をすることは非常に難しいのです。数字だけでなく、その企業が自社の立ち位置についてどのように考え、これからどのような方向に進みたいと考えているのか。その上で、どれくらい株主に配当として還元していきたいのか。そういったさまざまな要素を踏まえた上で分析をしなければならないのです。

また、経済というのは急変するものです。近年で言えば2008年のリーマン・ショック時、多くの企業が厳しい経営を迫られました。そのような中で、その激変期を乗り越えることができたのは「手元にしっかりと現預金を貯めていた企業」です。
近年の会計では、過剰な時価会計の適用を回避し「ある程度現預金の裏付けがある利益」を重視しています。配当性向が高すぎる会社は、経済の激変期には存続の危機に陥ることも考えられます。

思わぬ競合の登場や地政学的リスクが発生する現代のグローバル経済においては、単独企業の分析だけでは適切な評価は下せません。
世界全体や該当業種の動向まで含め、かつ、どれくらいその企業の株式保有を続けるのかという自分のスタンスも踏まえた上で、配当性向について評価するようにしましょう。

 

まとめ

配当性向とは「利益の中からどれくらい配当金を支払っているのか」の指標です。この割合が高いほど、企業は株主に多くの配当を支払っていることになります。ただし、配当性向が高い企業が良い企業とも限りません。その企業の業績、業界や世界経済の動向、そして投資家であれば自分の投資スタンスも踏まえながら、総合的に分析をする必要があるのです。

 

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● 著者

高橋 昌也

高橋 昌也

高橋昌也税理士・FP事務所 税理士 1978年神奈川県生まれ。2006年税理士試験に合格し、翌年3月高橋昌也税理士事務所を開業。その後、ファイナンシャルプランナー資格取得、商工会議所認定ビジネス法務エキスパートの称号取得などを経て、現在に至る。