リース取引の仕訳と会計処理 ―リース取引の基本と実務:経理担当者の苦手意識克服シリーズ―

はじめに
経理担当者が苦手意識をもってしまう取引のひとつにリース取引があります。その理由は「リース取引に関する会計基準」が登場したのは2008年からの改正項目と比較的新しいことや、リース取引に関する用語に横文字が多いことなども原因のひとつだと思います。
苦手意識を持っている経理担当者のリース取引の印象は「よくわからないけど何種類かあって、それぞれ複雑な会計処理が決められている」という感じではないでしょうか。
2019年度以前から行われてきたリース取り引きは 3種類に分けられていました。しかし、2019年度からは、国際基準での会計が採用され、リース取引はひとつに統一されています。
今回の記事では、経理担当者のリース取引に対する苦手意識を払拭できるように、 2019年以前からのリース取引や、新しい基準でのリース取引を分かりやすく説明します。
2019年1月1日以後に開始される新リース会計基準の特徴や注目ポイントについては、以下の記事をご覧ください。
経理プラス:新リース会計基準が強制適用開始!IFRS未適用企業にも影響があるIFRS16号
これまでのリース取引の経済的実態
2019年以前のリース取引は大きく分けると「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の2つに分けられていました。
「ファイナンス・リース取引」とは
一言で言ってしまうと「カネを借りて、モノを買って、使いながら返済する」のとほぼ同じ取引のリースのことです。「リース取引」という名前は付いていますが、契約は中途解約不能、そのモノが故障した時の費用は全て使用者が負担しなければならないなど、買ったのとほとんど同じ経済的実態であるリース取引です。
「ファイナンス・リース取引」はさらに、「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の2つに分けられます。
【所有権移転ファイナンス・リース取引】
リース期間が満了するとその資産をもらうことができます。ローンを組んで資産を買うのと全く同じ経済的実態で、実際に会計もローンを組んで買うのと全く同じ処理をします。
【所有権移転外ファイナンス・リース取引】
契約したリース料を全て支払ったあともその資産をもらうことはできません。契約を続けるためには再リース料を支払うことや、資産を受け取るためには買い取り費用などが必要です。日本のリース取引のほとんどはこの「所有権移転外ファイナンス・リース取引」です。
「オペレーティング・リース取引」とは
一言で言ってしまうと「誰かから借りているだけ」のリース取引です。契約が終われば相手に資産を返さなければなりませんし、故障した時は持ち主が直してくれます。資産を保有している経済的実態もなければ、借金をしている実態もありません。借りているだけです。
砕けた言葉で説明しましたが、リース取引には3種類あること、3つそれぞれの経済的実態はどのようなものか、これさえ分かればその経済的実態に合わせた会計処理をするだけでリース取引を正しく会計処理することができます。
今までのリース取引の会計処理 ―3種類のリース取引はそれぞれどのように仕訳されていたか―
所有権移転ファインナンス・リース取引
【経済的実態】
借入をして、資産を購入したものと全く同じです。
【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000円を50回支払うとします)
【取得時】
リース資産 5,000,000円 / リース債務 5,000,000円
リース資産は、キャッシュで購入した時と同じ金額で計上します。
【リース料支払い時】
リース債務 100,000円 / 現金 120,000円
支払利息 20,000円
毎月のリース額120,000円は、借入金の返済を行う時と同じく、元金部分と支払利息部分に分けられます。
【決算仕訳】
資産計上されたリース資産に対して減価償却費を計算しますが、キャッシュで資産を取得した場合と全く同じ算出方法で減価償却費を計算します。
所有権移転外ファインナンス・リース取引
【経済的実態】
借入をして資産を購入したものとほとんど同じですが、最後はリース資産を貸主に返却しなければなりません。そのため、残存価額をゼロとして減価償却費を計算します。
【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000を50回支払うとします)
【取得時】
リース資産 5,000,000円 / リース債務 5,000,000円
【リース料支払い時】
リース債務 100,000円 / 現金 120,000円
支払利息 20,000円
【決算仕訳】
減価償却費 1,200,000円 / リース資産 1,200,000円
リース期間定額法という「所有権移転外ファイナンス・リース取引」専用の償却方法で減価償却費を計算します。リース資産総額を、リース期間で月数按分して、その事業年度の減価償却費を計算します。
(減価償却費1,200,000円)=リース資産5,000,000÷リース期間50ヶ月×事業年度12ヶ月
【例外】
所有権移転外ファイナンス・リース取引は最終的には借主に返すので、経済的実態としては所有権移転ファインナンス・リース取引よりも、オペレーション・リース取引に近い性格も持っています。
そのため、次の場合には月々のリース料を費用処理するだけのオペレーション・リース取引と同じ処理も認められています。
リース期間が1年以内のリース取引
リース契約1件あたりのリース料総額が3,000,000円以下の場合
オペレーション・リース取引
【経済的実態】
リース資産を契約期間の間だけ借りているだけで、資産を取得しているような実態はありません。
【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000を50回支払うとします)
【取得時】
仕訳なし
【リース料支払い時】
リース料 120,000円 / 現金 120,000円
【決算仕訳】
仕訳なし
新基準のリース取引とは
2019年1月1日からのIFRS16号による新基準のリース取引は、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースと分けられていたものが廃止され、ひとまとまりのリース取引と扱われます。リース取引の中で細分化されることはなくなりシンプルなものとなっています。また、原則的に全てのリースがオンバランス(資産計上)になる点に注意しましょう。
経理プラス:新リース会計基準が強制適用開始!IFRS未適用企業にも影響があるIFRS16号
最後に
いかがでしょうか。
今までのリース取引の基本的な考え方と会計処理、2019年からの新基準のリース取引の概要をお伝えしました。
次の記事では応用編として、近年税率の変更に伴いその複雑さがさらに増しているリース取引に関する消費税についてお伝えします。

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